ミステリの部屋

2009/02/20(金)22:30

スリー・パインズ村の不思議な事件:ルイーズ・ペニー

海外ミステリ(ハ行作家)(13)

家に鍵をかける習慣さえない、ケベック州の平和な小村 スリー・パインズ。 感謝祭の週末の朝、森の中で 老婦人の死体が発見された。 死因は 矢を胸に受けたと見える傷。 一見、ハンターの誤射による事故死に思えた。 だが、凶器の矢がどこにも見当たらないことから、ガマシュ警部は顔見知りによる殺人事件として捜査を始めた…。 「ポアロとモース警部へのケベックからの回答!」 と絶賛される本格ミステリの新シリーズ第1弾。 (「BOOK」データベースより) カナダが生んだ大型新進女流本格ミステリー作家、と紹介されている、ルイーズ・ペニーのデビュー作です。 新人賞を総なめしたというだけあって、引き込まれる面白さでした。 鍵をかける習慣もないくらい平和な村で、元教師・ジェーンの 矢傷を受けたような死体が見つかり、ガマシュ警部らが捜査にやってきます。 ガマシュ警部は物静かで情に厚く、仕事ができる カリスマ性のある人物。新人の育成にも熱心です。 警部の相棒ボーヴォワール警部補は 冷静で真面目な性格。ガマシュ警部を敬愛しています。 上昇志向が強く、自分本位な新人ニコル刑事だけが神経を逆なでしますが、ガマシュ警部は忍耐強く指導を続け、横で見ているボーヴォワール警部は ヤキモキします。 一方、スリー・パインズ村の住人たちは芸術家が多く 個性的な人物ばかりで、独特の人間関係を築いています。 ジェーンの 年の離れた友人だったクララは、深く嘆きながらも、ジェーンが見せなかった部屋の奥や、傑作か駄作か判断に迷った絵のことを思い出しながら、彼女なりに真実に近づいていきます。 この作品は、情景描写と心理描写が大変緻密で、まるで自分が登場人物になったかのように、村の景色も、人々もありありと浮かんできました。 もちろん、犯人に迫るまでのハラハラドキドキもありますが、それ以外にも 読み応えのある要素がたっぷりあります。 個性的で 豊かな物語に浸る幸せを感じました。 英国ミステリが好きな方にはぜひおすすめです。 原題は 『Still Life』です。こちらの方が より雰囲気を表しているかも。   スリー・パインズ村の不思議な事件 :ルイーズ・ペニー/長野きよみ

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