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カテゴリ:ちょっとした知識
パン製法の一つに、「ポーリッシュ(poolish)法」という方法があります。別名に、水種法とも、液種法とも、呼び方もありますが、これは種の状態に由来しています。
まずは、ポーリッシュ法の歴史的な面について考えることにします。 ポーリッシュ法は、19世紀前半に、ポーランドで生まれました。「ポーリッシュ」という名前は、ポーランドという国名に由来しています。そしてその後、ポーランドから、オーストリアのウィーンへと伝わっていきました。 ポーリッシュ法は、ウィーンに伝わった時に、同時期に誕生したばかりの「工業的に生産されたイースト」と巡り会う事になります。ウィーンのパン職人達は、ポーリッシュ法とイーストを用いた、新たなパン製法を生み出しました。 そのため、文献には、『ポーリッシュ法は、「工業的に生産されたイースト」を使用した最初の製法であった』、という記述が見受けられます。 逆に考えるのならば、ポーランドで生まれたポーリッシュ法の初期段階では、いわゆる「自然種(自家製酵母)」を使用していたと思われます。 そして、ウィーンにおいて、イーストによるポーリッシュ法へと進化していったのでしょう。 その後、19世紀中ごろ、ポーリッシュ法はパリへと伝わったあと、フランス各地へ伝播していったと言われています。 そして、20世紀前半(1920年代ぐらいと言われています)までは、フランスにおいて、ポーリッシュ法はフランスパン(パン・トラディショネル)の標準的な製法でした。 余談ですが、ウィーンからパリへ伝わった時、「ウィーンのパンだ」ということで、ポーリッシュ法で作られるパンは、パン・ヴィエノワ(ウィーンのパン)と呼ばれていたようです。それに対して伝統的な中種法で作られるパンをパン・フランセ(フランスのパン)と呼んでいたようです。 ここは間違えやすいと思うので、気をつけておきたい所なのですが、ここで言う所の「パン・ヴィエノワ」は、現在よく見かけることのできる、長細い形で牛乳やバターの入っている「パン・ヴィエノワ」と呼び方はおなじですが、性質が異なっています。製法に由来する名称と、配合に由来してる名称の「パン・ヴィエノワ」の2つの「パン・ヴィエノワ」があるのです。 つまり、ポーリッシュ法を使用したフランスパンを、かつては「パン・ヴィエノワ」と呼んでいた、と、認識していただけると、わかりやすいのではないのでしょうか。 このように、ポーランド~ウィーン~パリと伝わっていったポーリッシュ法なのですが、20世紀前半に、機械によってミキシングを行う「ストレート法」が盛んに行われるようになると、廃れてゆき、一時はほとんど使われる事のない製法になったこともあります。 しかし、近年、その製法によるパンの長所が見直され、数々のパン屋で採用されてきています。 さて、次にその製法の特徴を考えていきましょう。 特に顕著である特徴は、一番最初に用意する種が、液状(ドロドロ)である事だと思います。この点が「液種」とか、「水種」と呼ばれる所以だと思います。 具体的には、比率が、粉が1に対して、水が1。それに少量のイースト(もしくは、醗酵種)を加え、塩の添加は、あってもなくても良い、といった感じでしょうか。 中種と本ごねでの粉の比率は中3:本7の時もありますし、2:8のときも、4:6の時もありますので、特に製法において固定した割合はないようです。 以下、その他の特徴を箇条書きしますと、 ・液状の中種を長時間醗酵させ(オーバーナイトさせるのが、標準的かな?)、それを本ごね時に用いる。 ・ストレート法と比較して、本ごね後の醗酵時間が短縮しても、味と香りの良いパンが作る事ができる。 ・中種を長時間醗酵させる事により、若干の酸味が発生する。 ・ミキシング耐性に強く、ボリュームも確保しやすい。 ・種が液状であるため、大量に作る時には、種の置き場所に困る(笑)。 ・ボリュームが出やすい為、味が薄くなる事もある。 ポーリッシュ法を定義することは、少し難しいのですが、だいたい、以上の事柄をおさえておけば、ポーリッシュ法に対する正しい理解となり得るのではないでしょうか。 つまるところ、ポーリッシュ法とは、前種に液種(水種)を使用する製法というところが、一番の特徴なのだと思います。あとの工程や配合などは、かなりの柔軟性があります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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