図書館で借りてきた本の中から2冊目として米澤穂信さんの『
さよなら妖精』を読了しました。『氷菓』『愚者のエンドロール』はまだ積読です。
1991年、守屋路行たちは雨宿りをしていたマーヤと名乗るユーゴスラビアからやってきた少女と出会う。彼女は日本について様々なことを知りたがり、それを教えながら守屋たちはいろいろなことをマーヤに教えられ、考えさせられる。やがて2ヶ月の期限が来て、マーヤは祖国へ帰っていくが・・・
東京創元社のミステリ・フロンティア第3弾として発表された本書ですが、「これはミステリとはいえない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。確かに、ミステリとしてはメインの推理も途中に出てくる小さな謎も物足りない気がします。しかし、作者が本当に表現したかったことはこれらの謎解きではなく、日本では対岸の火事のように遠いところの出来事としてしか捉えられない問題ではないでしょうか。実際、作品中でも守屋はこの問題に強い関心を示すようになります。また太刀洗、白河、文原、マーヤ等のキャラクター造形を考えると、「ライトノベル的社会派ミステリ」と呼べるのではないでしょうか。地味な作風ですが、もっと光を当てられてもよい作品だと思います。