シングル母のアメリカ暮らし

2004/06/09(水)03:21

昔は個性。今、障害。

コドモの話、親の話(60)

長男は8歳だ。でもいまだ1年生である。 キンダーに2年行ったので1年みんなより遅れている。 思えば、生まれた時から、体の大きさ以外はいつも遅れ気味だった。 ハイハイも歩くのも、言葉もオムツはずしも、みーんな遅かった。 なのに体だけはいつも大きかったから、奇妙な目で見られる事もあった。 2歳のときデイケアの人に、「ちょっと自閉症とかの心配をした方がいいかもしれませんよ」と言われた。確かに一つ気に入った事があると異常なほど執着し、集中する。川で石を投げるのが面白いとなれば、延々1時間でも2時間でもひたすら石を投げている。1歳半の頃だ。 人ともあまり関わろうとしないし、よくくるくるまわっていた(自閉症の子によく見られる運動)。 でも、良く笑うし、目も合わせるので自閉症ではないだろうと思いつつも、そういったサポートグループに顔を出していた。 4歳になり、同じプリスクールに通う日本人の子と仲良くなった。その子にはお兄ちゃんがいて、お兄ちゃんは軽い発達障害を持っていた。彼らの母親と仲良くなり、家に出入りするようになったが、そのお母さんがある日、こう言った。 「こんな事言って悪いんだけど。私Mくんもちょっと心配なんだ。何かあるかもしれないよ。」 彼女は一冊の本を貸してくれた。 感覚統合障害、というものをその時初めて知った。その障害は自閉症の子などが二次障害として持っている事が多い。自閉的ではなくても、同じような行動をとったりするので、疑われる事も。 その本に書かれていた内容を見て、頭から霧が晴れた思いだった。 小さい頃から、芝生の上を歩けなかった。靴を履いていてもだ。 砂場も苦手、ブランコは6歳までのれなかった。 顔も洗わせてもらえない時期もあったし、今でも歯磨きが嫌で磨いている間、手をぐるぐる振り回している。 人から触られるのが嫌いで、ハグなどされると硬直してしまう。 予告なしで洗濯したり、掃除機をかけたりすると悲鳴を上げて逃げる。 いつも行く道と違うルートを通ると、不安に駆られて泣きわめく。 分けの分からない男だ、と苦笑しつつも、周りの子と比べてちょっと変だなと思う事も多かった。 長年のもやもやがすっきり解消。この本にそっくり同じ事が書いてある。 こうなったら、然るべきところに見てもらおうじゃないの。 そして長男にくだされた診断は、触覚と聴覚の感覚統合障害。 ゆくゆくは学習障害が出る可能性があると言う。 今年の春先には耳も詳しく見てもらうように言われ、そのテストの結果、 Central Auditory Processing Disorderと言われる。 何だかよくわからないけど、とにかく何かのディスオーダーなわけね。 しかも2時間のテストの半分が終わった段階で、ドクターから「明らかに、そうだ。」と太鼓判を押され、「一応テスト全部やってからにしてくださいよ」と思わず苦笑してしまったくらいだ。 この夏は、何千ドルも払って、トリートメントを受ける予定だ。そのためのお金も貯めたのだ。ほっときゃ直る、というものでもないそうだからだ。 人より学習能力が劣っていたって別にいい。 問題は彼の知能にはまったく問題がないので、自分の学習がうまくいかないとわかってくるあたりで、劣等感にさいなまされたり、自己評価がものすごく低くなったりすることだ、と言われた。 だからこの小さいうちにできるだけの事をしましょう、ということで、 食事療法、セラピー、エクササイズ、マッサージなどを定期的にやっている。 薬などは飲んでいない。 まったく金のかかる小僧だよ。(笑) 大人になったら請求書でも送りつけてやるかな。 ま、親として子供の必要とする助けは、できる限りはしてやりたいと思っている。だいぶいろいろな面で進歩が見られるようにもなったし。 しかしなあ、昔だったら、 協調性がない、だの落ち着きがない、だの運動神経がにぶいだの言われてた事に、脳神経学の進歩で、やたらといろんな障害名がついちゃったって感じは否めない。 感覚障害(Sensory Integration Dysfunction)、ADD/ADHD、LD、PDD。 誰かを何かに当てはめようとしたら、何かに少しは当てはまってしまうんじゃないかとも思えるような気がする。 私は息子の持って生まれたものを受け止めて入るけれど、それはこの子のキャラクターの一部だと思っている。人より劣っている訳でもないし、またそのことで優れている訳でもない。 状態を良くするために色々してやるのは親のつとめではあるけれど、「障害(とは思ってないんですけどね、アタシ)」を免罪符にして、息子の行動を言い訳して回るのも嫌だ。ただ目が悪かったら眼鏡を与える、歯が悪かったら歯医者に連れて行くのと同じ事をしてやるだけだ。 1年生ももうすぐ終わり。 背の高い長男は、クラスの中でも頭ひとつでかい。でかいが「中身が幼い(他の父兄に言われてしまった。好意的にだけど)」ので、不憫である。 未だにお迎えがちょっとでも遅れると、ボロボロ泣いている。 家に帰ってカウチに座るとうれしそうにすり寄ってきて「抱っこ」をせがむ。 (言っておくが145センチ、35キロである。そろそろ勘弁して。) 健康で、人様に迷惑をかけず、たくましく生きていってくれればそれでいい、と思いつつ、それでもできるだけいい状態に持っていってやりたいと思うのは、やっぱりどの親も共通の願いなのかなあ、と思う今日この頃である。 本日の献立: 煮込みハンバーグ、ハムの残り、野菜スープ、にんじんスティック、ごはん

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