ひな祭り企画(2008年)
NARUTO-ナルト小話(短編小説SS ※プチ連載)
『雛舞い』番外編(カカシ少年編) (四代目班・ギャグ&ほのぼの少々)
時は昔。カカシ十三歳の春。雛舞いの季節が訪れた。
当然、美形のカカシに誰もが期待し、一番の候補に選ばれた。
しかしカカシは……。
「なんでオレがやらなきゃならないんですか!」
任務帰り、仲間とともに森を歩きながら、カカシは先生に怒鳴った。いつも冷静なカカシなのに、今日はハァハァしながらすごい勢いでつっかかっている。息があがっているのは、一人先に帰ると急ぎ隠れながら走っていたところ、皆に探され、結局先生につかまったからだ。
「ん、カカシ、雛舞いに選ばれるということは、光栄なことなんだよ」
先生はにっこり笑った。しかしカカシはふてくされたように顔をそらす。
「先生だって昔踊ったんでしょ! なんで分からないんですかオレの気持ち」
「ん……そうだよね」
先生は、昔を思い出したようで、苦笑している。
「あ~私先生の踊り見てみたかったなぁ。カカシのも……見てみたいな~」
リンは、ほんの少し頬を赤らめる。
「人事だと思って……」
カカシはリンを軽く睨み付ける。するとオビトが、カカシの前にずいと出た。
「お前なぁ! せっかく選ばれたのになんで素直にやろうとしないんだよ! 美麗なるうちは一族を差し置いて選ばれやがったくせにさ」
オビトはくやしそうにカカシの胸ぐらをつかむ。
「だったらお前がやればいいでしょ。紅つけて、ほお赤くして、花柄の着物着て……」
「……!」
オビトは自分がそれをする姿を想像したのだろう、青ざめた。
「いや。選ばれたのはお前だ。お前がやれ!」
オビトは急にカカシの肩に手を置き、真剣に顔を覗き込んだ。カカシは(こいつ雛舞いの恐ろしさがやっと分かったな)という顔をする。
「そうよカカシ! やるべきよ! 注目されたら出世も早いよきっと!」
カカシのまぶたがほんの少しピクリと動く。
「やれよなカカシ。お前はオレのライバルなんだ。お前が上に行ってくれなきゃ張り合いが無くなる」
本気な部分もあるオビトの言葉に、カカシはぐっと拳を握る。
「ん、カカシ。強い忍になりたいなら、いろいろなことを経験しないとね」
先生の言葉は、カカシを説得させる決定打となった。
雛舞い当日。観客に囲まれる中、化粧をして女物の着物を身につけたカカシは、真っ赤になって立っていた。皆の口車にのせられたことに気付いたが、もう遅い。カカシはハァとため息をつくと、華麗に踊り始めた。観客の誰もが美しさに酔いしれ、息を呑んだ。だがカカシは、いますぐ火の国から逃げ去りたいほど恥ずかしかった。
雛舞いを終え、ダッシュで水道場へ行き化粧を落とすカカシの元へ、先生が現れた。
「ん、よく頑張ったね。カカシ……」
頭に手を置かれ、思わず顔をあげたカカシ。頬が赤かったのは、ほお紅が落ちていなかったのか。恥ずかしさが残っていたのか。それとも、ほめられてうれしかったのか。
「先生も、昔頑張ったんでしょ」
カカシはボソリと言い、穏やかに笑った。
☆あとがき☆
雛舞い番外編です。これは灯さまからアイデアを頂いて書いたものです。ありがとうございます^^
カカシ『ま! いい思い出だね』
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