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本の足跡

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2009年01月22日
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テーマ:本日の1冊(3697)
カテゴリ:は行 男性

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“エロス - もう一つの過去”

評価:★★★★★

 

広瀬正小説全集。第三巻。

--- 梗概 -------------

芸能界に確固たる地位を築いた大歌手、橘百合子。その歌手生活37周年記念リサイタルを前に、ふとしたきっかけで振り返った過去-あの時、もし違う選択をしていたら、どんな人生だったのか?回想はデビュー直前の昭和8年に遡り、歌手になることのなかった「もうひとつの人生」が浮かびあがる。そこで見えてきた意外な真実とは。人生の切なさを温かく包む、パラレル・ワールド小説の傑作。

----------------------

ありえたかもしれないもう一つの人生、

途中まで来て消えてしまったもう一つの道。

そういうものに対して人はいくばくかの拘泥を、

なにほどかの愛惜を感じ続けるのではあるまいか。

    (阿刀田高 「黒喜劇」 より)

 

なにがしあわせの原因になり、なにが不幸の原因になるかわからない。

人の一生なんて、ちょっとしたことで変ったりするんだよな

(阿刀田高 「他人同士」 より)

 

誰しも一度は考えたことがあるはず。「あの時別の道を選んでいたら、今頃どんなだったろうか?」と。

そんな、“ありえたかもしれないもう一つの人生”を描いてみたのがこの作品。

すごくおもしろいです!!考えさせられます。

人は、もう一つの人生を考えるとき、たいていは選ばなかった道の方が選んだ道よりもよかったのでは?と思いますよね。

確かに、そちらの道の方がいまより幸福だったかもしれない。でも反対に、今よりもっと悪い人生だったかもしれない。その可能性は五分五分です。(その「幸福」だって、結局は主観によりますものね。)

また、些細な選択でも、それを変えることは他の事象にも少しずつ影響を与え、その影響が波及し、ゆくゆくは大きな世界規模での歴史の変革をももたらすのかもしれない。

反対に、阿刀田高さんが「海の挽歌」でこう書かれていたように、

個人の生活でも、さまざまな分岐点を通過したあとで、

-あのとき、あっちの道へ行っていたら-

と、後悔を覚えることも多いけれど、同じ人間のやることなのだから、

五年、十年の長さで考えてみれば成功も失敗も同じように遭遇して

結局はよく似た道をたどり似たような状況に落ちつく。ちがうだろうか。

ベつの道を選んでいても、結局は今とさほど変わらない人生になっていたのかもしれない。

さてさて、広瀬さんはどちらのパターンでパラレル・ワールドを描いたのか?それは読んでのお楽しみデス(o^∇^o)とってもおもしろかったです。本当に!!

結局、今の人生が一番いいんだと、そう素直に思えることが一番幸せなんだと思います。あの時あぁしていたら・・・とか悔やんでも仕方のないことを悔やんで今を無駄にすることが一番不幸なことですものね。

もっと別な生きかたがあったかもしれないが、

ここで思案を蒸し返してみても始まらない。

なにもかもしっかりと考えて、自分で選んだことなんだ。

罌粟つぶほどの後悔もない。

(阿刀田高 「真夜中の料理人」 より)

 

と言い切れるといいですね。そのためにも、艱難辛苦を乗り越え、どんなことにも幸せを感じ、自分の力で人生を輝かす人間になりたいものです(≧ω≦)

・・・それにしても、広瀬正さんの作品紹介だっちゅーのに、阿刀田さんの作品から引用しすぎですね( ̄へ ̄|||)そこんとこはご寛恕くださいεε(*▼ω▼)ノ

=== 5冊目 読了 ===

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最終更新日  2009年01月22日 14時37分18秒
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