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カテゴリ:これぞ醍醐味!歌舞伎の大向う
東日本大震災が発生して2ヶ月目の5月11日、渋谷Bunkamuraのシアターコクーンで上演中の「たいこどんどん」を観てきました。
席は、舞台の三分が見えない、右のバルコニー席です。安いから、ここで良いのであります。 始めに、ネタバレとR15指定のような記述部分があることをお断りしておきますので、差し障りのある方は、ここでお引き取りくださいませ~。 お話しの作者は、今は亡き井上ひさしさん。 演出は、蜷川幸雄さん。 舞台は定式幕がかかり、三面鏡のようにミラーに囲まれていて、蜷川演出では、お馴染みの舞台のつくりであります。 さて、シアターコクーンのサイトにある解説でも・・・・、 社会は激変していっても根本的なところで「なにも変わっちゃいない」日本への静かな怒りや、時代に不意打ちにされつづける大衆への提言。 歌や、踊り、お座敷芸など笑いがあふれるエンタテインメントの底には、庶民に向けられる作者の視線が2011 年にもまた同じ強さで光り続けます。 と、あるのですが、なるほどと、納得。 大体の筋は・・・。 品川で遊んでいた江戸日本橋の薬種問屋の若旦那・清之助と、忠実なたいこもち桃八が、お気に入りの遊女・袖ヶ浦を巡って浪人とトラブルを起こし、海に逃げたのですが、舟が沖に流され、通りがかった船に拾われ釜石でおろされる。 実家に無心の手紙を出し気楽に遊んでいたが、金子を届けにきた番頭が途中で追いはぎにあい殺されたという知らせ。 若旦那は、借金のかたにたいこもちを鉱山に売り飛ばして、江戸に向かったのであるが・・・。 鉱山で辛酸をなめたたいこもち、ようやく脱走し。 一方、江戸にむかったはずの若旦那は賭博で有り金とられ、ようやく出会ったものの・・・・。 オチは、ようやく江戸にたどりついたものの、実家の店はあとかたもなく、江戸は東京になっていた。 いやはや、歌舞伎と違って女優が演じる遊女と遊びほうけるのですから、生々しい場面やら卑猥な歌やら思わずニヤリとしてしまうことも・・・。 でも、きちんと見聞きしましたけどね。 肉襦袢の乳房もむき出しにしての場面なんか、ぽろりとこぼれたのかと思うくらい、リアルでした。 馬追い唄なんか、これでもかと次々に出てくるのですが、会場のどのくらいの方が分かったかは知りませんけれど、実に古きよき時代の庶民のエネルギーを発散させる日本の猥歌であります。 幕開きの場面で江戸時代なのに蝙蝠傘を差して出てきた清之助ですが、大詰めの場面、すなわち江戸に戻った場面では、江戸時代は終って明治になり江戸も東京になっていて、急に雨が降り出し客席後方から蝙蝠傘をさした洋装の人々が入場。 「ここから日本は生まれ変わるのさ~♪」と、コーラスが。 すると、大きな波が現れまして人々が波に飲み込まれてしまいます。 時代の波に飲み込まれることと、東日本大震災の津波の被害とが重なり合い、まさに、日本が生まれ変わることへの熱いメッセージが込められておりました。 いや~、蜷川演出に不意打ちをくらって、それまで面白可笑しくしか観てこなかったのが、一転して社会派の熱いステージに転換してしまい、ぐっと込み上げるものがありました。 たいこどんどん公式サイトは、こちら。 作 井上ひさし 演 出 蜷川幸雄 出 演 中村橋之助、古田新太、鈴木京香、宮本裕子、大石継太、大門伍朗、市川夏江、大林素子、飯田邦博、塚本幸男、立石凉子、六平直政、瑳川哲朗 公演日程 2011年5月2日(月)~5月26日(木) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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