初秋のハンプティン・ダンプティン
「あのね、おとーちゃん」彼岸の中日、お墓参りでもいかんなあかんなぁなどと夫婦で喋っていたら、不意に嫁さんが切り出した。「昨日の帰りやねんけど、新今宮の駅にな、ほら、あれ、なんて言ったっけ、タマゴに手足が生えて服着てる・・・」何?唐突に!タマゴに手足?って、とまあ少々構えはしたけれど、そこは彼女とも二十年以上のつきあいなので、少ない情報を頭の中で噛み砕き、話の流れを予想したうえで、優秀な僕は的確な答えを導き出し彼女に差し出した。「それってもしかして、マザーグースの、何て言ったっけ?そうそうハンプティンダンプティン」すると嫁さんは満足と言う感じの顔で「そうその、タマゴのやつにな、驚くほど似てるおばちゃんがおってん!丸い体に細い足で、まさにそのダンプティンそのもの、びっくりしたでほんとに、二度見してしもた!」と、一気にまくしたてた。夏の終わり、みなさまお疲れになってはいませんか?疲労が蓄積し、視力、思考回路に異常をきたしてはいませんか?ありもしないものが見えたりしたら、少し休養をとってください。そして僕は優しく嫁さんをたしなめ、頭をヨシヨシと撫ぜたのだった。