|
カテゴリ:東宮~永遠の記憶に眠る愛~全55話
东宫 Goodbye my princess 第33話「狼の牙」 米羅(ミロ)酒楼で第八公主・珞熙(ラクキ)の誕生祝いが開かれることになった。 ミロは酒を飲んだことがないという珞熙に驚き、せっかくの誕生日なのでおごるという。 しかし付き添いの裴照(ハイショウ)が慌ててミロの腕をつかんだ。 「ミロ、ダメだ!」 裴照は珞熙が下戸だと止めたが、珞熙はミロに触れた裴照に内心、穏やかでない。 「いいの、飲むわ」 「そうこなくっちゃ!行きましょう~♪」 第七公主・永寧(エイネイ)は強い酒を飲んで泥酔し、うさぎや鳥になって暴れ始めた。 小楓(ショウフウ)とアドゥは永寧を押さえつけて静かにさせたが、今度はおとなしく飲んでいた珞熙が突然、詩を詠み始める。 「挙杯邀明月 杯を挙げて明月を邀(ムカ)へ 対影成三人 影に対して三人となる~@李白の″月下独酌″より 人生得意須尽歓 人生 意を得ば すべからく尽くすべし 莫使金樽空対月 金樽(キンソン)をして空しく月に対せしむるなかれ~@李白の″将進酒″より …永寧?!続きは何だったかしら?」 すると珞熙はふと目の前に愛しい裴照がいることに気づく。 「裴将軍~詩を詠むわね~ 紅豆生南国 紅豆(コウトウ)南国に生じ 春来発幾枝 春来 幾枝を発(ヒラ)く 願君多采擷 願わくば君 多く采擷(サイケツ)せよ 此物最相思 此の物 最も相い思ふ~@王維の″相思″より …もう一編、聴いて~ 海上生明月 海上に明月生じ 天涯共此時 天涯 此の時を共にす 情人怨遙夜 情人 遙夜(ヨウヤ)を怨み 竟夕起相思 竟夕(キョウセキ)起きて相い思う~@張九齢の″望月懷遠″より」 小楓はいつも控え目な珞熙の大胆な告白に困惑し、思わず目をシバシバさせた。 小楓たちは無事に宮殿へ戻った。 裴照は珞熙を抱きかかえて寝宮へ送り届けることにしたが、酔っ払った珞熙はまた詩を詠んで自分の熱い想いを訴える。 「酔ってないわ~信じてないの?」 「…分かりました」 「ひどいわ~何も分かってない!さっきのミロさんは本当に美しい方だったわ~すごく羨ましい」 「飲み過ぎですよ」 翌朝、小楓はなかなか起きることができなかった。 するとすごい剣幕で皇太子・李承鄞(リショウギン)が現れ、小楓の寝所で何かを探し始める。 「これは何だ?!中身は薬か?!」 「はあ?!瑠璃玉よ!返して!」 小楓は取り上げられまいと、うっかりこの瑠璃玉で腕輪を作り、ある人に贈ると口を滑らせてしまう。 思わぬ言葉に李承鄞は一瞬、呆然となり、その隙をついて小楓は化粧箱を取り戻した。 「よく寝ていられるな?趙良娣(リョウテイ)が麺を食べて体調を崩したっていうのに! 君の仕業なんだろう?!」 「何の話?私は麺なんて届けてないけど?」 「しらを切る気か?!」 「西州の女子は卑怯な真似なんてしないわ!」 小楓はまず趙瑟瑟(チョウシツシツ)を見舞いに行って事情を聞くべきだと訴えた。 そこで李承鄞は場合によっては廃妃もあると脅す。 慌てた女官・永娘(エイジョウ)は皇太子妃なら無関係だと口を挟み、自分の独断で良娣に麺を届けさせたと報告した。 「今日は趙良娣の誕生日、贈り物を届けねば太子妃の面目が立ちません そこで誠に勝手ながら私が長寿麺を届けるよう命じたのです、でも誓って何もしていません!」 李承鄞は小楓の冷たい視線を感じながら、ともかく調べてみると言い訳して慌てて立ち去った。 趙瑟瑟に麺を届けたのは永娘だった。 永娘が小細工するとは考えられず、そうなると信じたくはないが瑟瑟の自作自演の可能性が高い。 この一件はすぐ皇后の耳に入った。 女官・容霜(ヨウソウ)は良娣の小芝居だったが、真に受けた皇太子が皇太子妃と言い争いになったと報告する。 「″廃妃にする″とまで言ったそうです …趙良娣に心を奪われ、周りが見えていないのでしょう このまま放っておけば殿下は従わなくなるかもしれません 娘娘?早めに手を打つべきかと存じます」 そこで皇后は身重の侍女・緒娘(ショジョウ)を利用し、ある策を講じることにした。 青鸞(セイラン)殿に皇太子妃が見舞いにやって来た。 侍女・錦児(キンジ)は慌てて良娣に知らせに向かうと、皇太子妃が証拠を見つけて追求に来たのかもしれないと焦る。 しかし瑟瑟は相手の出方を見ようとなだめて客間へ向かった。 すると意外にも皇太子妃は誕生祝いを届けに来ただけだと分かる。 「…変な物を食べたかもしれません、太子妃とは無関係だと信じています」 「ありがとう、私のせいにした李承鄞とは違うわね」 小楓は安心して帰ることにしたが、瑟瑟が急に″狼の牙″を見てみないかと言い出した。 そこで錦児に首飾りを持ってくるよう命じ、小楓に渡す。 「ご自分の物か良く見てみてください」 「はっ!私の物だわ、なぜあなたが持っているの?」 「太子殿下に頂いた婚姻の約束の印なのです」 小楓はなぜ李承鄞のもとに狼の牙があったのか訝しんだが、自分が取り上げるわけにもいかず、瑟瑟に返した。 「いいわ、このまま持っていて」 皇太子妃はおとなしく帰って行った。 錦児はなぜ良娣がわざわざ狼の牙を皇太子妃に見せたのか分からない。 すると瑟瑟は、二人の以前の関係を知る必要があると漏らした。 小楓は瑠璃玉で腕輪を作った。 そこへちょうど永娘が粥を運んで来る。 「太子妃、お手製ですか?手先が器用ですね?宮中の女官も敵いません」 「瑠璃玉を編むのは得意なの、西州で一番上手いのよ? …西州では女子が腰帯(ヨウタイ)を作り、許嫁に贈る だからみんな必死になって瑠璃玉の編み方を学ぶわ」 「なるほど~太子殿下もさぞお喜びになるでしょう~」 「李承鄞になんてあげないわ、私を助けてくれた恩人にあげるの」 小楓は市中で危ないところを助けてくれた裴照にお守りの腕輪を贈った。 驚いた裴照は職務を遂行しただけだと辞退、その様子を偶然にも李承鄞が目撃する。 すると小楓が裴照に無理やり何かを渡し、奇しくも二人の手が触れ合うことになった。 その時、急に咳払いが聞こえて来る。 小楓は李承鄞に気づいて慌てて手を離すと、裴照も咄嗟に腕輪を握りしめて隠した。 「一体、何をしているんだ?」 「何をしようが私の勝手でしょう?」 李承鄞は裴照が贈り物をもらったことには触れず、少傅が待っているので行こうと急かした。 「待って!聞きたいことがあるの…趙瑟瑟に狼の牙を贈った?」 「それが何だ?聞いてどうする?関係ないだろう?」 「あれは私のよ!阿翁からの贈り物なの!ずっと身につけていたのに間違えるはずない!」 「ぁ…西域から帰った時、荷の中に入っていた、瑟瑟が気に入ったんだ」 「だから何?なぜ勝手にあげたりするの?!」 「持ち主不明だった、もういいだろう?…裴照、行くぞ」 結局、李承鄞は話を切り上げて行ってしまう。 (」゚ロ゚)」<ねえ!返してくれるの〜?!ちょっと〜! その夜、裴照はミロの酒楼に顧剣(コケン)を訪ねた。 顧剣は裴照の腕輪に気づき、思わず腕をつかんで確認する。 「お前に贈るために作ったのか…で腕輪の自慢に来たのか?」 「…狼の牙で問題が起きた、殿下は誰の物か知らずに趙良娣に贈った それを知った太子妃が殿下を問い詰めたのだ」 裴照は二人が何か思い出しやしないかと心配していた。 すると顧剣はふと最近の小楓が少し変だと気づく。 「私を避けている気がする、医館に行ったのも記憶を取り戻すためだろう もしや何か思い出したのか?」 顧剣は確かに二人がこれ以上、勘ぐるのは危険だと考え、李承鄞が納得するような答えを用意すると言った。 翌日、裴照は東宮を訪ね、狼の牙の事情を説明した。 「西域から戻る際、軍営の外で拾いました、てっきり殿下の戦利品だと思って荷に入れたのですが… 太子妃との諍いの元となり申し訳なく思います、私から話しましょうか?」 「…必要ない、自分で伝えるから大丈夫だ」 裴照は後ろめたさを感じながら任務に戻った。 すると万年県で2名の兵士が訴えられたと報告が来る。 部下は兵士の名前が配下の中にないため、羽林軍を騙る不届き者だろうと言った。 「1人は…えっと、周西(シュウセイ)です」 裴照は″周西″という名を聞くとすぐ万年県衙(ガ)へ駆けつけた。 すると予想通り親民堂には男装した小楓とアドゥがいる。 聞けば2人は川で溺れた少年を助けたにも関わらず、なぜか少年の両親から息子を川に突き落とされたと訴えられていた。 県令も両親の訴えを信じて小楓たちを厳しく追求、すると裴照が当事者である兄妹を別々に尋問したいという。 そこでまず妹を裏庭へ連れて行くよう頼んだ。 「…で、この人に突き落とされたんだな?背後からか?」 「そうです!」 「では君の背中には目がついているのか?なぜこの人が押したと断言できる?」 「間違えた!前から押されて仰向けに落ちたんです」 兄の証言を聞いた裴照は今度は妹を呼び、兄を裏庭へ出した。 「お嬢ちゃん、あの人は背中と胸のどちらを押したんだ?」 「背中よ(ドン!)こうやって押したの」 県令は兄を呼び戻し、嘘をついたことを叱った。 両親から目配せされた兄は本当だと訴えたが、県令は正直に言わないと百叩きの刑だと脅す。 驚いた兄は父に命令されたと白状し、実は自分も妹も泳ぎが得意だと言った。 「よく溺れたふりをして助けを呼び、押されたと言い張るんです!それで父さんが銭を巻き上げて…」 父親は観念したのか、役所へ行こうと言えば普通は嫌がり、最終的に銭を出してくれると暴露した。 「公子のように役所で解決するという人に初めて会いました…トホホ〜」 すると県令は態度を一変させ、何事もなかったかのように小楓とアドゥを解放した。 しかし小楓は一方的に自分を責め立てた県令に憤慨し、こんな裁き方では正義が報われないと戒める。 「善人を失望させるな!」 裴照はそんな正義感あふれる皇太子妃の姿に思わず笑みがこぼれた。 小楓とアドゥは再び裴照に救われた。 「平服姿を初めて見たぞ?いつも鎧姿ばかりだからな〜とても男前だ」 すると小楓は腕輪だけではなく、他にもお礼の品を渡さねばならないという。 裴照は慌てて辞退し、本当にやめて欲しいと訴えた。 「贈り物が気に入らなかったのか?」 「いえ、それは違います、ただ畏れ多くて受け取れないだけです」 「フ〜朋友なのに他人行儀だな?」 「皆が朋友にはなれませぬ…」 「誰がそんなことを?永寧や珞熙と同じ、そなたも朋友だ!さあ行こう!」 裴照は皇太子妃の分け隔てない態度に何とも清々しい気分になった。 皇帝は柴牧(サイボク)の行方を追っていたが、何の痕跡も見つからなかった。 そこでお忍びで鳴玉坊(メイギョクボウ)を訪ね、明月(メイゲツ)に例の2人の賊のことを問いただす。 「その後、あの2人の賊は来たか?」 「フルフル…」 「金錠(キンジョウ)を渡されたと言ったな?見せてくれ、手がかりになるやもしれぬ」 明月は黙って金錠が入った化粧箱を出した。 「今日いらしたのは私を追求するためですか? 私は鳴玉坊で育ちました、私のことは女将に聞いてください 私と女将をお疑いなら役所で取り調べては?こんなの時間の無駄です …私は身分の低い女ですが、見下されるのは耐えられません 琵琶を聴くためにお越しになったとばかり、まさか公務だったとは…早く取り調べてください」 「一度しか会っていない私をなぜ信用するのだ?」 「ミンユエ、お顔を拝見できずとも声を聞いて下心のある男たちとは違うと感じました 安心できる声でしたわ…穏和で優雅な方に違いないと想像し、期待が膨らみました でも後悔しています、一瞬でも知音だと思ったことを…」 「″知音″だと?」 皇帝は不快な思いをさせてしまったようだと謝り、罰杯3杯だと言った。 すると明月も機嫌を直して共に杯を傾ける。 こうして久しぶりに酔った皇帝は明月の見送りで帰って行った。 酒楼にいた顧剣は明月が皇帝を馬車まで送る姿を見ていた。 そこで居所に先回りして戻って来た明月から事情を聞く。 「陛下は君を疑っていたのか?」 「ええ、太子殿下に会わせてもらえない?」 つづく (^ꇴ^)お酒の漢詩と言えばやはり″月下独酌″、私も大好きな漢詩のひとつです この詩は孤独という解釈が多いですが、管理人はむしろ喧騒を離れて独り静かに飲んでいる粋な詩だと感じましたね〜 さて皆さんはいかがでしょうか?…ってなんの話?!(笑 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.01.04 00:10:10
コメント(0) | コメントを書く
[東宮~永遠の記憶に眠る愛~全55話] カテゴリの最新記事
|