ミステリの部屋

2009/06/26(金)00:14

ロードムービー:辻村深月

ミステリではないがミステリ的要素を持つ本(19)

誰もが不安を抱えて歩き続ける、未来への“道”。 子どもが感じる無力感、青春の生きにくさ、幼さゆえの不器用…。 それぞれの物語を、優しく包み込んで真正面から描いた 珠玉の三編を収録。 涙がこぼれ落ちる感動の欠片が、私たちの背中を そっと押してくれます。 はじめましての方にも、ずっと応援してくれた方にも。 大好きな“彼ら”にも、きっとまた会えるはず。 (「BOOK」データベースより) ロードムービー/道の先/雪の降る道 読み終えてから こんなに時間がたって感想を書くなんて、自分でもあきれますね。それでもチクチクと胸を刺すような痛みは、すぐに蘇ってきました。 どれも、子供たちが主人公です。 「ロードムービー」  6年生になる前の春休みに、同級生のワタルと家出をしたトシの話と、学校で行われた児童会長選挙の様子が交互に語られます。応援演説のシーンにはぐっときました。 ある仕掛けに驚きます。爽快感がありました。 「道の先」  塾で講師をしているバイトの大学生と、生徒の中で女王のようにリーダーシップをとる女子中学生の千晶との交流が描かれます。 大人のつもりの中途半端な自分が嫌だった、思春期の頃を思い出しました。あの頃読んだら、励まされたかも……。 「雪の降る道」  毎日お見舞いに来るみーちゃんに冷たい態度を取ってしまう、病弱なヒロくんのお話。 純粋さと健気さが切なくて切なくて……。 この作品は、辻村さんのデビュー作「冷たい校舎の時は止まる」 ( 感想 )を投稿する前に書かれていた、サイドストーリーだそうです。 だからと言って「冷たい校舎~」を読んでいなくても、問題はありません。 けれども、辻村さんのファンならば、絶対読み返しておいた方がいいと思うのです。 いっそ知らなければ 気にならなかったのでしょうが、私は読んでから時間がたっていたため、誰のことかわかるようなわからないような感覚に、とてももどかしい思いをしました。 ただ、「雪の降る道」だけはわかりました。 忘れようがないです。 スガ兄はやっぱりかっこいい。 彼らのそれぞれのロードムービーの果てに……。 背伸びをしていた頃の、不器用だった自分を思い出しては胸が痛みましたが、読み終えた後には優しさに包まれました。 ロードムービー

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