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灯台

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2024年10月09日
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会場で飲食販売やうちわを配布したり、
有料席のもぎりをし、それから声掛けをし、
時には車の整理をこなす花火大会のバイト。
短期間のバイトで、業務内容はどれも単純で、
特に経験やスキルは必要ない。

海の家とか、スキー場のバイトみたい―――だ。
享受する側がいればそれを提供する側がいる。
エラスムスやモンテーニュの金言集や『エセー』が有名だが、
そうした格言集はもともと自家製の取材活動の成果物だった。

 *

神の視点だ。
物語は進んでゆくうちに、
『あの遠い日の午後』も語られるように―――なる。

いつのまにか冷たくなったコーヒーを一口飲みながら、
結局のところ、僕は、靴箱の中に入っている、
スニーカーみたいなものなのではないのだろうか。

ねじれていたもの、屈折だったもの、霧がかっていたものが、
思い出したに違いない、と言う・・。

 *

世界で一番美しい瞬間、とか。
人生で一番輝いていた瞬間、とか。

ゆっくりと若返ってゆくように動き始めている、
咽喉の奥にいつまでも、
引っ掛った魚の骨のようにある。

 *

不意におびただしい疲労が崖崩れのような音を立てて、
胸の内を転がり落ちていく。
ウジウジして初恋を実らせられなかった人が、
電話をしている。

いつでも会えるから、いつでも声が聞ける。
コミュニケーションの問題が落丁になっている。
だけれど、物理的な距離も心理的な距離も、
死せる快楽の亡霊、おぞましいまでに儚いものを知らない。
その既視感や未視感を忘れてはいけない。
それが霊界のトンネル、三途の川、精神の最深層の秘密の鍵。
六道輪廻、解脱にまで繋がって―――いる。

まるで僕の周囲にはATフィールドがあるんじゃないかって、
そんなことを思っていた、
夜の洞窟の中からピサの斜塔の過去へ戻ってゆ―――く。

 *

意識が濡れた藁半紙のようになる風景、
真夜中の窓に濁ったまだらや線が、
行き止まりの袋小路へと辿り着いたような孤独を教えてくれる。
衒学のギアが上がるにつれ、テーマと論点がドリフトする。
その時間のかかるシークエンスを、瞬間に感じることができる。
善悪と美醜の混濁にきちんと呑まれて、
極上の、完璧な悪夢を堪能する。

「空気の読めない奴」「言っても無駄な人」
とレッテルを貼られてしまうとしても、何も心配はいらない、
何故ならあなたは「気付かない」のですから。
世界五分前仮説も、水槽の中の脳も。
球体と立方体の眺望に潜んで内在している四次元であるのかも知れない。
だから水は干上がったに違いなかったのだ。

  *

火の原料は主に酸化剤、可燃剤、色火剤。
花火は、煙火筒と呼ばれる筒に発射薬を入れて、
その上に花火玉をセットして打ち上げる。
水族館から死んだ魚を運び出していくような、
そういう厳粛さを感じるチャートギャラリー。
発射薬に点火すると花火玉が打ち上げられ、
導火線に火がつくと花火玉中央の割薬が爆発して花火が開く。
屠所に追われる生き物のように、豁然と―――。

  *

柔らかな螺旋を生みだす、
何処で見ても同じ空、同じ人、同じ考えという偏狭な視座が。

話ができる時間は限られているのに、
言いたいことは言えなくて沈黙が長引き、
ありふれた日常の会話に戻っていくシーン・・・・・・。

  *

花火玉には火薬に金属を混ぜて固めた、
「星」という花火の形をつくる球が入っており、
その金属の種類によって花火の色が変わる。
決まった色の光を放つことを「炎色反応」という。
星が二重に詰められていると二重の輪になり、
三重に詰められていると三重の輪の花火になる。

色とりどりの花火が夜空に開いて消えていく様子が迫力があり、
儚さを感じさせる。
人恋しさの正反対の状態にあって、
ただ、さみしくなりたくて、
違う曲がり角へと戻る。

 *

結ばれないから本当に好きな人になる。
届かないから、叶わないから、遠くを見るのを止めてしまう。
神様の落書き帳のようだった空は、
遅すぎず、早すぎない、心の方向を見定めるための装置だった。

北極星も。
月も。
七夕の夜も。

歯磨きのペーストが、
かたまったようなうさぎがいても、
僕はまたすぐに埃まみれの鳥。
あなたの心や、迷える魂を救えるのは、
他人ではなくあなた自身なのだと気付いた―――ろう・・。

隠すなよ、そしてもう口を噤んではいけない。
見知らぬ町の、見知らぬ人間になりたい。
何処かの何かと似てるコンクリート、塀、
家屋、芸がなくて、きっとお金もない、芸術もなくて音楽もない、
馬鹿ばっかりなんだ、屑なんだ、
ルサンチマンって言葉で魚は干上がった砂の上の状態になる、
公共事業による地元へのバラマキという利益誘導モデルが成り立ち、
それが行き詰まった先に、社会保障給付があった。
「このままじゃやっていけない」「死ねというのか」

僕は今まで一度も言ったことのないことを書こうと思うが、
男性の年寄りの食欲というのがあまりにも気持ち悪い。
本に埋もれて死にたい、とか。
静かな場所で死にたい、とか。
僕はその頑強な障害物の観すらある退屈と同義語のそれを、
そのような時、心の底から慕うことがある。
そんな気持ち悪い奴から初恋とか、
永遠の恋人なんて言葉が発された瞬間に引いてしまう。

カッコつけたくない、美しく着飾る必要はないと思いながら、
僕は長い時間をかけてその矛盾と真向いの席に座ることになる。

 *

胸を締め付けられながら、
明るく、幸せでありたい、前向きでいようという内部を、
夢見ているはずの人の心が、繊細な感受性のために、
一夜限りの美しい風景を求めている。
それは思うに、手負いの獣の傷を舐めるような衝動で、
人生における二度と見たくないと願う類の悪夢へと、
わざわざ赴くような心理。
地獄の極彩色の染料が生活の嘘を鋭利な刃物で切り裂く。

 *

いま君に逢いたい、
逢ってどうしても話したいことがある、伝えたいことがある、
あの頃の僕はもっと希望が溢れていると思った、
社会人になり仕事と家の往復になる、
時折胸が痛くなる、楽しかった日々や、懐かしい思い出に、
陽炎や逃げ水が見える、初々しくなまめいて見えるのは、
僕が何とも言い表しようのない、
不思議な感銘を受けているからだろう。

努力せよと言えば努力しなくていいと言う人がいる。
頑張れと言えば頑張らなくていい、鬱になると言う。
まるで蜃気楼が、生の喜びや、個性や、権利の自覚を連れて、
胸の奥へと射しこんでいくような気がする。
エンディングテーマが流れた、
心は透明になった、
男はその恋をセーブして次のデータへ移る、
遊星だ。その涙と一緒に突き上がってくる呼吸のさなかに、
君は馬鹿なことを考えるかも知れない。
既存の新たな組み合わせによる「発見」か「発明」になり、
そうの拡張先すらも読み取れる。
けれど女はデータ消去してはじめからリスタートする、
タイプライターだ。

僕は女性の書く恋愛小説をいつからか本当に読めなくなった、
否、男性の書くお伽噺に吐き気した。
月を見て僕は巨大な青い酔った焔のルナティックのインパクト。
気が付いたら、心の中にある無数のブロックで、
立ち止まって箱を開いているような刹那的なものなのかも知れない。
歳を取ると、本当に些細なことばかり考え、感傷の虜さ。
老いたくないものだね、それでも自分に対する向き合い方一つで、
その日一日が決まってしまう。
まだ骨の髄まで凍らせられない、心臓を凍らせられない、
君はたった一つの一番大事なものを取り逃がしたのだ。

 *

神の視点だ。
物語が終わりかけになった頃に、
『本当の自分』も語られるように―――なる。

ねじれていたもの、屈折だったもの、霧がかっていたものが、
思い出したに違いない、と言う・・。
何を? 嘘寒い光の中で、
僕は首を振って、本当は―――本当に、
残酷なことを言うのを少女のように躊躇いながら、
複雑な音階で鳴くガラパゴス諸島みたいな場所で、
中世の錬金術師みたいな言葉を煙にした。









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最終更新日  2024年10月09日 23時37分00秒



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