2023/05/14(日)20:00
家康クライシス
家康クライシスのご紹介です。
大河ドラマで注目の集まる徳川家康。
本書は家康の人生を振り返る一冊です。
家康クライシス 天下人の危機回避術/濱田浩一郎【3000円以上送料無料】
【徳川家康ヒストリー】
家康クライシスというタイトルや、サブタイトル「天下人の危機回避術」から、家康の直面した困難を通して危機回避を学ぶビジネス書なのかと思いました。
実際に読んでみると危機回避術というよりも徳川家康ヒストリーといった趣でした。
徳川家康という人物に焦点を当て、その一生をつぶさに振り返るという内容です。
雑誌の特集などでは三方ケ原の戦いや関ヶ原の合戦といった有名なエピソードの紹介にとどまることが多いかと思います。
本書は一冊まるごと使って家康ついて語っているので、内容はかなりしっかりしています。
彼の人生に起こった戦いや事件を紹介するだけでなく、それが起こるに至った経緯についても細かく書かれています。
また、家康の祖父の時代から書かれているのも他の本ではあまり見ないように思います。
【戦いは合戦のみにあらず】
印象深かったのは、本能寺の変から関ヶ原の合戦付近でした。
天下人として上り詰めようとしている豊臣秀吉に従うか敵対するか、これは大きな選択であったと思います。
秀吉と直接戦っては、おそらく柴田勝家のように滅ぼされていたように思います。
秀吉は家康を江戸に飛ばしたり、あらゆる無理難題を吹っかけて来ます。
これは家康の力を削ぐ目的もあったでしょうが、家康がキレて戦いを挑んで来れば潰してしまおうという挑発であったように感じます。
こうした罠を躱しながら10年以上秀吉に仕えたのは冷静な危機回避であったと思います。
秀吉亡き後も駆け引きは続きます。
五大老として頭角を現しますが、他の大老や五奉行という有力者がいます。
おかしな動きを見せれば「秀吉様の遺言に反する」として追い落とされる口実を与えてしまいます。
表立って角を立てないようにしつつ、有力者同士の対立もたくみに利用していく手腕は見事としか言いようがないです。
こうした合戦以外の場での戦いは雑誌の特集などで描かれることはあまり無いように思いますが、こうした駆け引きがサブタイトルにある危機回避術であると思います。
【歴史を見る面白さ】
本書を読んでみて、歴史を見る面白さを感じました。
歴史は実際に起こったことですが、我々はそれを直接見ることはできず、資料などを通して触れることになります。
その資料についても正確性や解釈によって歴史の見え方が変わって来ると感じました。
徳川家について多く書いている資料としては「三河物語」が有名ですが、同じ物事に関しても織田信長の一代記「信長公記」と内容が違っていたりします。
本書では三河物語が頻繁に出て来ますが、他の資料も多く使ってなるべく客観的な事実を伝えようとする姿勢を感じました。
資料によって特定の家を贔屓して書かれていたり、戦力や戦果を盛っていたりと、正確に歴史を捉えるのは難しいと感じました。
一方で資料にもこうした人間臭さが感じられるのがまた面白かったです。
どうするの連続だった家康の人生。
そんな彼の一生をじっくりと振り返ることのできる一冊でした。
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