私がこの世の中でいちばん苦手なのは歯医者さんである。歯医者さんへ行かなければならない状況になると、大げさではなく生きているのが嫌になるくらい落ち込んでしまう。そのため、毎日の歯磨きや口腔ケアには気をつけている。ここ2年ほどは幸運なことに歯科医の世話にならずにすんでいたが、数日前、大好きな黒砂糖のかかったかりんとうを噛んだとたん、下の前歯がぐきっという音がするくらい揺れた。その後に痛みが続き、しばらくは呆然としてしまった。痛みそのものは激しいものではなかったが、心理的ショックで頭が真っ白になってしまった。しばらくして前歯周辺の歯茎の痛みは治まったが、物を食べることが怖くなってしまった。特に前歯は食べ物を噛みきるといういちばん大切な部位である。
ちょっとでも固い食べ物はナイフとフォークで小さく切って、前歯を使わずに奥歯で食べているが、これではまるで高齢者の刻み食のようだと、自分の老化現象に本気で戸惑った。散々迷った挙句、一大決心をして歯科医を探して予約した。保険証を出してカルテを作り、簡単なアンケートに答えるとまずは全体のレントゲン撮影をして診察台へ。画面に広がった私のレントゲン写真を見て、若いドクターはまず、今度の治療は悪い箇所だけにするのか、今後のことも考えて全体のケアをするのかと訊いてきた。「いずれにしてもこのままだと早い時期に総入れ歯になるかもしれません」といわれ、思わずビビってしまった。
最近のテレビのコマーシャルでは「人生100年を生きる」を前提にした保険が売り出されている。資料によると昭和38年には153人だった百歳超えの人口は昭和56年に千人を超え、平成10年になると1万人を超え、平成29年に6万7千人以上になった。これからどれくらい生きられるのか、先のことは神のみぞ知ることではあるが、歯のことでびくびくと暮らしていくのはつらい。何よりも食べること、料理をすることが大好きな私にとって、ここは一大決心をして歯の治療をするしかないという結論に至ったのである。
来週、これから先の治療方針や治療にかかる費用も含めてを相談をすることになっている。つくづく長生きするのもたいへんだとため息をついている今日この頃である。
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Last updated
2018.04.19 10:22:26