カテゴリ:カテゴリ未分類
低い雲が垂れ込めている。
三脚とカメラバックを持って、見上げる空は今にも雨が降り出しそうな空だ。 駐車場までの短い道のりは、既に頭の中身を空っぽにしている。 後部席に荷物をシートベルトで締め付けて運転席に座る。 タバコに火をつけて、一つ大きく深呼吸。イグニッションを回せば、4000ccの低い雄叫びを上げる。心地よい振動に身を任せ、もう一度肩で大きく深呼吸してサングラスを取り出した・・・。 車重2トンの化け物を取り回すテクニックは身につけた。左足ブレーキに、荷重移動からのドリフト。横に流れる車窓からガードレールギリギリに意のままにコントロールするアクセル、ステア操作。 「狂ってる」。 大抵の人はそう言う。でも、自分にとってクルマを神経の一部に取り込むことは日常的なことだし、そうすることによってクルマと一体になれる。緊急回避も出来るようになれば、事故の確立も減る。 普段、軽く流すときは50~80%で流す。でも、今日は違う。走りたい。アドレナリン全開だ。 走るといっても、他車に迷惑はかけないのがマナー。ワインディングに入り、前後にクルマがいない事を確認してアクセルを床まで踏みつけた。「吼えろ!4000ccOHV」時速80kを超すと、俄然加速がよくなる。100k、120k、150k。高速コーナーを針の穴を通すような感じで正確に的確に抜けていく。 ABSが作動する、フルブレーキングからのドリフトで左後部バンパーとガードレールまでの距離は数センチ。マンガの世界じゃないから、ミリ単位までは寄せられない。その前に、このディスカバリーでそんな運転をするヤツを見たことは無い。 目指すは、Tさんを連れて行った林道。あそこをタイムトライアルしたい・・・。自分の限界を知りたい・・・。 大きな国道に出ると、流れに乗ってユックリ運転する。 いよいよ、雨が降ってきた。上等だ。泥道でも何でも良い、条件が悪い方が燃え上がる。 福島県から山形県に抜ける県境のトンネル。中には入らず右折する。林道の入り口だ。サブトランスファーを、前へ、ローギアードに入れ、そのまま左にシフトしてデフのロックをかける。最初の傾斜は30度近い。壁のようだ。大きな轍は水が流れて、20センチ以上の深さがある。そんな悪路でも、全く意に介せずコイツは上っていく。普通のクロカン車でも、ルート選びに苦労するのに、全く関係ない。 一度上りつめれば、後は多少大きな凹凸があるけれど、そんなの知ったことではない。 小枝が車体を打つが、そんな傷はクロカン乗りの勲章だ。 クルマ一台がやっと走れる道を、車体を滑らせ速度を上げる。ATだけれど、サブトランスファーをハイに、ロックに切り替えて、両足は、アクセル、ブレーキと神経が直接クルマの駆動系に連動しているみたいに勝手に動く。水しぶきを上げて、水溜りを通過して、対向車が来たら、「間違いなく死ぬな」と思いながらも、踏んだアクセルは緩めない。 いつの頃からか、嫌な事があると、深夜の峠道に繰り出して、峠小僧をあおり倒して遊んでいた。見てくれのドリフトは、そのまま速いドリフトにはならない。滑るか、滑らないか、その瀬戸際がタイヤの一番良い仕事なんだ。だから、ドリフトは方向転換で一瞬使うだけ。長いドリフトは無用なタイヤの消耗を招くだけ。 ディスカバリーに乗り換えて、林道を走ると、実に足回りが良い仕事をしてくれる。むやみに跳ねないし、空転も起きない。着実に路面をグリップしてくれるんだ。 道を変えて、20時まで走り回ってました。 流石に、この重量級で峠小僧に喧嘩は売りたくないんでそのまま帰ってきましたが、一見優雅に見えるディスカバリー、本当は凄く熱い走りが出来るんです。ただ、乗ってるのが大抵金持ちで、その本当の価値観に気が付かないだけ。・・・もったいない事です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|