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カテゴリ:復活 小説MOUTH
カタンッ。郵便受けに新聞の落ちる音で僕は目を覚ます。
と言っても当時の僕は新聞なんかとる余裕も読む時間もないので、隣りの住人の郵便受けに届く新聞の音だ。(あぁ今日は何時間眠れたんだろう・・・) 眠い目をこすりビデオデッキに表示されたデジタル時計に目を移す。 『AM4:12』 二時間か・・・。昨日は25時に徹収し、タクシーで自宅に着いたのが25時40分。シャワーも浴びずベットに横たわり携帯電話のアラームを04:30にセットしそのまま寝てしまった。 遅刻など出来ない。そんな恐怖からか、いつもアラームの鳴る数分前には不思議と目が覚めてしまう。 無名の俳優達が絶対にやってはならないのが遅刻だ。そのくせ大物俳優のシーンを早朝から撮る訳にもいかないので、僕等のような若い俳優のそれも売れてない僕等のシーンから撮影は始まる。 朝起きる度に(早く売れたいなぁ)などと思っていた。が不思議なのはスタッフだ。彼等はいつ寝てるんだろう。俳優達をタクシーに乗せ、先に帰らせてから片付けをする。そして翌朝には僕等をロケバスにて待ち構えているのだ。よぼよぼになった有名な監督でもそれは同じなのである。本当に頭の下がる思いだ。 シャワーを浴び短めの髪の毛を洗っている最中で携帯が鳴り響く・・・。寝る前にかけたアラームだ。 シャワーの音も、アラームの大音量も僕が隣りの部屋から早朝に聞こえてきたら頭にくる。迷惑な野郎だ、と。 僕は急いで濡れた体のまま、止め忘れた携帯を取りに行く。何度この行為を繰り返しただろう、いつか穴があくなと思いつつフローリングの床は水浸しになってしまった。 濡れた手をタオルで数回拭き、携帯を手にした僕は驚いた。 ビデオデッキのデジタルは 『AM4:25』 携帯の大音量は、止め忘れたアラームではなく、「着信 非通知設定」の文字と共に鳴っていたのだ・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Sep 6, 2005 05:27:02 PM
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