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テーマ:小説かいてみませんか(122)
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私の時は、両親が死んだときに留まったのかもしれない。
特別に仲のいい家族ではなかった。 むしろもめていたかもしれない。家賃収入で生計を立てる我が家には、父に時間がありすぎた。 人間は、ネコのようにもてあました時間を毛づくろいに費やしたり、パトロールを強化したり、届かない獲物を狙ってみることでは満足できない。 ネコだって、それでは満足しない。だから次の行動の作戦を練りつつ眠る。ひたすら眠る。一匹で。 人間も眠る。でも欲張りな人間は、一人で眠らない。 父は欲張りだった。 何度か、見知らぬ女性が悪態をつきにやってきた。その時きまっては母は吐き棄てた。 「このドロボーネコ!」 ここのネコたちは、ユウさんの愛情を盗んでいく。気温が穏やかな日は、ユウさんも縁側に出て、日向ぼっこをする。どこから嗅ぎつけたのか、ハチがつるりとユウさんのそばで丸まる。うまいようにユウさんのリウマチの関節があったまるようだ。キジコはまだ縁側にあがれない。 私は両親に正しく愛されていたと思う。きちんと食えるだけの財産を残してくれたし、あとで因縁つけてくるような面倒もなかった。 でもなにかが抜けている感じがする。 これが愛情だ、と五感で感じる何かがするっと抜けている気がする。その抜け落ちた何かを探しているうちに、私はここから抜け出せなくなっていた。その糧のようなものがないと、ここから立ち上がって前に進んでいく手筈が整わない、という感じ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004.05.16 02:34:33
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