2009/07/02(木)22:37
スパイダーマン3
2007年5月公開
監督:サム・ライミ
制作費:2億5800万ドル
人気アメリカンコミック「スパイダーマン」の、実写映画化シリーズ第3作。
監督は、「1」「2」から引き続きサム・ライミ。
主要キャストも、トビー・マグワイア、キルスティン・ダンスト、ジェームズ・フランコほか、ほぼ続投。
なお、本来は本作で三部作完結の予定であったが、シリーズの人気を受けて、すでに「6」までの続編製作が決定されている。
[簡単なあらすじ]
スパイダーマンの正体であることをバラし、念願叶ってメリー・ジェーン・ワトソン(キルスティン・ダンスト)との交際を始めたピーター・パーカー(トビー・マグワイア)。
スパイダーマンの存在も街の住人にも認められ、気をよくしていたピーターは、MJにプロポーズすることを決意するが、ブロードウェイの舞台から降ろされて苛立っていたMJに素っ気ない態度をとられてしまう。
一方で、父親の秘密を知りニュー・ゴブリンと化した親友ハリーや、ベン伯父さん殺害の真犯人、脱獄囚サンドマンなど、彼の周囲では不穏な空気が渦巻き始める。
さらに、スパイダースーツに宇宙から飛来した寄生生物“シンビオート”が取りついてしまい、いつしかピーターは、攻撃的な衝動が抑えられないブラック・スパイダーマンとなっていた――
日本でも人気の高いアメコミ映画、「スパイダーマン」シリーズの第3作です。
「2」の2億ドルでも驚いていたというのに、それをあっさりと上回る巨額の2億5800万ドルを投じて製作。
日本円にして約290億円ということですが、あまりに大金すぎて、庶民からしたら現実感に乏しい額ですね……(笑)
そんな、並々ならぬ期待をよせられて製作された「3」。
「2」のテーマが“苦悩”だったのに対し、「3」のテーマは“決意”だそうで、作中でもスパイダーマン=ピーター・パーカーは様々な問題に悩まされ、決意を迫られていくことに。
中でも最も困難な問題だったのが、ジャケットにもあるように黒いスパイダースーツに身を包んだブラック・スパイダーマン。
ダークサイドに堕ちたピーターを待ち受けていたのは、心を蝕むおのれの強欲。
若気のいたりともいえる、誰しも心当たりがある問題だけに、心にズーンと重くのしかかってくる演出でした。
また、見た目が非常に格好よくもあるブラック・スパイダーマン。
実はこれ、原作ファンならすぐにピンとくる、あるヴィラン(敵役)の登場を予期させるものでもあり。
実際、このイラストが公開されてから、すぐにファンのあいだでは“彼ら”の登場が噂されたものの、宣伝では徹底して映像を流さず。
逆にファン心理を煽るという、うまい宣伝法を用いていました。
さぶろも、早くヴェノム(言っちゃった(笑))の動いている映像が観たくて、やきもきしたものです。
商売もうまいとは、やりますなぁ、サム・ライミ。
「2」のグッドエンドから続くので、始めは順風満帆なピーターの生活……、と思いきやヒーローの生活に平穏は長くは続かない。
いきなり、親友ハリーがニュー・ゴブリンに。
「1」のラストから足掛け5年も引っ張った割りには、気前よく初っ端から登場です。
しかし、物語冒頭からスピーディなアクションを繰り広げて、視聴者の心をスパイダーマン世界へと、グイっと引っ張り込んでくれました。
今回ハリーがかなり重要な役どころなので、この持っていき方はうまい。
彼らの殺し合い一歩手前の殴り合いは、親友だからこそ、と男性ならば共感できるもので結構好きです。
それに、なんだかんだで、ハリー強い。
続いて、スナスナの実の能力者、サンドマン。
まさにCGの申し子。今だからこそ再現が可能となった怪人の代表格。
それにしても、このサンドマンといい、「ファンタスティック・フォー」のメンバーや「ハルク」といい、アメコミ世界では不用意な化学実験で、怪しい人らが続々と生み出されまくってます。
アメリカの科学者さんたち、世界平和のためにも不用意な化学実験はできるだけ控えてください(笑)
CGといえば、新ヒロイン、グウェンの見せ場となったクレーンの暴走シーン。
物語的には特に意味はないんだけど、VFXを駆使した迫力の映像は、まさに手に汗握るもので見応え十分。
グウェンの登場自体かなり唐突なんですが、スパイダーマンシリーズでは期待に応えるためにも、こういったド派手なシーンが必要不可欠なんでしょう。
面白くて当然、というのが王者の辛いところですかねー?
代わりに割りを食ったのが、人気薄ヒロイン、メリー・ジェーン・ワトソン。
ピーターには嫌がらせを受けるわ、ハリーからは脅迫されるわで、相変わらず酷い扱いのMJ。
さすがに、ここまで来ると同情の念が湧いてきます……。
そして、メインイベント、ダークサイドに堕ちたピーター。
格好いい……、かな?
好戦的な戦闘時はいいとして、ノリノリダンスシーンはかなり嫌んな雰囲気を醸し出していました。
普段大人しいヤツが、勘違い気味にハッチャけちゃったような。
しかし、良いのか悪いのか、割りとあっさりダークサイドからは脱出。
引っ張った割りには、ブラック・スパイダーマンであった時間はごくわずかと淡白です。
で、実はこれが本作の難点で、ピーター、ハリー、MJは当然のこと、サンドマンにグウェン、ヴェノム(エドワード・ブロック)と、「3」の登場キャラはかなり多め。
そのため、ひとりひとりのドラマに焦点を当てる時間が少なく、なんだか全体的に消化不良気味。
特に顕著なのがサンドマンで、登場の理由でもあるベン伯父さん殺害事件の真相や、彼自身の病気の娘とのストーリーもたったワンシーンがあっただけと、あとから取ってつけた感ありあり。
個々のエピソードと、全体のストーリーが馴染んでいないんですよね。
あれもこれもと欲張らずに、もう少しシンプルにまとめた方がよかったかなぁ。
お陰でみなが期待したヴェノムの登場シーンも、ラストの戦闘の一瞬だけ。
マスクが裂けたような特徴的な牙状の口など、CGでうまく再現されていて抜群に格好よかっただけに、出番の少なさが悔まれます。
ただ、スパイディ&ニュー・ゴブリンVSヴェノム&サンドマンのタッグマッチは、迫力に満ちていて面白かった。
ヴェノムの弱点も原作通りで、ファンも納得。
全体のストーリー・ドラマとしてみると、少々まとまりに欠ける感があり。
しかし、アクションはさすがスパイダーマンシリーズだけあって一日の長があり、超人たちによるスピーディな戦闘シーンは、見ているだけでドキドキワクワクできました。
「2」が完成度の高い作品だっただけに、「3」には少々物足りなさを感じてしまいますが、娯楽作としては一級品。
なにより、大金をもって製作されたVFXの数々は見事としかいいようがありません。
しかもさらに、なんと「6」までの製作が決定済みだというのだから、その人気にも驚くばかり。
「4」の公開までに、「3」までチェックしてバッチリ予習しておきましょう。
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