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2024年10月14日
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プロレスの話


どんなスポーツにもルールがありそれに逆らったプレーは「反則」となる。
「反則」は、基本的には犯してはならない事柄であり、
反則を犯したものには一定のペナルティが与えられる。
ところで、その「認められている反則行為」という、
言葉だけ見れば完全に矛盾した表現が、プロレスリングには存在する。
それを総称して「反則技」と呼ぶ。
ちなみにこれはプロレスのルールの二重構造による。

たとえばそれはザ・デストロイヤーの『四の字固め』と、
ジョニー・パワーズの『八の字固め』について首を傾げるようなものだろう。
見た目殆ど変わらないので、アイススケートの技で混乱するのに似ている。
でもきっと何か違うのだろう、きっと・・・・・・。

さて、全日本プロレスの公式ルールの第五条の主な反則行為を見てみよう。
(ちなみに新日本プロレスなどを見てもおおむね同じである、)
基本的なことだ。拳で殴打してはいけない、
頭髪・コスチューム等を掴んだり引っ張ったりしてはいけない、
(と言いながら頭髪を掴む技はある、フェイスバスター。
アドニスのブルドッキングヘッドロック。
あと、タイツに手をかけることは、ブレーンバスターで普通に行われている、)
爪先で蹴ってはいけない。噛みつくな、引っ掻くな、
肘や膝などによる鋭角的な攻撃、金的への攻撃、
手足の指関節への攻撃は、三本以上でなくてはならない、
(ちなみにプロレスで指を折るというのはプロレスの性質上有り得ない、
ただ受け身を取り損なって折れたりすることはあるかも知れない、)
咽喉を締めるな。ロープエスケープしている相手への攻撃、
タッグマッチにおいて試合権利のない選手が攻撃を加える行為。
目・鼻・口・耳への攻撃、凶器攻撃、
覆面レスラーの覆面を剥がしたり、引っ張る行為、
そしてレフェリーへの暴行だ。

ちなみにレフェリーの暴行と言えば小人プロレスが有名だ。
レフェリーに殴りかかるが、レフェリーが大きいのですぐ収拾がついたらしい。
ただ、リングやTVから消えつつあるのは差別的な要素があるからだといい、
コンプライアンスとして許容できない、
あるいは自主規制的な意味合いが強いのかも知れない。
疑わしきは罰せよ、というわけはないのだろうが。
ただ、笑わせる要素が強かったこととは別に、彼等自体が、
観客を笑わせようとしていた向きもある。
そういえば愛犬がカンガルーに水中でヘッドロックをかまされ、
飼い主が飛び込んでガチバトルしたというのがあった。
また女子プロレスとは違う、オバちゃんたちによるプロレス、
略して「おばプロ」。揺れる揺れる、
中身が見えるフリフリのスカートを履いた、
ボリビアのオバちゃんが、リングの上を駆けまわっていたりする。
首都ラパス郊外のエル・アルトという場所だ。

さて続けよう、新日本プロレスのルールには、
「故意に相手競技者を場外フェンスにぶつけてはならない」とある。
当時はオーバー・ザ・フェンスという反則もあった
タイガー・ジェット・シンが暴れ回っていた時代である。
また、プロレスには明文化されていないルールもある。
いわゆる暗黙の了解で、
「他の選手の得意技を使わないこと」だ。
ともあれ、試合の勝敗決定要因として以下の項目が挙げられている。
「ピンフォール」「ギブアップ」「KO」「レフェリーストップ」
「リングアウト」「TKO」「試合放棄」「ドクターストップ」「反則」
と列記されている。
反則攻撃を行えば負けなのだ。
じゃあ誰もやらないだろうとプロレスを知らない人は思うし、
これから僕が書くことに対して、
ちょっと何言っているかわからないと思うかも知れないが
あまりにも有名なプロレスのルールで、
反則行為は五カウント以内はOKという規定がされている。
いわばアンコール・ワットで警察手帳を買うようなもの。
これにより「反則行為」は「反則技」へと昇華する。
五カウントならぬ五秒以内に殺ってやりますよ、瞬殺っすよ、まじでね。

いやいやそうじゃない、
そこにも、「あまりにも悪質な反則行為」
という非常に文学的な芳ばしい表現がある。
「生命に関わる行為」「選手生命に関わる行為」
「翌日の試合に影響を及ぼす行為」と解釈するのが妥当だろう。
そしてこういう行為は反則負けの要因になる。
つまりレフェリーが声高らかに反則負けを宣言する
しかしそれゆえに、それ未満の行為(攻撃)は、「反則技」の範疇となる。
ところでちょっと余計なことを書くが、反則技もそうだが、
プロレスというのは練習中でも、また試合中であれ、死亡事故が起こりうる。
実際に、何件も起こっている。
こういうのをリング禍という言い方をするのだが、
ボクシングでも毎年十五人前後は亡くなっていると見られる。
相撲でも二〇二一年に死亡事故が起きた。
そういう中で反則技をするのは本当にどうなのかという向きも、
それはやっぱりあるだろ―――う。

さて、多くのところ、この反則技は審判が見えないところでやるもの、
(つまり、レフェリーが見えていなければ五秒以上やっても構わない、)
観客の間で議論を呼ぶことがあるわけだが、
そこにプロレスの興行的な部分、いわゆるエンターテインメントの一環として、
「反則技」もショーの一部として取り入れられていることがわかる。
またブックという台本の存在もありやらせだと思う人もいるわけだが、
プロレスラーが命を賭けてやっているのは間違いないし、
「極限環境において人間の本性が剥き出し」になるものだし、
それでもやっぱり「人間は動物なんだ」という理解が必要だ。

アメリカのプロレス団体であるWWEの公式YouTubeチャンネルは、
全世界で二番目に多くの視聴回数を誇っている超人気チャンネルだ。
WWEのムービーを視聴する多くのユーザーはパイルドライバーや、
ボディスラムといった大技を見ているのではなく、
最も視聴回数の多いWWEムービーは、正式な試合ではなく、
ハプニング的に戦いが始まった乱闘のムービーらしい。

完璧な反則技といえば、アラビアの怪人ザ・シークの、
「火炎大放射」は見逃してはいけない、口を火を噴いて大火傷だ。
消防車を呼びたいところだ。
バケツパフォーマンスで知られる、「佐倉輝美のバケツぶん殴り」は、
女子プロレス創世記の一齣である。
女を売りにするような選手は半殺しにしていたというから素敵だ。
反則王グレート東郷を忘れてはいけない。
卑劣かつ姑息な反則技、薄ら笑いと慇懃なお辞儀、
和風コスチューム(法被や浴衣、下駄)、膝下までの田吾作タイツ、
塩をまく「儀式」などのギミックは、アメリカにおける、
ヒールの日系および日本人レスラーの雛形だ。

ちなみに凶器攻撃といえば、メリケンサックとか、針金とか、
いわゆる机とか椅子とかが主だろうが、使われた意外なものには、
「新聞記者のカメラ」「放送席のマイク」
「ボールペン、鉛筆、万年筆」
「栓抜き」「観客の持っている蝙蝠傘」
「会場に落ちているビー玉」「会場を掃除する箒」
「タイツの紐」「試合前にもらった花束」「紙やすり」
「ビールの栓」「観客の靴や下駄」「観客のレインコート」
「杖」などがある。
個人的にプロレスの漫画なんかでもいいから、
「小型冷蔵庫で殴る」とか、
「エアコンで殴る」とか、わけのわからないシーンを見てみたい気がする。
(絵画のキャンバスで殴るとか、ギターで殴るとかも捨てがたい、
なお、僕はピアッシング・バイブルという本の事情から、
刺すとか刺されるのは御免被りたい、)

クラッシャー・リソワスキーはロープに相手の首を挟んで絞め、
アントニオ猪木にビール壜の入ったバケツを叩きつけた。
この人は反則技よりもビックマウスの方が面白くて、
ビールの生産地で知られるミルウォーキー出身の、
ポーランド系アメリカ人なのだけど、
「ビア樽をかついでミシガン湖沿いをランニングした」などと豪語し、
後年のザ・ロックのように、猥褻なスラングや造語を盛り込んで、
対戦相手をこきおろすトラッシュ・トークの名手だった。
毎日四キロの牛肉を平らげると豪語したし、
また得意技の一つはいまや遠い昔に忘れ去られたメリケンサック攻撃。










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最終更新日  2024年10月14日 13時10分04秒



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