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テーマ:タイ(3327)
カテゴリ:タイ
先のカラヤニ王女の葬儀の時、僕は違う意味で感慨にふけっていました。
タイには伝統楽器で木琴の一種の「ラナート」があります。 タイの伝統音楽ではメインの楽器。 高名な演奏家で中興の祖「ソーン氏」の伝記的映画に「風の前奏曲」があります。 おそらくアメリカ以外のどこの国もが直面した問題で、近代化(欧米化:特にアメリカ化)をなす上で伝統を切り捨てざるを得ない状況がタイにもありました。 第二次世界大戦時には仏領インドシナと英領ビルマにはさまれてバッファーとして運良く植民地化しなかったという歴史観が多勢ですが、その状況下で列強に対抗するため、著しい近代化を強いられたわけです。 音楽も例外ではなく、ラナートをはじめ、古典楽器は演奏禁止の憂き目に合いました。 映画の中でも、軍事体制化の政府(軍隊)による表現統制の一環として、軍の高官がソーン氏の家を訪れて、演奏禁止の徹底を促すシーンがあります。 僕がこの映画の中で一番印象的に感じている部分なのですが、 ソーン氏は 「木はしっかりと根を張っていれば、嵐にも耐えられる。根を大切にしなければ、どう生き残るのですか?」 と、毅然とした態度でアンチテーゼをするのです。 ここで言う「根」とはタイの風土・伝統であり、当然音楽も属しています。 タイ人がタイ人であるためのルーツをないがしろにして、どうして生き残れるのかと言っているのです。 冒頭でカラヤニ王女の葬儀に触れましたが、サナーム・ルワンでは終始ラナートの柔らかな音色が響いていました。 その響きを聴きつつ 「ソーン氏の想いは今も生きているんだ~」 としみじみしたのです。 どの国も人も、近代化という流れの中で、大切なものを失い根腐れをおこして、揺らいでいる昨今。 スローダウンして、じっくりとルーツを感じながら生きて生きたいものです。 追記: 映画の中で、奥さんになる人?に初めて会うシーンがあるのですが、ソー・ウー(二胡)の音色とリーラワディーの花一片がとても印象的です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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