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▼誠に残念な経済誌の記事▼ 誠に残念な雑誌記事を見つけたので紹介しておきたい。週刊ダイヤモンドの今週号の「安倍マジックのタネ明かし」と題する特集記事にあった記事だ。 ■謎解き5 迫る「双子の赤字」経常収支はどうなる? ―――2013/04/06付 週刊ダイヤモンドP41より ■謎解き13 借金だらけの日本の国債になぜ買い手がいるのか ―――2013/04/06付 週刊ダイヤモンドP56より 要するに、日本の「国の借金」(笑)の水準はギリシャ、イタリア、スペインなどよりも悪く、その上経常収支が悪化していけば、そのうち日本もギリシャなどと同様、財政破綻が生じる、とするものだ。経済専門誌がこの程度の与太話を述べるとは、呆れて物も言えない(笑)。 この手の雑誌が言う「国の借金」とは、恐らく、日本国債のことが言いたいのだろう。そして、日本は政府の総債務残高の対GDP比率が「飛びぬけて悪い」と述べている。 ちなみに、ギリシャがデフォルトした最大の理由―すなわち日本政府が絶対にデフォルトしない理由―は、GDPに対する債務残高比率が高いとか低いとか、そういう理由ではない。それは、 「日本国債が不換紙幣である円建で発行されているから」 である。 ▼日本の資金循環から読み解く、運用難という環境▼ 確かに、日本政府の公的債務GDP比率は世界でも突き抜けて高い。これは事実だ。しかし、それと同時に、日本の家計部門が保有する純金融資産の額は1,193兆円。対外純資産残高は301兆円(金融資産のみであり、不動産、パテント等は含まない)と世界最大である。だいいち、金融資産・負債の世界では、「誰かの資産は誰かの負債」なのだ。 日本国債がデフォルトしない最大の理由は、 ・政府が日銀を支配しているから に他ならない。 ・日本政府は資金需要主体である という点は事実だが、 ・お金を借りている主体としては、お金を貸してくれる人がいなくなると困る →国民が政府を信頼しなくなった時に、国債を買ってくれる人がいなくなる →だから財政再建しなければならない という議論を構築しているのならば、その議論の出発点が誤りだ。というのも、一国全体で見ると、実は、 ・お金を貸している主体としても、お金を貸す相手がいなくなると困る という側面もあるからだ。そして、現在、円という通貨そのものを使ってくれる人がいないから、仕方なしに政府がお金を借りているという側面があるのだ。政府はイザとなれば、相続税でも消費税でも、何としてでも国民から税収を吸い上げてお金を返す事もできるし、インフレを誘発して債務価値を低減させるという技を使うことも可能だ。 しかし、ギリシャやポルトガル、スペイン、アイルランド、イタリア、あるいはキプロスといった諸国の場合、自国の利用している通貨を支配していないから、債務を償還するためには増税しか方策がないのである。また、韓国やアイスランドのように、単一通貨国であっても自国通貨の国際的信認が乏しい場合、必然的に国内の金融部門が、ある程度、外貨建で資金を調達せざるを得ないのだ。 ▼世界最強の金融立国・日本▼ いずれにせよ、アベノミクスを批判したいがために記事を書きたいという気持ちは判る。また、新聞やテレビが健全な政権批判機能を喪失している現在、自民党政権に対する監視の目は必要だ(もっとも、現在の自民党政権の政策には十分な合格点が付けられるだろうが…)。だからといって、嘘を付いてまで国債の問題を論じるのは不適切だ。まともな経済学を修めた人間であれば、日本国債が債務不履行の恐れがあるわけなどないとすぐに判るからだ。 但し、銀行セクターが国債を保有しすぎる中で、日本銀行がインフレ目標を掲げているという状況は、警戒に値するだろう。日本国債のデフォルト(日本政府に対する信用リスク)は除外して良いが、日本国債の金利上昇(=債券価格の下落)リスクについては、健全なマス・メディアによるモニタリングが必要であり、それを担い得るマス・メディアは、残念ながら現在の日本に存在しないのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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