ミステリの部屋

2009/07/14(火)00:16

銀杏坂:松尾由美

日本ミステリ(ま行作家)(38)

築三十年のアパート・さつき荘には、ひとりの幽霊が住み着いていた。 そのアパートの一室で、二百万円のダイヤのブローチが盗まれた! ところが 容疑者は全員シロ。 犯人は幽霊? 中央署の刑事・木崎と吉村は、幽霊に事情聴取をすることになるが…(「横縞町綺譚」)。 北陸の古都・香坂市を舞台に繰り広げられる、不可思議で切ない連作ミステリー。 (「BOOK」データベースより) 横縞町綺譚/銀杏坂/雨月夜/香炉峰の雪/山上記 香坂市を舞台に繰り広げられる5つの事件は、どれも、幽霊や予知能力などの 超常現象が関連しています。 主人公は 木崎という名の冴えない刑事。 アパート・さつき荘に出る幽霊と 盗難事件を解決したことがきっかけで、彼のもとには、次々に不思議な事件が持ち込まれるようになるのです。 これは ミステリの短編集ですが、登場する超常現象は、科学的に解明されるわけではありません。 ミステリと超常現象が同居した不思議な物語が、ユーモアと切なさを交えながら、静かに語られます。 そういえば、松尾さんの『ハートブレイク・レストラン』( 感想 )も そういう不思議さのある作品でした。 短編集には、別々の話が最後に一つになり、決着がつくというパターンがよく見られます。 この作品でも、最後にあることがわかるのですが、それが予想していなかった展開で、やや衝撃を受けました。 そのため、ますます切なく、ますます不思議な余韻が残りました。 私は単行本で読んだのですが、坂を上りつめたら自分の心の中が見えるような気がする、そんな絵が描かれた表紙でした。 文庫版は かなり印象が違います。 残念なことに、楽天ブックスでは、単行本も文庫版も 画像がありませんでした。 どこかで見かけたら、ちょっと思い出してみてくださいね。 銀杏坂 : 松尾由美

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