ラブレターフロームカナダ

思わずしてしまったガッツポーズと、
それと同時に
叫んだ声が変だったのか、
幸子さんが、くすくす笑い出した。

寂しかった彼女の顔が急に明るくなり、
口元からこぼれてくる彼女の白い歯が
かなり印象的に私の目に映った。

理由も無く、
私は彼女の笑う顔がもっともっと見たくなり、
暫く立ち上がったまま、
変な人を続けるように
ちょっとお尻を振って踊ってみた。

｢ふふふ、、｣
次はカウンターの中の女も笑い出した。

内心、

｢お前のためじゃないんだよ～！｣

と叫んでいたが、
それを無視して、

｢有難うございます、｣

と、幸子さんに、深く頭を下げた。



再び花ちゃんを思い出していた。

可愛い彼女を笑わすことでいつも必死だった私、
あの時も、あの日も、
花ちゃんを楽しませるために
あの黒と黄色の縞々パンツを履いていたのだ。

そう、彼女の笑顔がずっとずっと続いて欲しくって、
ただそれだけのためにパンツ丸見えで踊っていた。


「道子さんって、なんだか楽しそうな人ですね、
こんな明るい人がこのカフェで働いてくれたら、
きっとお客さんも増えそう、、、」


再び幸子さんの口元から白い歯がこぼれてきたのをみて、
私はある一つのことを確信した。



「これだ、これなんだ、この笑顔なんだ、、、
この笑顔があの男前を引き寄せたんだ、、、。」




私が築き上げたあるルールの中に
こういうものがあった。

男は美人が好き、
それも明るい美人、
自己主張する美人、
少しエッチな美人、

ひょっとして、
そういう女性よりも、
幸子さんのように、
笑顔が見たい、幸せにしてあげたい、支えてあげたい、
と男に思わせるオーラを持っている、女性、
そんなにのイカれてしまう男って多いんじゃなかろうか、
現にあの男前だって、、、

それに幸せにしてあげたいオーラの方が、
明るい美人よりも息が長く男に愛してもらえるのかも、、
と、
一人、色んなことを考えていた。




その時の私の気分を説明するならば、

ある数学者が
難しい難題を何度も解こうと試したが、
解く事が出来ず、
それをスグ側にいた小学生に解かれてしまった心境だろうか？


頭の中で
大きな何かが当たって砕ける音がした。

きっとそれは
たぶんたぶん、
私の今まで信じきっていた方程式が
壊れてしまった音だったのだろうか、、、。




もちろんのこと、
お馬鹿な私は、
家に帰ると
いそいそと鏡の前に立ち、、

「寂しい顔つくり」

と

「白い歯がこぼれる笑顔つくり」

に、数時間費やし、
何故だかニックを思い出すことは一切無く、
その日は彼女を思いながら就寝した。







　


　　　　　　　　　　　　　　　　　　続く



いつも有難うございます