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灯台

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2024年10月21日
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水妖


体温が下がるのが聞こえるほど静かな、雨。
(無形、有形、単純、複雑・・・)
ディレイやフェイザーエフェク――ト・・。
過去と現在をカットバックしてゆく・・。
着地点が見えるようで見えない、二面性のゲーム・・。

「水女ですか?」
「そう、水女」
「パッと見はわからない、
でも水の撥ねる音がして振り返ると、
人の形をした水がそこに残っている」
「どうなるんだ」
「かろうじて保っていられる時間は短い、
そこには固定点がない」
「崩れる?」
「あるいは、戻る」

まるで何から何までを意識しなければならないような、
動悸が痛い冴えかえる意識。
研ぎ澄まされた針のような視線で見つめた。
水の中に記憶が絡まっていて、
見えない蛇が様々な場面を隠している、と。

この雨は虚像だ。
半ば体を為した思念が、
水の中の秘められたネットワークを構成するかのように泳ぐ。

(水は眠り行く間の、陥穽なん―――だ・・)
(光の縞模様の頻繁に擦れ違いながら、
水はまだ本当の姿を見せていな―――い・・)

『水が透明に見える理由』は、
電磁スペクトルの範囲が、
水の透明度のスペクトルに比例するから。

等方位性へと、ゼロへと移行する。
まるでやさしい発達障害のように。
ラグタイム、ストライド、ブギウギ、
スイング、ビバップ、ハードバップ、モード・・
時々通る魚達がざわめく。
その都度、吹き出す銀の泡。

雨月物語、水滸伝・・・。
精霊の融けこんだ井戸、命の水、
不老不死の一種。
今昔物語集では「我は水の精ぞ」と言って、
盥の水の中へ落ち入る。翁は水となって溶け、
盥の水かさは増して、ふちからこぼれる。
ローマ帝国期の風刺作家ルキアノスの、
『本当の話』では、女主人は水と化し、
試しに剣を水の中に突き刺してみると、
水は血に変わ―――る。
そんなものが押し合いへし合いをしながら、
頭の中の無垢なるメッセージ・・
メッセージは――さらに輪をかけた奇行・・。
思う以上に分析的だって気がするんだ、
肩に力をいれ、常に何かに目的や、欲求、
さらにはハードルを置いている気がするんだ・・。
ウウウン、、、、ウウウウウウウン、、
、、、ドッドッドッ、、、、、

「水が燃料になる日は必ずくる。
電気分解すれば、水は簡単に石炭になる。」
―――何処かの小説。

重油とペンキ、魚の内臓、白昼夢に、
フラッシュバック、一気にブチ破る毛穴の汗、
原始生物が自由自在に体形を変えられ―――るように
幼稚で、惑溺しやすい、俄かに、否応なしに、
雨との闘い。

昨日からのさまざまの肉体の映像が、
それに反射した。
織物をさかさまに織るようにも見えた。
多くの記憶を幽閉したのはこの塔である、
等身大の、蜃気楼というほかない、肉体の塔。
あるいは―――水の塔。
一人の少女が静かに歩いている。
小さな鏡で、跳ねる魚の彫刻・・。
切り花の薔薇のように一見無責任に、移り気に歩いている。
でも、僕はこの少女がどういうものか知っている。

「更に水がこぼれてしまう――。」
(皿に―――・・・)
球体構造の機械内部に油が流れている。
徐々に完成され精密機械は機能し始める。
個人的に早送りしたくなる。
バスのバックミラー。
水銀灯をすりぬけていったタンクローリー・・。
古いロードマップに・・。
階段の所にある雨ざらしの、ポスターに、
まだ想い出を捨てきれないでいる、古い歩道橋。
高速で、ただ次の嘘を見る。
ただの光化学スモッグ。黄砂。
おまけつきの花粉。
人の息でむれまくる街に、
モイスチャーな水女。
“すぐまた”
“ここ”だ・・。

それはゆっくりと消えてゆく、
エモーショナルでミステリアスに、
痛いほどの香りが鼻孔を満たしてゆく、
―――ようやく仕留めた巨鯨より、
嘘っぱちな、出鱈目な、
bubbleだ。









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最終更新日  2024年10月21日 21時59分21秒



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