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温羅邪満日記

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2010年01月03日
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テーマ:野良猫と私(24)
カテゴリ:
その猫は2006年の7月に現れた。
はじめは嫌っていたのだが、いつのまにか、すっかり居ついてまるで我が家の猫のようになった。
我が家の庭には毎日雀たちのためにパン屑を撒いている。だから猫が来ると鳥たちが困る。
猫はそのパンを食べに来た。
でも、猫がパン屑を食べてる光景はどう見ても気持ちいいものではない。
猫はときどき、上を見て鳥が飛ぶ姿を見ていた。まるで、空を飛べる鳥を羨ましがるように!
そんな猫が可哀想になった。

何日かパン屑を食べに現れていた猫に、ある日ちょっと食べ物の残り物をやった。
嬉しそうにガツガツ食べた。
この猫はいったいどこから来たのか。野良なのだろうか。そのわりには、痩せこけているということはない。
今までどこでどうしていたのか。
翌日も残飯をやった

数日そんな日が続いたが、これではどうしても鳥たちが逃げてしまう。
ここで思い切らねばと思って、もう残飯はやらないことにした。
すると、郵便受けに行くたびに、朝から足元にやってきて必死で訴える。
その必死な姿を見ていると、ついに見かねて、また残飯をやることにした。

しかし鳥も食にありつかないと、具合が悪い。何とかしなければと思って、家の裏に餌を置いてそちらに猫を導くことにした。
まず裏に餌を置く。それからホースで水をかけながら猫を追いやる。
猫はびっくりして何でそんなことをされるんだという顔をして、驚いている。
でもなんとか裏に追いやったら、餌を見つけてしっかり食べ始めた。

それからずっと餌を裏でやることにした。猫もだんだん分かっていった。
しかし、皮肉なことにこれがうまくいったことですっかりこの猫は我が家の庭に居ついてしまった。
昼間には居間のすぐ外においてある縁台に座り込んだりもして、知らない人が見ると我が家の猫かと思いかねないことになった。

それでもこの猫はあまり悪さはせず、庭に来る鳥を襲うようなことはなかった。
我が家の庭でのんびり昼寝をよくしていた。
そんな日々でも、よそからほかの猫がうちの庭に入り込んできて、縄張り争いをすることがよくあった。
そんな時、相手の猫を見ると首輪をしていたりするので、腹が立って相手の猫に向かって水をぶっかけたりもした。

また、私が外から帰ってくるとガレージのところで待ち構えていたりした。
そんな時は、家に入ると荷物を置き次第、キャットフードを与えた。
また夕方になると居間の前にやってきて、こっちを向いてアピールするので、そんなときはすぐさま裏に餌を置いて、ガラス越しに裏に行くように合図をした。

裏で餌をやるのはいいが、ここは日が当たらないところなので、冬になると寒い。
そこで、この猫用の小屋を作ることにした。
ダンボール箱を工夫して、入り口を作り、回りを木の枝で囲んでしっかりしたものにすることにした。
ただこれではまだまだ寒いので、ダンボール箱の回りを古い布団で覆うことにした。
これをうまく使ってくれるか心配していたが、やはり冬になって寒かったのだろう。この中によく入るようになった。
あるとてもよく冷えた夜が明けた朝のこと、小屋を見に行ったら中から出てきたのだが、その表情がとても辛そうに見えた。
これではいけないと、その晩から余っている電器コタツを布で包んで入れてやることにした。
箱に穴を開けてコードをそこから出したり、一応屋根のある場所だけど雨で漏電を起こすと危ないので、ダンボールにビニールを貼った。
最初はコタツは夜だけ入れていたのだが、だんだん寒い日が続くうちに、一日中入れるようになった。

そんなこんなですっかりうちの庭に居ついてしまったのだが、しばらくして前々からこの辺りでうろうろしていた小柄な白い猫と一緒にいるのを、よく目にするようになった。
この猫は以前からちょこちょこ姿を見せたり、他の猫とうちの庭にいたりするところを見たことがある。
どうやらこの猫は雌らしい。こんなのと一緒に居られては子ができるのではと心配だ。
餌をやると、なんとこの雌猫に先に食わせて、雄猫のほうは側で見ている。
これでは具合が悪いので、頃合を見計らって、別途キャットフードを持っていく羽目になった。
最初はこっちもためらっていたが、これなら最初から2匹分持っていったほうが気が利いてると思い、毎回まずは残飯をやり様子を見てキャットフードを後から追加することにした。

この白猫との一緒の暮らしが始まってから、我が家の庭ではしばしば猫同士の睨み合いが起こった。どうやら雌猫をめぐって、縄張り争いが激化したらしい。
それでもこの白猫は、ここから離れることはなく、2匹で仲良く庭で寝ている光景が見かけられた。
それはいいのだが、何しろこの白猫はゴンタで、雀を襲ったり蝶を追いかけたりと悪さばかりをする。
車のタイヤでガリガリと爪とぎなどするのでたまったものではない。
雌猫だけにほとんど一日中、我が家の庭に居る。表に居なければ裏に居るといった調子だ。
その点、雄のほうはどこに行ったのか昼間見かけないこともしばしばだ。

1年も経つとだんだん猫も図々しくなってくるのか、鳥用の食パンはもう食べなくなった。
庭にパンを撒くと跳んで行って、匂いだけ嗅いで食べない。
ところがある日、鳥用のパンにマーガリン入りのほし葡萄パンを撒いたところ、こちらはしっかり食べたのでその後は猫専用にこの菓子パンを買うことになった。
毎朝、猫のためにこのパンをちぎって庭に巻くのが日課となった。

ある朝、ガラス戸際にやってきた猫の首を見ると大きく裂けて赤く血が見えているのが分かった。
どうやら、猫との争いで傷ついたようだ。
こんな傷をつけるような争いをしていると、ウイルス性の病気が感染する恐れがある。
これだから、放し飼いの猫は困る。野良となると尚更だ。
ちょっと傷を治してやりたいとも思うが、ほっておく以外に仕方がない。
こんなことでは、長生きできないのではと心配になる。
雌と一緒に居るからよけいこんなことになるのだとも思うし、そうは言え雌と居られることも幸せなことだとも言えるしで、なんともいたし方のないことだ。

とにかくすっかりこの2匹の猫は我が家の庭に居つくことになってしまったので、それなりに名前を付けてやろうと思い、最初来た当初のことを考え、「ズーちゃん」ということにした。
餌が欲しいときははっきりと意思表示をするので、その姿は可愛らしくもあるので、この名前にした。
また、雌猫は「ホワイト」にした。当然色からだが、かってうちには、「しろ」という名前の雌猫が居たので今回は英語だ。


去年の10月のこと、ズーちゃんが何日間か姿を見せなかった。
晩にも食事を摂りに帰ってこない。
数日帰ってこないことはよくあったので、それほど気にもしていなかったのだが、10月16日の金曜日の夕方、ふと見るとズーちゃんが家の前のウッドデッキにじっとしているのに気が付いた。
ここはズーちゃんホワイトがよく並んで日向ぼっこをしていた場所だ。
私はさっそくズーちゃんの好きな菓子パンを庭に撒いた。
実はちょっと前、この菓子パンをきらせていてズーちゃんに、与えていなかった。
ズーちゃんは、さっそく食べに行ったが、匂いを嗅いだだけで食べない。
それで数日間居なかったのだから、腹が空いているだろうと、裏にさっそくキャットフードを置くことにした。
ズーちゃんはすぐに裏にまわってきたが、なぜかちょっと口をつけただけでほとんど食べない。
その上、お腹の辺りがすっかり引っ込んで随分痩せている。
わずか数日のこととは思えない。どうしたのだろうとびっくりした。
これは病気だと思った。

翌日はなぜかまた姿を見なかった。いい天気だったのでどこかへ行ったのだろうか。心配だがどうしようもない。

日曜日の晩、帰宅するとズーちゃんが姿を現した。
さっそくキャットフードをやるが、また前と同じ反応でちょっと口をつけるだけでほとんど食べない。
その晩、裏に出るとズーちゃんがいたので、餌を与えるとほとんど食べずにじっと私の足元に居て離れない。ずいぶん弱っているように思える。
それで家に入ると、毎年冬になるとここ3年間使っていた小屋用のダンボール箱が弱っていたので、補強用にと思ってとっていたダンボール箱を持ち出し、また一部に切込みを入れてドアーを作り、急遽猫小屋を作って置いた。
まだそれほど寒いという季節ではないが、そろそろ夜は冷え込んできている。
その後、ホワイト用にと思って、小屋の前に餌を別途置いたら、その音を聞いてズーちゃんが出てきた。
でもまた、口を持っていくが食べない。餌を置く音に反応して条件反射で出てくるようだ。

翌日、ズーちゃんは、この小屋をうまいことに使ってくれたので、さっそく補強することにした。
まず入り口にカーテンを付ける。何しろ隙があると風がドアー部分から入り込む。
ダンボールのドアーの外側に布を張った。
また、まわりに毎年使っていた布団をかける。それから雨が降っても大丈夫なように下にレンガを置いて地面から上げる。
そうして、食事をカーテンの内側に入れ、他の猫が寄ってこないようにした。

また午後からは毎年使っているコタツを毛布にくるんで入れた。
中に入れようとダンボールを開けると中から、ズーちゃんが出てきたが、じっとしている。
どこにも行く元気もないようだ。私の作業が終わると待っていたように箱の中に入っていった。
箱の後ろ側も布で覆って、どこからも隙間風の入らないようにした。
これで寒さ対策だけは万全だと思った。
その夜も、カーテンの中に餌を持っていった。
翌朝、また餌を持っていったが、残念なことに昨晩の餌はほとんど食べていなかった。
とにかくまた、新しい餌を置いた。

その日、スーパーでレトルトタイプのキャットフードを買ってきた。
その晩からこのタイプのキャットフードを与えた。
しかし、これらはほとんど食べられることはなく、朝晩捨てて新しいのと入れ替えた。

またホームセンターに行って、透明ビニールを買って布団を覆い、雨対策をした。
しかしこれだけやっても、ズーちゃんは、一向に食事を摂らない。
帰ってきて1週間たった10月23日の夕方、洗濯物を取り入れようと思い、ウッドデッキの上に出るとなんと隅っこにズーちゃんが、じっとしゃがみこんでいる。
どうしてこんなところにいるのか。動けるように元気になったのだろうか。
とにかくそっとして置いてやった。

その晩、小屋に餌をやりに行きカーテンを開けると中に、ズーちゃんはいなかった。
それ以後、再びズーちゃんを見ることはなかった。
小屋にも庭にも。
しばらくは、もしやと思って待ったが帰ってこなかった。
思えば、ウッドデッキでうずくまっている姿がズーちゃんを見た最後だった。

こちらもご覧ください

ズーちゃんの思い出

ズーちゃん物語





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Last updated  2022年12月15日 14時21分50秒
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