ミステリの部屋

2006/09/19(火)18:19

水の迷宮:石持浅海

日本ミステリ(あ行作家)(52)

水族館に行きたくなったのは、この作品を読んだからです。 水族館という特殊な場所が舞台で、普段見ることのできない裏側も描かれているので、興味がつきませんでした。 首都圏の人気スポット・羽田国際環境水族館に一通のメールが届きました。 展示生物を狙った姿なき犯人の攻撃。 そして、ついに殺人事件が起きます。 事件の謎を解く鍵は、3年前にひとりの男が見た夢…。 今回も個性的なクローズド・サークルが描かれます。 水族館の中で事件は起こりますが、殺人が起きたのは、職員が持っている鍵でしか入れない場所。しかも警察には通報しないことを選択せざるを得ない状況になります。 送られてくるメールが巧妙です。 「東京湾の汚染はひどいですね」というように、どうにもとれる文が送られてきたあとに、東京湾を模した水槽に何らかの攻撃が加えられるというパターンが繰り返されます。 さんざん振り回されて殺気立つ職員。 そして起きる密室状況での殺人。 ただ一人の部外者とも言える深澤が探偵役となり、推理合戦では鋭い論理展開を見せて、全体をリードしていきます。 見えない犯人との攻防が息をつかせず、飽きさせませんでした。 もう一つの大きな柱である、男の夢の内容も素晴らしく、実現するためには目をつぶらなくてはいけないことがある位すごいものであることもわかります。 ただ、気になることが……。 これまでの作品からも感じていましたが、石持さんは、犯人がわかり捕まることが全てだとは思っておられないように感じました。 私は、たとえどんな事でも、免罪符にしてはいけないと思ったのですが……。  水の迷宮 : 石持浅海

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