schatzky☆ドイツ忘我と結実の境。

2006/10/28(土)19:39

Das Parfum, 香水 Patrick Sueskind ジュースキント原作

ドイツ事情一般 - 政経・生活・メディア等(69)

ドイツ中で話題の映画、「香水」は、今日が一般公開初日だった。ドイツではなぜか、木曜が映画の一般公開初日。公開初日に観る映画、何年ぶりだろう。覚えがない。 真ん中に座るのが好きなのだが、公開すぐは難しいので、避けることが多いのである。 観客の入りは、500人くらいのホールで85%くらいだったかな。ここはまだ学校が夏休み中なので、高校生くらいの年頃の観客も結構いた。 へーえ、と思ったら、学校の教材にも使われているらしい。 さて、内容。とにかく原作に沿った作り。 原作はご存じだろうか。 歴史をベースにしたミステリーなのだが、 誰がどう殺すというのは分かっていて、その手順と理由を眺めていくストーリー。主人公はくっさーいサカナ市に産み落とされ、社会底辺部に育った、奇特な嗅覚の若い男。 匂いの保存法を知るために調香師に弟子入り。その後は内緒。 2時間の超大作。映像、きれいです。しかし人間くさい。 メイクも、単行本カバーに合わせた、濃い、濃密さが漂うメイク。 香りを嗅いだときの演技が、俳優によって少しずつ違って、面白い。 無名俳優の起用は、成功です。 これがブラピだったら、ブラピが役をこなしている映画になってしまうわけで、 原作の描いている世界に観客のもつブラピの世界のイメージが重なってしまう。 しかし、匂いのでない映画でよかった。 でたら、耐えられないところも多分にあっただろう。 悪臭の表現はサカナ市の鮮度の落ちたサカナたちから始まり、 薄汚れた服、埋められた髪、服、・・・嗅いだことのある人は蘇ってくるけど なぜか吐瀉物の描写はなく。あれが一番耐えられないと思うんだけどなー。 さて、良い匂いの方ですが、 香水の嗅ぎ方が、優雅です。それが、最後の男の振る舞いにも効いてくる。 主人公にとってのもっともかぐわしい匂いは、どうやら女の人の匂いだったようで。しかも、一人をのぞいてすべてが生娘。 単に処女を良い匂いだと思ったのか、それともその処女性=無垢・潔白などなどを意図的にハートノートにしたいと思ったのか、進むうちに解釈の可能性が広がっていく。館の守りの緩さなど、正面はきっちりしても、周りなどは へぇ~結構アバウトでどうしようもないのだなぁ・・・なんて、 メインストーリーとは別のところで 面白かったりして。ふつーに幸せになれなかった男の物語。 人として、何が欠けていたのだろう。原作(訳)読んでなくても、まったくOK, 日本語の訳は、文庫化されて改訂されたのだろうか。 初版の訳は、意訳と話削りのオンパレードだと 独文授陣と当時の院生たちに非難されていました。訳の妙は、特に文学作品に関しては、意見が分かれるところですが。そういうわけで、映画の方が忠実だったりしてね(笑)  そうそう、映画に出てくる黄色い果実、ミラベルといい、 プラムの一種(現に、黄色すももとも呼ばれる)ですが、 ドイツでは、さくらんぼよりちょっと大きいかな、巨峰かなくらいの大きさなのですが、 映画ではテニスボールくらいある。 フランスの、ナンシーなどが名産地らしいのですが、 そこら辺は土が良いのか、それともナンシーミラベルが大きい種類なのかな。 MAOねぇさん、解説どうぞよろしく。追記。ナンシーミラベルというのは、大きな黄色スモモを指すようで、 これが映画で使われていた模様です。但し、フランスにお住まいのMao姉さんによれば、 ミラベルはフランスもドイツも変わらない様子。 映画に出てくる「ミラベル」は、ミラベルにしてミラベルにあらずです。 

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