100万ポイント山分け！1日5回検索で1ポイントもらえる

1403434
ホーム \| 日記 \| プロフィール	【フォローする】【ログイン】

投資の余白に。。。

カテゴリ別記事

よく読まれている記事

お気に入りブログ

2024

2023

2022

2020

2019

2018

2013年10月の記事

全9件 (9件中 1-9件目)

1

こんな映画を観た～愛、アムール　ネタばれあり

人によって極端に好悪のわかれる映画監督の代表がミヒャエル・ハネケだろう。カンヌ映画祭で最高賞をとっているから大丈夫だろうとおそるおそる見にいったら、さすがハネケとうならされた。大甘の老々介護映画になるはずはないが、こうしたテーマでどんな映画になるかと思ったら、次元がちがった。ふつうに観るとよくわからない映画ではある。映画はいきなり結末から始まるが、ナゾも残る。元音楽家の老夫婦は弟子のピアニストのリサイタルに行く。その次の日、妻にちょっとした異変が起きる。それが難病の始まりで、穏やかでチャーミングな人柄の彼女が人間として崩壊していく過程と、夫の困惑と失望が淡々というか冷徹に描かれる。同情も共感もなく、思い出を回顧しても観客を感動に誘ったりはしない。夫の献身はそれなりに感動的だが、妻を愛し、冷静な判断力のある知的な人ならみな同じようにするだろう。ほとんど植物状態の妻を夫は殺すが、愛情ゆえの「尊厳死」という見方ができなくもない。夫がどうなったかは描かれていない。延々と遺書らしきものを書くシーンはあるが、失踪したのか自殺したのかもわからない。がらんどうに近く片づけられたアパルトマンに娘が来て、かつて父がよく座っていた椅子に座りもの思いにふける最後のシーンには無常感が漂う。娘夫婦の愛情とは比較にならない深さで結ばれた二人の愛情の質の差には思い至るが、それもこの映画のテーマではない。この映画も、やはりテーマやストーリーを追い意味を考えるという「鑑賞」する映画ではなく「体験」すべき映画なのだろう。「介護経験があるので身につまされた」といった感想がヤフー映画などにたくさん書き込まれているが、「鑑賞」してしまうと作品と切り結ぶことがなく、こうした月並みな感想をもつだけで終わってしまう。老夫婦役の二人の演技には脱帽。まるで実在した人物かのような存在感があり、この二人の俳優なくしてはこの映画のここまでの成功はなかっただろう。いつか、誰もいなくなり、何もなくなる。冷徹という意味では、これほど冷徹な視点で人生が描かれた映画はかつてなかった。

October 31, 2013

コメント(0)
こんな映画を観た～最後のキス

Viva!イタリア特集上映の３作目。前２作は内省的な部分が多かったが、この作品は田丸公美子のイタリア狂騒もののような「いかにもイタリア的な」イタリア人たちの群像劇である。大学まで同窓だった２９歳のボンクラ５人組がいちおう主人公か。大人になりきれない、なりたくない男たちと、そのうちのひとりが同棲している女の両親の「初老の夫婦の危機」がからんでいく。恋愛、妊娠、子育て、軽はずみな恋、初老の夫婦の危機といったごくありふれたテーマの映画だが、何しろテンポがよく、俳優たちもみな快演。罵倒や喧嘩もふくめて雄弁なイタリア人の会話のおもしろさに翻弄されるうちに１１５分があっという間にすぎる。それにしてもイタリア人女性はこれほど気が強く感情が激しいのだろうか。動物的とさえいえるほどのその激情ぶりはちょっと勘弁という気がする。一方、シェークスピアなみの雄弁な愛の言葉を使って２９歳の男に自分からアタックをする１８歳の女子高生がふつうにいるのなら、イタリアはこの世の天国かもしれない。イタリア人のような雄弁さを身につけるための教材として最適と思われるのでこの映画のＤＶＤがほしいと切に思った。この映画はガブリエレ・ムッチーニ監督の２００１年作品。今回の３作品はイタリアを多面的に見られるだけでなく、イタリア映画界の厚みを痛感させられた。

October 29, 2013

コメント(0)
こんな映画を観た～ハートの問題

Viva!イタリア特集上映の２作目。「もうひとつの世界」にもましてすばらしい映画だった。魂の映画であり、この映画を観る前と後では世界がちがって見える。映画には「鑑賞」すべき映画と「体験」すべき映画がある。前者の方が圧倒的に多いので、映画を「体験」できる人は少ない。タルコフスキー映画のように「体験」すべき映画を「鑑賞」してしまう人のなんと多いことか。アルキブージ監督の２００９年作品であるこの映画も、主人公の男性のうちひとりの不幸な末路に同情したり、登場人物のキャラクターに快・不快を感じたり共感したりとふつうに「鑑賞」してしまう人が圧倒的に多数だろう。映画が終わったとき、あちこちから特に女性のすすり泣きがきこえたが、「鑑賞」してしまうとそういう結果になる。「もうひとつの世界」は見習い修道女とクリーニング店主の友情を描いたものだが、この映画は二人の男の友情を描く。ストーリーは「最高の人生の見つけ方」に似ている。心筋梗塞で同じ日に入院し隣り合わせのベッドになったのは独身貴族の脚本家とやり手の自動車修理工場経営者。世代も環境もちがうのになぜかウマが合い、スランプにおちいった脚本家は彼の家をたずね迎え入れた彼の家族との共同生活が始まっていく。この脚本家が陽性かつ知的なキャラクターで、容姿容貌はさえないのに、出会う人たちの心を開き、いい影響を与えていく。この成功した、しかし孤独な脚本家が繰り出していく「言葉の力」にうならされているうち、物語は予想された悲しい結末にいたる。わたしは、この映画で「泣く」ことはできなかった。働き盛りの、子どもと妊婦の妻のいる男の死は重たく辛いが、しょせん映画なのだ。それに、こんな気のきいたセリフを散りばめた作品の監督が、メロドラマを作るとも思えない。しかし驚いた。映画館を一歩出て、自転車で北大構内を走り始めたとき、紅葉したりしていなかったりする木々とその葉の美しさに、うちふるえるほど感動したのである。同じ景色を、この映画を観る前に見ていた。そのときは、今年の紅葉は平年よりきれいだとか、ピークまであと３日くらいだとかといった月並みな感想しか持たなかった。言ってみれば「左脳優位」の状態で風景を見ていた。しかしこの映画を観たあと同じ景色を見ると、すべてがちがって見えたのだ。いまこの瞬間、生きてここにあることのかけがえのなさ、すばらしさを感じて感動が電流のように全身に走ったのだった。これがこの映画の力であり、優れた芸術作品だけがもつ力である。この映画を「鑑賞」してはいけない。「体験」しなければならない。そうしないとこの作品のほんとうのすごさはわからない。人間の魂を刷新する映画を１０本あげろと言われたら、必ずその中に入る。

October 28, 2013

コメント(0)
こんなコンサートに行った～ジョン・ウィリアムス　ギターコンサート

ギターという楽器、あるいはギター音楽の愛好家という狭い枠を超えて知られる演奏家はさほど多くない。ギターの神様といわれたアンドレス・セゴビア、「禁じられた遊び」のナルシソ・イエペス、イギリスのジュリアン・ブリーム、そしてオーストラリアのジョン・ウィリアムスの４人くらいだ。イエペスは１９６９年の来日公演を聞いたが、セゴビアとブリームは聞きのがした。ブリームは存命しているが、交通事故の後遺症などが原因で６０代で引退した。ジョン・ウィリアムスの引退が報じられたのは今年６月。したがって今回のツァーが最後になる。ほんとうは東京の白寿ホールのような音響のいい小さめのホールでききたい。大ホールでのギターコンサートなど、あまりにも野蛮な行為だから敬遠したかったが、今回ばかりは背に腹は代えられない。運よく８列目中央よりの席を手に入れた。若いと思っていたジョン・ウィリアムスも７２歳。だが小走りにステージに登場したり、雰囲気に老人くささはまったく感じられない。６２歳だと言っても信じる人は多いだろう。テクニックその他にも全く衰えは感じられない。前半最後のバッハ「シャコンヌ」で何小節か飛ばすミスはあったものの、動揺することもなくちょっと脇道にそれただけですぐ本流に戻った。実際、ほとんどの聴衆はあのミスに気がつかなかったと思う。彼の、特にソニークラシカルへの録音はほとんど聞いてきた。クラシック・ギタリストとしては異例なほど流麗なその音楽にはインターナショナルというかアングロ・サクソン的な感性を感じることが多かった。彼はメルボルンに生まれロンドンで勉強した人だが、アメリカ西海岸的な美意識を感じることが多く、曲によっては違和感もあった。この日、その違和感を最も強く感じたのはこの「シャコンヌ」。この曲の荘重でドラマティックなイメージは微塵もない。一瞬の停滞も思考の澱みもない、流れるようなバッハからは宗教性のようなものが完全に取り去られている。自分のイメージするこの曲とは距離があったが、なるほどこれがジョン・ウィリアムスなのかという気がして納得させられ、瞠目したのもこの演奏。表面的な美しさと流れのよさだけを追求しているようでいて、実はちがう。ポイントとなる重要な音はさりげなく強調され、決して平板ではない。影のない、どこまでも上品なバッハは、グレン・グールドのマニエリスムとは正反対ではあるにせよ、ヒッピー・ムーブメント以降の２０世紀の美意識と共通のものを感じる。次に違和感を感じたのはその前のソル「魔笛の主題による変奏曲」。やはりどこまでも軽快なテンポとリズムで、ヨーロッパ音楽にしばしば感じる「エゴ」が取り除かれている。この２曲の演奏をドイツ・オーストリア人が聞いたら、自分たちの感覚とはかなり異質なこの演奏を、新鮮なそれとしてもしかしたら歓迎するかもしれないと思いながらきいた。最初に演奏されたヴィラ＝ロボス「５つの前奏曲」、後半のアルベニス「アストリアス」、タレガ「アルハンブラの思い出」、バリオス「ワルツ」、フェゲレード「ロス・カウハリートス」、カリージョ「星の涙」、カノニコ「エル・トトゥモ」（この３曲はベネズエラの作曲家による）でも、スペイン的、ラテンアメリカ的な土俗性の強調はまったくない。芸術的というと少し言葉が強いが、あくまで自分の感性を通して描かれたスペインでありラテンアメリカである点に変わりはない。粗野な演奏を生命力のあるそれとかんちがいすることは多いが、民俗音楽ではなく普遍的な音楽ととらえた演奏の格調の高さとしなやかさには圧倒される。これらの曲ではギターという楽器さえ姿を消し、音楽だけがそこにただよっているような奇跡の時間が流れた。バリオス作品の前には自作を４曲（中では「ハロー・フランシスが名曲だった）と有名なマイヤーズ「カバティーナ」。楽器と格闘して生み出された音楽ではなく、楽器を自分の心の一部としたかのような親密な音楽の時間が流れた。アンコールはバリオス「フリア・フローリダ」。明るい感傷に満ちた音楽の天衣無縫にして融通無碍な演奏を最後に、世紀の大ギタリストにして大音楽家、ジョン・ウィリアムスはわれわれの前から去っていった。

October 26, 2013

コメント(0)
こんな映画を観た～もうひとつの世界　　

Ｖiva!イタリアと題された特集上映が東京で行われ、連日ほぼ満員の盛況だったらしい。３本を蠍座で上映するというので全部観ることにした。イタリア及びイタリア人についてはステレオタイプのイメージが作られすぎている。陽気で美食家でいつも飲んで食べて歌っている。旧市街の歴史的建築物やその街並みを撮して一丁あがり。グルメ紀行番組はだいたいこのパターン。しかしイタリアも郊外に出ると北千住や大田区のような風景が珍しくない。実は世界でも最も勤勉で貯蓄率が高いのがイタリア人だという統計的真実も知る人は少ない。実直で素朴な人間の割合は、もしかしたら先進国ではトップクラスではないだろうか。この映画で描かれるのもそんな市井の人々だ。見習い修道女としがないクリーニング工場の経営者が、捨て子の母親を探しに協力しあうが徒労に終わる、というだけの映画。ドラマティックな展開も、胸のときめく恋愛もない。しかし、数週間の母親探しのうちに、二人の間には友情が生まれていく。口さがないクリーニング店の従業員たちも、根のところでは純情で、欠点のある人たちにもそれぞれのかけがえのない人生があり自分の世界があるということが繊細に描かれていく。どちらかというと美人なのに修道女の道を選んだ女性の、赤ん坊に対する思いを中心に観る人が多いと思うが、この映画のラストで登場人物たちをグループごとにタイトルバック的に流す部分を観ると、イタリア映画の伝統を強く感じる。その伝統とは、イタリア人は根は純情で善良だといったような、欠点も含めて丸ごとオマージュするようなとらえ方である。「道」でも粗暴な男の中にも人間的な感情が残っていたことが描かれるし、「マレーナ」ではシチリアの女たちの唐突ともいえる真情が描かれる。どちらもこれがイタリア人なのだ、これがイタリア人のよさなのだという監督たちの切実なメッセージが伝わるが、この映画も実はそれが主題だったのだと思わずにいられない。歴史的建築物やミシュラン・レストランはおろか、ホテルさえないようなイタリアの町にしばらく滞在してみたいと思うような映画だった。ミラノで埋もれたままになっていた映画の、１５年もたってからの日本公開。１５年前に観られたらどんなによかっただろうと思わずにいられない。　　

October 20, 2013

コメント(0)
こんな映画を観た～ヴィック・ムニーズ　ごみアートの奇跡

このドキュメンタリー映画に対しても先入観があった。天才的なアーティストが、廃材を利用して芸術作品を作り上げるというだけの映画かと思っていたからだ。たしかに、作品にゴミ捨て場のゴミを使うことは使うが、ヴィック・ムニーズはそこで働く人たちと個人的にも深く関わり、彼らの中にある「聖性」みたいなものを引き出しつつ、魂の共同作業として作品を生み出していく。その過程全体がすばらしく発見に満ちている。「見ていて何度か熱いものがこみあげてくる」と館主の文章にあるとおりの感動的な１本。ムニーズはブラジル出身の現代美術家。しかし現代美術の世界を「閉鎖的」と批判し、独自の創作姿勢をとる。欧米でも評価され作品は人気があるようだ。オークションでも高値がつく。だが、この映画はそうしたムニーズの創作を描いたものである以上に、リオデジャネイロ郊外の巨大ゴミ処理場で「ゴミ拾いではなく、リサイクル可能な資源を集めることで生計を立てていると誇りと尊厳をもって働く人たちをフォーカスしている。彼らの、日本では想像できない劣悪な居住環境が撮され、彼らの人生についても語られていく。彼らのひとりひとりの人間性が感動的だ。決して幸運とはいえない人生を送ってきながら、「売春」ではなくゴミ拾いを選ぶ女性の価値観は日本人とは正反対だし、みなどこか品がある。貧しいスペインの庶民を詩人ヒメネスは「生まれながらの貴族」と呼んだが、ムニーズもまた彼らの姿にプロレタリア階級の人間だけが持つ輝きと生命力を発見したにちがいない。彼らをモデルにした作品の売上金は彼らの生活に役立てていく。ひとりはレストランを開き、ひとりはリサイクル協会を作る。こんなすばらしいキャラクターの人たちがたくさんいる国なら、多少犯罪は多くても、ぜひ一度行ってみたいと思わせた。ムニーズの作品には訳知りの批評を拒む「力」がある。

October 12, 2013

コメント(0)
こんな映画を観た～シュガーマン　奇跡に愛された男

世の中には思いがけないことがある・・そういう事実の面白さだけの映画かと思って観に行ったら、そうではなく、実に感動的なドキュメンタリーだった。アメリカではまったく売れなかったロドリゲスという歌手のレコードは、南アフリカでは大ヒットしていた。本人はそのことを知らず、印税が入ることもなかった。本人は働きながら３人の娘を育てあげた。この映画がきっかけであちこちの音楽祭に呼ばれるようになったいまも、収入のほとんどを社会運動に寄付し、アメリカでは肉体労働者に戻っているという。南アフリカで大ヒットした理由は、ロドリゲスの歌に反アパルトヘイト運動の活動家たちを鼓舞するかのようなメッセージが（抽象的だが）満ちていたからだ。いくつかの歌は放送禁止になったが、それでも勢いは止まらず、南アフリカで最も有名な歌手だったというから驚く。映画の作りにはややあざといところがある。本人は死んでいるという「都市伝説」から実は健在でいるのが見つかった、という部分まではかなり「作った」感じがする。ただ、このやり方に嫌味を感じず成功していると思うのは、ロドリゲス本人と、それまでに想像で作られていうロドリゲスのイメージのギャップに驚かされるからだ。アメリカにもこんな人間がいるのか、というロドリゲスの質素さがまず印象的だ。南アフリカに「凱旋」し超一流ホテルの部屋に泊まる彼は、しかしキングサイズのベッドでは寝ず、ソファで寝たという。ベッドメイクの人がたいへんだろうから、というのがその理由だが、ほとんど「プロレタリア魂」といっていいこの感性はすばらしい。こうした「復活」を利用してやろといったような、商業主義的な動機をまったく感じないのには驚きを通りこして感動した。公害被害者の支援運動をやっているような人に、ロドリゲスのような感性・価値観の持ち主を見かけることは珍しくない。しかし、ちょっとでも売れたことのある「歌手」にこんな人間はまれだ。浜田省吾や沢田研二やパンタ＆ハルといった人たちに、ぜひ観てもらいたい映画。ＤＶＤが出たら買おうと思う数少ない一本と出会った。

October 9, 2013

コメント(0)
こんな映画を観た～恋の渦

劇団ポツドールの同名舞台の映画化という。登場人物は男５人に女４人。場面は四つの部屋のみで、ほぼ会話劇。制作予算は１０万円で出演俳優は全員無名というが、上映劇場では大ヒットしたらしい。蠍座も、この映画だけをめあてに来たとおぼしき観客で盛況だった。どこでこういう映画の評判と情報をききつけて来るのか、まったく不思議。特にストーリーのようなものはない。５人の男と４人の女の恋愛（もどき）やセックスのからみあいがあるだけで、男の身勝手さも女の身勝手さも、なんの演出もなしに「ありそうなこと」としてさくっと提示されていく。大都会の中で浮き草のように生きている「いまどきの若者」はこういうものかもしれないと思わせるリアリティがある。それをおもしろい、かっこいいと思うか、バカにもほどがあると思うかでこの映画への評価は分かれると思う。どちらかというと後者に感じるが、いまどきの若者の、人とのかかわり方のデリケートさ、ごく表面的な意味での「優しさ」には笑えるし、長所なのかもしれないと思える。ただ７００円で観られたからまあまあおもしろかったという感想になるので、これが一般的なフルプライスで観たのだったら後悔したかもしれない。

October 8, 2013

コメント(0)
こんな映画を観た～偽りなき者

「今年の秀作１０本の中に入れたい」という映画館リーフレットの言葉にひかれて見にいった。２０１２年のデンマーク映画。少女の作り話から変質者扱いをされてしまう男性の話。少女はウソをつかない無垢な存在である、という前提があって、それを疑うことのない大人の固定観念のおそろしさや自己の感情を正当化する没知性的知性への告発を含みもつ映画だ。大好きだった先生が自分のウソのためにたいへんな目に遭ったことに後悔した少女は、ウソだったことを告白するが、信じ込んだ大人たち、特に少女の母親はその言葉を「善意」に解釈する。つまり、男性は変質者だが少女がかばっているという風にとらえ、そうとらえる自分の「優しさと思慮深さ」を絶対的な善として疑うことがない。いちおう、男性の疑いは晴れ、男性の息子もこの村のコミュニティに迎えられる。しかし、ラストのラストで、男性を疑っている村人の存在も明らかにされる。いったん作られた偏見はそう簡単に消えることはないのだ。アメリカ映画では子どもは善良なものと単純化して描かれ、正しい者は最後は救われる。しかし、ヨーロッパ映画では必ずしもそうではない。この作品もしかり。そこから浮かびあがるのは、正義をふりかざし事実に肉薄しようとしない人間の愚かさと救いのなさであり、特にこの映画では女性のそうした側面が執拗に描かれる。味方に見え一時は恋人関係になった女性でさえ、実際は疑っていたことに気づいた彼は女性と絶縁するが、この部分には制作者の女性一般に対する絶望さえ感じられる。主人公のマッツ・ミケルセンの、知的で成熟したおとなの男性の魅力が全開。どこか哀愁を感じさせるキャラクターが役柄にはまりまくっている。痴漢冤罪などが話題になっているが、いつ自分がこういう目に遭わないとも限らない。自分が同じ目にあったらと考えるとぞっとするが、仮に疑いが晴れたとしても一度でも侮蔑と憎悪を自分に向けた人間はゆるすことができない。この映画の主人公のようには寛容になれないと感じるが、そうした寛容さを戒めているかのような解釈も可能なラストが記憶と印象に残る。

October 7, 2013

コメント(0)

全9件 (9件中 1-9件目)

1

ジャンル別一覧

人気のクチコミテーマ

徒然日記

乗り換えたら外人車両だった。

(2024-09-30 13:59:09)
お買い物マラソンでほしい！買った！…

超強力！ふくらはぎケアの救世主✨「…

(2024-10-01 18:44:52)
あなたのアバター自慢して！♪

こじかの顔

(2024-08-02 19:02:01)

© Rakuten Group, Inc.