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2024.06.17
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https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/featured-topic/2024/06-1.html

三田評論ONLINEより転載


  • 太田 和博(おおた かずひろ)

    専修大学商学部教授・塾員

わが国のタクシー事業は1912(大正元)年8月に始まったとされ、本年で112年となる。一方、わが国で初めて乗用自動車が走ったのは1898年(明治31年)である。その当時、自家用利用は考えられないから、タクシー業が生まれる以前より有償輸送は行われていたわけだ。

需要も限られ、供給も少ない(1910年でも国内に自動車は100台余りしかなかった)場合、無償であろうが有償(ビジネス)であろうが、政府介入がない自由な活動となる。電車やバスのような乗合交通ではなく、個別交通であるタクシーは公共交通政策の対象にはならなかった。

学生に「タクシーは公共交通と思うか」と問うと、半数はそうではない、と答える。確かに、明治期、大正期はそうであった。公共交通は公衆に開かれている(open to the public)交通ということであり、具体的には「運賃を払う人は乗せなければならない」義務を負う。タクシーの乗車拒否が違法とされるのは、タクシーもこの公共運送人義務を負っているからである。

日本版ライドシェアが本年4月に始まった。タクシー業界からすると、ライドシェアは100年を超える歴史の中で真に黒船であろう。「日本版」であり、純粋なライドシェアとは異なる工夫がされている点は強調されよう。

ライドシェアは、個人が所有する自家用車で他者を運び対価を得ることである。安全性確保などの理由から、道路運送法では、ライドシェア、つまり自家用有償旅客運送は原則禁止されている。原則禁止ということは、例外的に認められ得るわけだし、従来からも過疎地域の足の確保のために道路運送法78条2号の規定によって「自家用有償旅客運送」として行われてきた。今般の日本版ライドシェアは同法78条3号の規定に基づき導入された。

日本版ライドシェアを行おうとする者は、同法79条によって国土交通省に登録しなければならない。タクシー会社のみが登録要件を満たしていると現在はみなされており、それゆえタクシー会社がライドシェアドライバーを管理する義務を負っている。

今後は、純粋なライドシェアを導入するべきか否かが議論の俎上に載せられる。純粋なライドシェアとは、Uberなどのマッチング会社が乗客と自家用乗用車ドライバーをマッチングさせ、ドライバーが運行の責任を持ち、乗客を運んで運賃を収受するシステムである。マッチング会社は、乗客もしくはドライバーから仲介手数料を収受するビジネスモデルである。

インターネット旅行代理店も同じ仲介業である。ホテルをネットで予約し、ホテル滞在中にトラブルがあっても旅行代理店に責任はない。ライドシェアのマッチング会社が運行責任を負わないのは当然のことなのだ。

このため、安全に関する懸念は払しょくされない。ライドシェアドライバーは隙間時間に自家用車を使って稼げる、という意味で働き方改革だ、との主張もある。換言すれば、疲れていても、稼ぎのために無理をする可能性があり、それを抑制する仕組みがない。

また、マッチング会社の力が強く、ドライバーの立場は弱い。仲介手数料が高く最低賃金を下回っても、自営業者であるドライバーは被雇用者としての保護は受けられない。

純粋なライドシェアの導入を主張する者は、新しいサービスの登場による既存サービスとの切磋琢磨が生産性を向上させるという。つまり、ライドシェアとタクシー業は共存できるというのである。しかし、人を運ぶという差別化が難しいサービスであるため、コストが安いライドシェアはタクシーを駆逐することになる。

タクシー会社は、車両の購入費も運転手の社会保険も運賃収入から賄わなければならない。一方、ライドシェアドライバーは、すでに所有しているクルマの購入費を運賃決定の際に考慮しない。タクシーから見れば、ライドシェア運賃はダンピングとなる。

純粋なライドシェアが解禁されれば、タクシー業は成り立たない。それでも運送業を担おうとする事業者は、タクシー業を止め、マッチング会社に移行するであろう。こうして、タクシーはなくなる。運賃は需要と供給で決まるため、閑散期には最低賃金を下回る所得しか得られないドライバーが続出し、多客期には現行のタクシー運賃の10倍以上の移動費用を利用者は負担しなければならなくなる。とはいえ、平均すると、ライドシェアの方が利用者の支払額は低下するであろう。

つまり、安全運行+安定供給+安定運賃(公共交通)か、多様な質+不安定供給+乱高下するが平均すると安い運賃(自由移動市場)か、の選択となる。この選択は、全国一律で行われるべきものではない。なぜなら、タクシーはローカル交通であり、それは各地域が決めるべき政策課題であるからだ。

タクシー規制か、純粋なライドシェアか、は、官か民かでもあるが、究極の公共である国か、個人かという極端な二分論である。地方でできないことのみ国が担うべきであるとする補完性の原則がわが国では定着していない。ライドシェアの議論が地域交通政策の分権化に資することを期待する。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。










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最終更新日  2024.06.17 22:27:02



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