メキシコ麻薬戦争
メキシコの麻薬戦争(http://www.time.com/time/photogallery/0,29307,1651420_1425324,00.html)が激化している。今年だけでも、犠牲者の数は1400人を越えるというから深刻な事態になっている。麻薬カルテル同士の抗争だけでなく、メキシコ政府の強い対決姿勢が背景にある。カルデロン大統領が就任してから、麻薬カルテル撲滅を掲げて、陸軍部隊を投入している。これが激しい麻薬戦争を引き起こした要因になった。麻薬戦争が始まってからのメキシコ人の犠牲者は4000人を超えていて、野党からの批判も増えているが、まったく動じていない。職場を放棄する警察官や暗殺される政府高官が出ても、対決姿勢を緩めることがない。 米国は世界最大の麻薬市場を持っている。南米コロンビアは世界最大のコカイン生産国になる。この二つの国を結ぶ線上にメキシコがあるから、世界最大の麻薬ルートが存在することは間違いない。ところが、メキシコではマフィア同士の抗争はあっても、麻薬ルートで激しい攻防戦が起きたことはなかった。国境地帯では、政治家と警察幹部がマフィアとつながっていて、事実上麻薬のフリーパスが続いていた。手を焼いた米国政府が強い対策を要求したことで、本格的な麻薬戦争が勃発したのである。カルデロン大統領が陸軍を投入したのも、地元警察が信用できないことを物語っている。 メキシコの麻薬輸出による収入は、2兆円を超えると想定されている。国境地帯の重要な産業を構成している。麻薬密売で生活しているメキシコ人も多い。密輸を取り締まるよりも、上前を求める警察官が出ても不思議ではなかろう。経済システムとして成立していたから、誰も手を出せなかった。米国マフィア側も安い麻薬を求めていたので、メキシコルートは好都合だった。多くのメキシコ人が麻薬から利益を得て、生活の糧にしていたので、これをつぶそうとする大統領が誕生することを予測できなかったの無理はない。そんなことをして、メキシコに何の利益があるというのだろうという疑問の声は相変わらず強い。 麻薬カルテルは復讐の対象として、警察幹部や政府の高官を暗殺のターゲットにしている。襲撃を恐れて亡命した警察署長が出ているのもメキシコらしい。莫大な利益を生み出す麻薬ルートを失えば、南米の麻薬カルテルは存在することができないから、メキシコ政府に対して反撃に出るのも当然だろう。国境地帯が血で血を洗う戦場になったのも、マフィアにとって最大の危機であることを暗示している。メキシコ国境が封鎖されると、コロンビアは手を打てなくなる。総力を挙げてメキシコ政府と対決してくる。人間が麻薬を手離せるわけはないから無駄な戦争だという批判と何としても麻薬カルテルを消滅させろという考えが交錯している。それでも、カルデロン大統領の決意は固く、あくまでも・・・。