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いつか雪が溶ければ

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2007年05月19日
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カテゴリ:カテゴリ未分類
20代の頃、私には決まった職がなく、アルバイトで生活していた。

今で言うフリーターである。

私は、3畳一間の風呂もトイレもないボロアパートに一人で住んで

いた。それでも住むところがあるだけましだった。

だが、2週間ほど前にバイト先で怪我をし、働くことができなく

なってしまった。バイトはくびになり、貯金もない。ここ三日間は

水しか飲んでいなかった。

そんなある日のこと、深夜、寝ているとガサガサとかチャリンと

いう音がする。

枕元のスタンドを点けてみて驚いた。何と目の前にお金がいるでは

ないか。

「あ、起こしてしまいましたか、申し訳ありません」

一番手前にいる一万円札がそう言った。見るとお金たちは、みな

きちんと座ってじっとこちらを見ている。私は夢だろうと思い、

自分の頬を叩いてみたが、夢ではなかった。それにしてもお金が口

をきくとは知らなかった。

「少しお話しさせてもらってもいいですか」

また、一万円札がしゃべった。私も少し落ち着き、部屋全体を見回す

心の余裕が出来た。よくみると、日本円だけでなく、いろいろな国の

お金がいるようだ。

「別にかまわないけど、一体何の用だい」

「私たちに用がない人はいないと思いますがね」

「ああ、もちろんお金にはいつだって用がある。何しろ、僕は見ての

通りの貧乏人だからね」

「それはようくわかってます」

一万円札がそう言うと、お金たちは皆くすっと笑った。

「お金に笑われるくらいだからいつまでたっても貧乏なんだよな」

私はつい自嘲気味に言った。

「これは大変失礼いたしました。今日来たのは他でもありません。

実は我々は皆あなたのものになりたいと思っているのです」

「僕のものだって?」

「はい、そうです。世界中のすべての仲間が皆あなたのものになり

たがっているのです」

「世界中のお金がだって」

「そうですとも」

一万円札はぐっと身を乗り出すようにして言った。女性からは

常々言い寄られたいと思っていたが、まさか、お金から言い寄ら

れるとは思っていなかった。

「何だかピンとこないなあ。お金は欲しくてしょうがないけど、

世界中のお金が自分のものになるなんてありえないよ」

「でも我々はそれを願っています。な、そうだろう、みんな」

一万円札がそう言って後ろを振り返るとお金たちは皆口々に、

「そうだそうだ」

とか、

「Yeah!」

とか、

「Oui!」

などと様々な言語で賛意を示した。なるほど、たしかに世界中の

お金がいるようだ。

「なるほど、すると僕は世界一のお金持ちということだな」

私は思わず自分が大富豪になった姿を想像した。

「その通りです。それどころか、あなた以外は皆一文無しなのです」

「僕以外は一文なしだって?」

「そうです。何しろ、『世界中の』お金があなたのものなのです」

「ふ~む」

自分以外皆一文無しという状態は想像できなかった。

「すると他の人たちは一体どうなるんだい」

「当然皆貧乏になります」

「どこかの国の王様もかい」

「そうです」

「何だかイメージがわかないなあ」

「早い話あなたが世界中のお金の所有者というわけです」

「ふーん」

何だかキツネにつままれたような気分だったが、世界一の大金持ち

になるのは悪くない。

「わかった。僕のものになってもらうよ」

私はそう答えた。

「いやあ、よかった、よかった」

お金たちは心から安堵した様子だった。

「では、これからはあなたが私たちすべてのお金の持ち主です。

早速ですが、これからはどちらに行ったらよろしいですか」

「どちらにと言われても、部屋はこんなに狭いしなあ、とりあえず、

今まで通りのところにいてよ」

「今まで通りといいますと」

「今までいた場所にいればいいさ、必要なときは呼ぶからさ」

「そうですか」

お金たちは少し不満そうだった。

「わかりました。では、一度皆戻ります。ご用の折はいつでも

および立てくださいませ」

「了解」

お金たちは皆帰って行った。私は世界一のお金持ち、というよりも、

世界中のお金の所有者になったのだった。

ところで、後で重大なことに気づいた。

必要なときにお金たちを呼ぶ方法を聞いていなかったのだった。

そんなわけで、世界中のお金は私のものなのに、私の生活は未だに

貧しいままである。

(終わり)





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最終更新日  2007年05月19日 13時36分25秒
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