ナマコ先生。
遅ればせながら東京旅情その1。 「ゾウの時間、ネズミの時間(中公新書)」という本をご存知ですか? サイズ生物学の本、要するに、からだの大きさによって時間の進み方も違う、というような内容だったと思うのですが、僕がその本を読んだのは、中学だったか、高校だったか。当時の記憶は曖昧で、読んだ感想も正直定かではありませんが、何となくひきつけられるものがあって、こういうこともあるのかなぁ、という程度でした。 時を経て、からだの勉強をすすめるうちに「生物のデザイン」という本にめぐりあいます(惜しむらくはすでに絶版、大阪の図書館にはあります)。この本の内容は一言では表し難いのですが、ともかくおもしろくて、感銘を受けた。 それで著者の紹介に目を走らせると、先にあげた「ゾウの時間、ネズミの時間」も書かれた、「歌う生物学者」、現東工大教授の本川達雄先生だったんですね。なんで歌う生物学者かというと、小難しい生物学を歌にして伝える、というユニークな方法を実践していらっしゃる(ちなみに僕は精子と受精をテーマにした歌が哀愁漂っていて好きでした)。 前おきが長くなりましたが、その先生と東京滞在中に会うことができました。駄目もとでメールで研究室の見学をお願いしたところ、会ってくださると。僕がかつて農学部でミミズを研究していたのがよかったのかもしれません。先生の専門は棘皮動物、特にナマコですから。人生何が吉と出るかわからんもんです。 いろいろお話できて、たいへん楽しく、また勉強になりました。他の分野の方とお話すると、そのつながりからまた多様な発想が生まれてきます。生物多様性然りなんですね。 中でも印象深かったナマコネタを一つ紹介しましょう。 ナマコは水温が上がってくると仮眠に入る動物なのだそうです。仮眠に入って、活動を抑えるとのこと。バブルの頃でも足るを知って慎ましく暮らすような動物なのだそうです。吾唯足知を実践する悟りの権化のような生物(人間のみ足るを知らん気もするが)。 日本酒のアテに最高なのですが。悟りの権化を輪切りにして食っていたのか...。 ともあれ、先生のモットーは「清く、正しく、貧しく、美しく」。 大学の荒波に負けぬ、やわらかく、慎ましく、その中に逞しさをもったナマコ顔負けの素敵な先生でした。 そんな、本川研究室の紹介ページはこちらです↓。http://www.motokawa.bio.titech.ac.jp/index.html