ホラー、近未来、童話、独り言

2007/11/17(土)20:05

眼鏡 (上)

本当だったら怖い(4)

 昔路上で中身が透けて見えるレンズと言う怪しげな物を売っている小父さんが居たのをご存 知ですか、小父さんは卵にレンズをあて「ほらヒヨコが見えるだろ。」学校帰りの子供達を集め 一個十円ぐらいで売っていたのです、当然私も親にねだったのですが結局買っては貰えず其の 仕組みは今もって分からず仕舞いで終わりましたが今売っていたら騙されていると分かっていながら 迷わず買うでしょう。  こんな話を思い出したのは今目の前で「残りは一組だよ。」路上で叫んでいる中年の男の前に 眼鏡が三つ並んでいるからだ、私は路上に屈み「眼鏡なんて度数が合わなければ意味が無い じゃないか。」男をからかうと売っている男は真剣な顔で「此の眼鏡は度数なんか関係ないんだ。」 良く見ると眼鏡の前に其々特徴が書いてある「未来」「過去」「心中」吹き出しそうになるのを 我慢し「まさか此の眼鏡で過去や未来が見えるって言うんじゃないだろうな、それにしても 「しんじゅう」ってなんだい「しんじゅう」じゃない「心中、つまり心の中が見えるんだ。」 「それじゃ此の三点の眼鏡を買えば怖い物無しだな、嫌な未来なら避けられるし上司や商談の 相手の心も読めるから出世間違いなしだ、試しても良いか。」眼鏡を手に取ろうとすると男は 「嫌一度掛けると眼鏡は掛けた人を主人と認識し売り物にならなくなってしまうから駄目だ。」 尤もらしい事を言う値札を見ると其れ程高額な物でもない、幼い頃の記憶が蘇えり後で後悔するより 騙されても良いから買ってやろうと決めた、三点纏めて買うと男は注意書きを書いた紙と眼鏡を 無造作に新聞紙に包んで寄こす「そんな包み方でレンズは大丈夫なのか?」買った以上自分の 物であるから少しムっとして問うと「そんなに柔じゃない。」ニタリと笑い新聞に包んだ眼鏡を 男に渡す。  新聞に包んだ物を手に持ったまま歩くのは如何にもみっともない、何時も持ち歩いているバックに 入れようにも三本も一緒に包まれた眼鏡は入らない、包みを解き新聞を小さく切り取って一本づつ 包み直すと何とか二本は入ったものの残りの一本が如何しても入らない、胸ポケットにでも入れようかと 考えたが帰宅ラッシュで割れてしまうかも知れない、考えた末残りの一本は自分が掛けて帰る 事にしたが掛けた途端すれ違う人々の表情が一変した。  男に向って歩いて来た女は血の滴る包丁を手にし泣いている、並んで歩いていた男性は何ヶ所も 刺されたのだろう到る所から血を流しモガキ苦しんでいるではないか、見るに耐えられず目を 移すと子供連れの親子の姿然し子供はグッタリとして動かない、其の傍に茫然としている母親の姿 男は何が起こったのか暫く理解できなかったが眼鏡をかけてから此の現象が起きたのに気付き慌てて 眼鏡を外した何やら笑いながら話て通り過ぎる親子、シッカリ手を繋ぎ御揃いの服を着て通り過ぎる 若者達。  「何だ今の光景は。」気味悪くなった男は眼鏡をシッカリ握り締め帰宅し三本の眼鏡の効果を 読んでみると如何やら先程掛けた眼鏡は未来を見る物だったようだ「マジかよ、嫌未だ信じられん 明日は他の二本を会社で試してみよう。」翌日男は大きめのバックに眼鏡を忍ばせ出社すると 過去の眼鏡を掛け仕事を始めると同僚が「あれ、お前眼鏡掛けてたっけ。」不審な目で男を見る 「あー、小さな文字が見えにくいと思ったら近視だったんで昨日誂えたんだ、其れよりお前 部長の娘と付き合っているんだろ水臭いな如何して俺に教えてくれなかったんだよ。」 同僚は慌てて「如何して知ってるんだ誰にも言ってないのに。」 「こんな話は幾ら隠しても何処からか聞こえて来るもんだよ、其れよりお前も此れで出世が約束 されたようなもんじゃないかオメデトウ。」 「未だ君しか知らないんだろ頼むから黙っててくれよ。」 「目出度い話じゃないか如何して言っては駄目なんだ、あーそうか総務の娘と未だ切れてないんだな 身辺整理は早くした方が良いぞ。」 「ど、如何して其処まで知ってるんだ。」同僚は男を恐れだした。  「まあ此のぐらいにしてやるか。」男は「大丈夫黙っててやるよ、でも此の貸しは返してくれよ。」 笑いながら同僚の許を去ったものの眼鏡の効果が本物であると確認出来ると身体中に震えが走った 「此の力を有効に使えば大金持ち嫌世界征服も夢ではない、先ずこんな小さな会社にコツコツ 勤めて時間を無駄にしている場合ではない、自分のデスクに戻ると急いで私物を纏め辞表を書き 上司の机に置くとサッサと帰宅した。

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