環境機器株式会社の社長フィロソフィー日記

菅野くんの結婚式でもそうだったけれど，デジカメなどの記録技術が身近になったせいか，イベントになると「芸能人の会見」状態である．「決定的瞬間」を記録に残そうと，自分の目で見るよりもカメラのファインダーを通じて見る．写真やビデオを取ってしまうと，逆に安心して見ることを楽しむことを忘れてしまう．そういう僕も保育園の発表会なんかではずっとビデオを回してしまう方ではある．

「ライフログ」という実験があって，自分の生活のすべてをビデオや写真を収めている人がいる．数年前に食べた朝食の写真，あった人，電話で話した内容なんかをすべて記録していく．その先には，それらのデジタルデータをサーチエンジンで検索することも可能になるという．ちょっとばかばかしい感じではある．

大事な瞬間を正確に記録することの是非はあると思う．大切な想いでは曖昧な記憶の中にあるから美しいということもよくあることだ．優しそうだったもう亡くなってしまったおじいさんが実際はただの醜悪な老人であったり，こんなに可愛い赤ちゃんがいるのかと思っていたら数年後に写真を見直したら「千代大海そっくり」だったり（うちのことです），記憶の中で美化されていって良い思いでになっているのに，わざわざ「正確な記録」を見せてもらわなくてもいいと思う．

僕は駅前の家で育ったのだが，家には大きな庭があって鯉が泳ぐ池があり木が沢山植えてあった．庭で色々な「なんとかごっこ」とかして，自分の記憶ではすごく広い庭のような気がしていた．でも実際の数字を考えてみると，家や以前の会社の建物なんかを入れても２００坪ちょっとだったと思うから，そんなに「広大な」場所ではなかったはずだ．でも子供の僕には十分に「広大な」美しい場所だったのだ．

そう言えば余談になるが，ＢＳデジタル放送やハイビジョンでテレビを見ると，いままでのアナログ放送はなんだったんだろうと思うくらい画像が鮮明だ．女優の皺もシミも化粧の後も，何もかもが鮮明で，これはこれで夢を壊すなあと思う．

何でも正確に記録すれば良いってもんじゃない．我々の脳はハードディスクじゃないのだから．悪い情報は忘れ，良い情報だけを覚えて前向きに生きるって大切ですよね．