クリスティアーノ・ロナウド包囲網
卓越した能力を持つ選手が、すべての組織に受け入れられるとは限らない。南ア・ワールドカップで期待されたストライカーの多くが、多大な失望感を味あわせて敗退している。ルーニー、Cロナウド、メッシの3人は、ほとんど力を発揮できずに破れてしまった。目立たなかったビジャやスナイデルが得点の上位に名前を並べるという現象さえも起きている。ストライカーにとって、1か月の短期間勝負で確実な結果を出すことはむずかしい。 ポルトガル国内では、Cロナウドに対する厳しい批判が巻き起こっているという。ポルトガルが敗退したのも、ポルトガルが実力を発揮できなかったのも、Cロナウドの責任であるという論調が続いている。これに、私生活上のスキャンダルがからんで、Cロナウドは四面楚歌の立場にある。このバッシングがポルトガル人のメンタリティと言うのならば、優勝候補にのし上がる時代は、なかなか来ないかもしれない。 サッカーは、卓越した一人のプレーヤーがいても戦えない。組織力が背景にないと、トーナメントは勝ち抜けない。Cロナウドとメッシは、常に比較の対象になるけれど、独立独歩でゴールに突き進むCロナウドとバランスを計算できるメッシのサッカーに対する姿勢はかなり違う。Cロナウドは自分でゴールを奪うことに命を燃やす。メッシはバルセロナ流の組織プレイを愛する。 ワールドカップになると、どのチームも失点を恐れて堅い守備陣を形成する。アルゼンチン代表のメッシは、相手側の徹底マークにあって、ほとんど力を発揮できずに終わった。組織から孤立していたCロナウドは、孤軍奮闘するばかりで、チャンスにさえめぐりあわずに空回りで終わった。 マドリードのモウリーニョ監督は、Cロナウドの特質に合致させた攻撃戦術を組み立ていると語っている。ポルトガルのように組織の一員としての存在では、その能力が発揮できないことを察知している。遠慮せずに好きなように突進することが、Cロナウドの力を発揮できる方法論だと熟知している。派手な遊び人と呼ばれるCロナウドが、実はマドリードの練習時に最初にやってきて、最後まで練習することを知って、Cロナウド中心の戦い方を進めていくことを決めたらしい。確かに組織の中に埋没しているCロナウドは魅力がないし、その能力も発揮できない。マドリードの新戦術が気になる。