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2006年03月18日
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カテゴリ:主に法律関連

 今朝,テレビ朝日系列の某報道番組(?)を見ていたところ,コメンテーターの一人として招かれていた萩谷順氏が大変おかしな発言をされたので,指摘したいと思う。

 氏は,いわゆるライブドア事件の被告人が仮釈放された件が紹介された折,「法では在宅起訴が原則とされている。(それなのにいまさら釈放するとは)そういう意味では,日本の刑事司法はまだまだ前近代的である」(要旨)と評された。

 氏の主張にはおかしな点が2点ある。
 まず,そもそも「前近代的」とはいったい何のことなのか,何をもって「前近代的」というべきなのかが問題である。まずその定義が明らかにされねばなるまい。 仮にその点に目をつぶったとしても,さらに次のような指摘ができる。
 今ここで,たとえば英米等の国を「近代的」な刑事司法を採用する国家であるという前提で氏が話しておられると仮定する。
 では,その国々の採用する刑事司法は本当に「近代的」なものであろうか。
 たとえば,英国では一定の犯罪について,被疑者が通常なら有している黙秘する権利(いわゆる黙秘権)を否定している。
 さらにたとえば,米国では「司法取引」という制度が確立しており,それによれば当事者が各種の都合を考慮して,強盗殺人とすべき事件を単なる殺人として処理したり,共犯者の罪を証言する代わりに証言する者の犯した罪を見逃すということが公然と行われている。
 これらが本当に「近代的」と言うべきなのか,個人的な感じ方の差はあれ,これらの国と日本を比べた場合に明らかに米英が「近代的」であり,日本が「前近代的」と断定できる者はそう多くはないであろう。

 第二点。我が法が在宅起訴を前提にしているという点は明らかに誤りである。
 我が国の刑事訴訟法における起訴のあり方,それに伴う身柄のあり方については2つの種類が考えられる。
 ひとつは拘置所で身柄を勾留したまま被告人を起訴する種類。もうひとつは氏が「法が原則としている」と主張される在宅起訴,つまり被告人の身柄を勾留せずに起訴する種類である。
 ところで,この「勾留」に関して法は次のように規定している。


 刑事訴訟法60条
1 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
 1.被告人が定まつた住居を有しないとき。
 2.被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
 3.被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
2 勾留の期間は、公訴の提起があつた日から2箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、1箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第89条第1号、第3号、第4号又は第6号にあたる場合を除いては、更新は、1回に限るものとする。
3 30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律(大正15年法律第60号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和19年法律第4号)の罪以外の罪については、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第1項の規定を適用する。



 確かに被告人を勾留することができる場合,というのは上記の要件がそろった場合,という風に限定されている。
 ただ,これは単に勾留という処分が被告人の身柄を比較的長期にわたって拘束すること(2項参照)から,そういういわば酷な処分は,そういった処分をしてもやむをえないという要件がそろっている場合に限定することにより,被告人が勾留されることによって被る諸種の不利益が生ずるのを避けようという趣旨に基づくものであって,なにも「在宅起訴を原則とし,被告人を勾留するのは例外的処置とする」としたものではない。
 仮に法がそういったスタンスをとっているとするならば,表現の方法はたとえば,「被告人を勾留したまま起訴することはできない。ただし,以下の場合は例外とする」といったような形式をとっているはずである。
 しかし,法はそのような形式をとっていない。そればかりか,在宅起訴と被告人の身柄を拘束したままの起訴との関係について特段定めるということもしていない。
 要するに,法は氏の主張するような態度をとっていないということである。
 
 それにしても,視聴者が法にあまり明るくないことをいいことにいいかげんなことをいうとは・・・あまりに酷すぎるのではないだろうか。
 はっきりいって,萩谷氏にコメンテーターの資格はないと考える。



注:平成18年3月19日,萩谷氏の発言が訂正前の表現では意味がとおらなかったので訂正。あわせて表現の多少の修正を行いました。






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最終更新日  2007年03月25日 15時13分58秒
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