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テーマ:小説かいてみませんか(122)
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ユウさんの状態はよくない。やっぱり肺炎になりかけているようだ。週明けには入院かもしれない。
あの日、ユウさんはグレシマに何をみたんだろう。あの人が、っていってたな・・・仏壇のあの若く精悍なご主人を見たのかな。霧煙るような雨のなかのグレシマの幻影は、どんなにかすらりとした立ち姿にみえたのだろうか。 雨後あとの土庭は蒸し暑い、湿気が地面から青臭く立ち上ってくる。窓を閉めようとしたとき、庭に小さなネコの足跡をみた。誰かきたんだ。 上からゆっくりとしたヴァイオリンの音色が響いてきた。シチリアーノ。物悲しくも激しい曲。 元野さんの弾く音色はいつも、胸をぎゅうとつかまれるような切ない曲ばかり。いつも、ぼーっとしていて、悪がきっぽい人だけど、なんだか悲しみを込めている。 しばらく聞き入っていると、かすかに縁の下からニャアという声がした。 グレシマとハチだった。 お互いを必死に毛づくろいして、おでこを擦り付けあっている。目を閉じて、喉を鳴らし、気持ちよさそうに肉球を広げている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004.06.04 01:59:20
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