テレビに踊らされた有権者の退場~新宿会計士政治ブログ 2013/07/31(水)号~
週末の「新宿会計士のブログ」に、第23回参議院議員通常選挙の分析を掲載した。政治にご関心のある方は、是非ご一読賜りたいと思っている。今回の選挙戦では、比例区の有効得票数(※投票総数、ではない)が5,323万票と、今世紀に入ってから最低値を更新した。これについて、若干の補足をしておきたい。その前に、基礎的なデータは次の通りである。第19回参議院議員通常選挙:2001年7月29日(首相:小泉純一郎)/比例区総票数:54,682,105票第20回参議院議員通常選挙:2004年7月11日(首相:小泉純一郎)/比例区総票数:55,931,782票第21回参議院議員通常選挙:2007年7月29日(首相:安倍晋三)/比例区総票数:58,913,610票第22回参議院議員通常選挙:2010年7月11日(首相:菅直人)/比例区総票数:58,453,432票第23回参議院議員通常選挙:2013年7月21日(首相:安倍晋三)/比例区総票数:53,229,613票また、自民と民主の獲得した議席は次の通りだ(パーセントは獲得した議席率を示す)。第19回選挙:自民(64議席、52.89%)、民主(26議席、21.49%)第20回選挙:自民(49議席、40.50%)、民主(50議席、41.32%)第21回選挙:自民(37議席、30.58%)、民主(60議席、49.59%)第22回選挙:自民(51議席、42.15%)、民主(44議席、36.36%)第23回選挙:自民(65議席、53.72%)、民主(17議席、14.05%)このうち、民主が60議席を獲得し、自民が37議席と惨敗に留まった第21回参院選(2007年7月29日実施)のときには、比例区総票数が5,891万票と、今般の選挙よりもおよそ500万票多かった計算だ。ちなみに、衆院選については次の通りだ。第42回衆議院議員総選挙:2000年6月25日(首相:森喜朗)/小選挙区総票数:60,882,471票第43回衆議院議員総選挙:2003年11月09日(首相:小泉純一郎)/小選挙区総票数:59,502,374票第44回衆議院議員総選挙:2005年9月11日(首相:小泉純一郎)/小選挙区総票数:68,066,292票第45回衆議院議員総選挙:2009年8月30日(首相:麻生太郎)/小選挙区総票数:70,581,680票第46回衆議院議員総選挙:2012年12月16日(首相:野田佳彦)/小選挙区総票数:59,626,564票自民党が躍進した2012年12月の総選挙では、小選挙区の総票数が6000万票を割り込んだが、自民党が惨敗した2009年8月の総選挙では、小選挙区の総票数が7000万票を超えていた。また、自民党が圧勝した「郵政解散」として有名な2005年9月の総選挙では、小選挙区での投票数が6800万票に達している。ここから判明する事は、2005年9月の「郵政解散」を除き、自民党が圧勝しているときは投票率が低く、民主党が圧勝しているときは投票率が高い、という事実だ。これをどのように解釈すべきなのだろうか?▼マスゴミに踊らされる有権者?▼唐突だが、マスゴミは政局が大好きだ。官僚の世界では、日本のマスゴミは「鳥の脳」と揶揄されているそうだが、自分で政策や論点を理解して分析し、解説するだけの能力がないから、それも仕方がないことだろう。政局とは、言ってみれば政治的なドラマであり、取材能力のない日本のマスゴミからすれば、大した記事を書かなくても部数を伸ばすことができるチャンスなのである。自民党が惨敗した2007年の参院選と2009年の衆院選は、こうしたマスゴミによる政局誘導があったのではないだろうか?民主党に投票した皆さんであれば、テレビを見て「自民党許せない!」などと叫んで安易に民主党に投票したという事実はないだろうか?もう一度、胸によーーーーーーーーーく手を当てて考えてみて欲しい。ちなみに当職が申し上げている事は、決して、当職の心の中の妄想などではない。特に2009年の衆院選では、テレビから情報を得ている人の民主党支持率が、インターネットから情報を得ている人と比べて有意に高かったということについて、客観的な研究も公表されている(この点については下記リンク先文書のP6~7あたりに詳しい)。■経済政策と投票行動に関する調査(※PDF注意)―――2009年9月10日付 日本経済研究センターHPより具体的には、投票に際して「テレビのワイドショー」等を主な判断根拠にした人の過半数、そして「新聞や雑誌」を主な判断根拠とした人の半数近くが民主党に投票。また、「家族や友人」に聞いたという人も、4割以上が民主党に投票していた事が明らかになっている。これに対して「候補者自身や政党の刊行物」をベースに投票行動を判断した人の中で、民主党に投票した人は3割少々となっており、自民党とほぼ拮抗。「インターネット・携帯サイト」をその判断根拠にした人の場合、自民党に投票した人の割合が、民主党に投票した人の割合を上回っていたのだ。2009年の総選挙におけるテレビ局の罪は重いと言わざるを得ない。▼定量的な意義付け▼上述の通り、2012年の衆院選では、2009年の衆院選と比べ、投票者が1000万人減少した。また、2013年の参院選では、2007年の参院選と比べ、投票者が500万人減少している。そして、当職は、まさにこの500~1000万人の層こそが、テレビに踊らされた情報弱者であったのではないかとの仮説を提示したい。恐らく、これらの情報弱者層は、前回の参院選と衆院選で民主党に投票してしまい、「しまったな…」と思っているのではないか?自分達の投票行動によって日本が傾きそうになってしまい、慌てて「いや、どうせ誰が首相をやっても同じだから」と自分の中で自分の罪がなかったことにしたい気持ちで一杯なのだろう。いずれにせよ、今回の自民党圧勝の理由は、何と言っても、大した考えもなしに無責任な投票行動を取る情報弱者層が減少したことにあると考えるならば、テレビの偏向報道にも、国民を目覚めさせるという「反面教師」という意義があったのだと考えられなくもないのかもしれない。