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2006年01月31日
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カテゴリ:主に法律関連
 
 お久しぶりです。皆さん,いかがお過ごしでしょうか。
 また寒くなるようですが,くれぐれもご自愛のほどを。

 今日は法律関連のお話をします。


<なんでこうなるの?!~マスコミ法律用語を斬る!第3段~>

 ホリエモン事件で世にまたまた法律用語があふれました。その関係で間違った法律用語をまた指摘したいと思います。 

 マスコミによると,現在ホリエモンは,「拘置」されているそうですが,この「拘置」なる言葉はマスコミ独自の法律用語であって,正確な法律用語ではありません。
 通常,被疑者(※1)が逮捕されると,警察は48時間以内に書類や証拠物と共に被疑者の身柄を検察官に送らなければなりません(刑事訴訟法203条1項。以下「刑訴法」といいます。)。
 我が国の刑事訴訟法では,被告人について公訴を提起する(※2)権限は検察官のみに与えられています(刑訴法247条)。ですから,警察としては被疑者の身柄を証拠類と共に検察官に送り,検察官に公訴を提起するかどうか決めてもらわなければならないわけです。

 警察から身柄を受け取った検察官は,そこから24時間以内に公訴を提起するか,それとも公訴を提起するためにその被疑者について取調べをしたり,さらに証拠を収集する必要があるので,さらに10日間身柄を拘束したいと裁判所に求めるのでなければ,その逮捕されている被疑者を釈放しなければなりません(刑訴法205条1項)。
 この「さらに10日間身柄を拘束したいと裁判所に求める」行為のことを「勾留を請求する」といいます。
 この請求が裁判官によって正当であると認められると,その被疑者はさらに10日間,身柄を拘束されることになります。これが「勾留」です(なお,やむをえない事由があると,さらに10日間延長されます)。
 この勾留のことをマスコミは「拘置」といっているようですが,「拘置」という用語は法律には一切出てきません。

 「勾留」を「拘置」と呼ぶ理由はおそらく,社会の耳目を引いた事件の被疑者の場合,勾留中,たいてい拘置所に身柄を留め置かれることから「拘置」というのだと思われますが,先述のように「拘置」という用語は正しくなく,正確には「勾留」といいます。

 この点に限定していうと,アサヒとNHKは正確な報道をしているようです。
 上記二社は確認できる限り,「こう留」(勾留)といい,「拘置」とは言っていませんので。


 ※1 マスコミ用語では「容疑者」といわれますが,法律的には「被疑者」が正しいです。これも間違えたマスコミ用語の一種といえると思われます。
 ※2 検察官が,ある被疑者が被疑事実について有罪であると考えられるので,処罰してください,と裁判所に求める行為のこと。「起訴」とも言います。



<なんでこだわるんですか?~マスコミ法律用語を斬る!第4段~>

 ホリエモンらライブドア幹部が取調べを受けた際,その際の発言の一部がマスコミに漏れ伝わってきて,それについていろいろとコメントやら評論やらがなされることがありますが,それを聞いていると,どうも納得できないことがあります。
 それは何かというと,そのコメントや評論が「その被疑者が違法性を意識していたかどうか」ということに妙にこだわることです。

 「違法性の意識」とは,その行為が法律に反することを知っていたこと,もっと平たくいうと「悪いことをしているという意識」のことをいいます。この「違法性の意識」をめぐっては実に華々しい議論が刑法でされているのですが,それらのすべてをご紹介することは話の本筋から外れますし,またあまりにテクニカルになりすぎ,退屈であると思われるので,話を展開するのに必要な程度なだけ,ご紹介します。

 刑法学会におけるひとつの学説によれば,ある行為者に故意(犯罪を犯す意思のこと。こちらのほうがわかりやすいので,以下こちらのほうを用います。)があったというためには,その者が構成要件該当事実(※3)を認識しているだけでなく,さらに違法性の意識があることが必要であるとされています。
 つまり,行為者に犯罪を犯す意思があったというためには,ある行為が構成要件に該当しているということを認識しているだけでは足らないのであって,行為者がさらにその行為は「悪いことだ」と認識していた(「違法性の意識」)ことが必要だというわけです。
 しかし,判例・実務は一貫して行為者に犯罪を犯す意思があったというために,「違法性の意識」は不要であるとしています。
 その根拠はいろいろとあるのですが,判例を支持する学者は,通常,構成要件該当事実を認識していれば,それが「悪いことだ」と認識するのが普通なのだから,わざわざ「違法性の意識」を要求することはない,という説明をなしています。
 
 実際,この件についてコメントを求められた弁護士や,元実務家の先生方は皆,「違法性の意識はそれほど重要な事実ではない。量刑判断に影響を及ぼす一つの事情に過ぎない」と説明しておられるのですが,どうも「違法性の意識」にこだわるマスコミの体質は変化していないようです。


 ※3 ある行為が犯罪であるといえるために満たされなければならない条件のこと。たとえば,殺人罪でいうと「人を殺すこと」が構成要件該当事実とです。





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最終更新日  2006年01月31日 19時28分24秒
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