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本の足跡

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2007年11月02日
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テーマ:本日の1冊(3698)
カテゴリ:さ行 男性

警官の血 下

“警官の血 下”

評価:★★★★★

 

長編。

--- 梗概 -------------

罪、万死に値す-----。

過激派潜入の任務を果たした民雄は、念願の制服警官となる。勤務は、父と同じ谷中の天王寺駐在所。折にふれ、胸に浮かんでくる父の死の謎。迷宮入りになった二つの事件。遺されたのは、十冊の手帳と、錆びの浮いたホイッスル。真相を掴みかけた民雄に、銃口が向けられる・・・・・・。殉職、二階級特進。そして、三代目警視庁警察官、和也もまた特命を受ける。疑惑の豪腕刑事加賀谷との緊迫した捜査、追込み、取引、裏切り、摘発。半世紀を経て、和也が辿りついた祖父と父の、死の真実とは-----。(帯より)

----------------------

くはっ(≧∇≦)すごい。大スペクタクル小説です。

祖父の、そして父の事件の真相を、三代目警官の和也がようやく手にするのです。

しかーーーしっ!!犯人は上巻のうちから目星はつきます。だから、最後の方では、「あーやはりこいつが犯人なのね」ってな感じで一瞬肩透かしをくらった気がしました。がっ!!そんな単純な話ではないのです。

深い。とっても深い。民雄、和也と続くうちに、彼らはどんどん警官になっていくんですよね。警官の世界にどっぷり浸かる。自分はこうありたいという警官像があって、そうあるために清濁併せ呑むという感じです。

裏金作りや暴力団との情報取引・・・しかしこれらも警察組織のため、強いては国民の治安のためになっている部分があるがゆえ、 それを愚直に問いただすのではなく、そういう負の側面も自分の中で消化し、受け入れていく。

なんていいますでしょうか、警察の内部事情にも深く言及してあり、それだけでも読み応えあります。単なる殺人事件の犯人を追っているだけの話かと思いきや、警察上層部の複雑な思惑が裏で絡んでたり・・・といった感じで、もう最高です。

これ読んで改めて思いましたが、警察上層部(いわゆるキャリア)というのは老獪ですよね。無理難題を部下におしつける。そして、その難題を達成するためには、警察内では必要悪とみなされており、しばしば使われる方法をとるしかないということも分かってる。しかし、命令をする際は、その手段を使えとは言わない。しかしその手段をとるしか解決する方法のない難題を命じるということはつまり、暗黙にその方法を承諾しているのと同じなんですよね。

それなのに、いざことが起これば、自分はそんな手段をとることに承諾は与えていない、独断だとして、その現場警官を処分して我関せず。ひどい話です。

現場警官というのは大変ですよね。いざ大事件が起きれば、現場を知らずにトップにたった高見の見物キャリアによる命令待ち。実際目の前にどんな危機が迫っていようが、上からの命令なしには何もできない。

確かに、上意下達は必須でしょう。でも、それは、上の者が的確な指示をだせるという前提あってのもの。実際には、上層部は事件解決よりもいかに事後マスコミや世間から非難を浴びないかばかりを優先的に考えるんですよね。

それにいい例が愛知県の立てこもり事件でした(この事件は下巻の最後の方にも少し出てきます。)。目の前に警官が撃たれて倒れてても5時間も放置。同僚のあんな姿見せられてたら現場の士気もさがるでしょう。挙げ句の果てが発砲命令も出ないまま(許可が出てたなんて話もありましたが、事件の様子を見ている限り発砲はダメだったんでしょうね。)むざむざと二人目の警官被害者をだして。

きわめつけは、投降した犯人に「ありがとう」はないでしょう・・・。あれでは日本の警察もなめられますね。それもこれも、やはり犯人に発砲した場合に予想される人権派弁護士、マスコミ、世間からの非難を恐れたキャリアに責任があるんだと思います。

まっ、キャリアは出世街道にのるためにも、自分の在任中に大きな失態が起きないことが最優先課題なのでそうなるんでしょうけど。とばっちりを受ける現場警官はたまったもんじゃないですよね。捨て駒かっちゅーの。

・・・なんか話がだいぶ脱線しちゃいましたね(;^ω^A

つまり、この話は、とっても深くておもしろいってことです。色々な要素が複雑に絡み合って見事に大きな一つのお話になってます。読み終えた後、ようやく『警官の血』というタイトルの深みに気が付きます。まさに、警官の血って感じです。

他にも、戦後から現在にいたるまでの世相なんかも描かれててとってもおもしろく読めます。戦後戦後と一口に言っても色々な出来事があったんですよね。戦災孤児や過激派左翼が起こした事件等々、読んでいるだけでも戦後から現在までを生きてきたような臨場感ですよ。

警察もの好きの私にはたまんない二冊でした(*´▽`*)

=== 202冊目 読了 ===

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最終更新日  2007年11月10日 07時21分22秒
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