黒牢城 By米澤穂信
米澤穂信 よねざわほのぶ は日本のミステリー作家とされている。私はミステリー小説やミステリー映画を好まない。なぜ他人が仕組んだ謎とその落ち(解明)を必死に探さなければならないのか?時間の無駄。と考えている。しかし米澤穂信の、「満願」を読んだとき、この作家は天才だと思った。「満願」は直木賞候補にもなり、山本周五郎賞を受賞したように、一般の評価も素晴らしい。その後、私はこの人の作品を、ボトルネック、折れた竜骨、インシテミル、、などいくつか読ませて貰ったが、やっぱり何かミステリー小説は面白くなかった。。ミステリーと言うのは作家が仕組んだ罠やプロットを楽しめる人には良いけど、どうしても、他人があらかじめ考えたオチを探るのは時間の無駄だと思ってしまうのだ。そんなミステリー作家が書いたものだが、この小説は織田信長に謀反した荒木村重が1年以上有岡城に立て篭もったことと、その配下の武将や足軽、民草らが籠城をいかに過ごし、荒木村重がいかに配下を統ていたのか、が今、目の前にあるかの様に再現されている。本当に凄い小説である。米澤穂信が遂に「直木三十五賞」を受賞した傑作中の傑作。ミステリー要素はあるし、それらに関するくだりははっきり言って私にはストーリーの端にあるどうでもいい事象であり、これは歴史小説として完璧と言える。ストーリーは、1578年、荒木村重が織田信長に謀反を起こし有岡城に立て籠もった事件(有岡城の戦い)の中で、荒木側の人々や囚われた黒田官兵衛の心の動き、合戦、配下の武将らの動揺、黒田官兵衛の天才振り、それらが詳細に描いている。スーパーお勧め出来る小説であり、金字塔と言える。