|
カテゴリ:夢幻の桃花~三生三世枕上書~全56話
三生三世枕上书 Eternal Love of Dream 第45話「待ち受ける悲劇」 白鳳九(ハクホウキュウ)は孤独な阿蘭若(アランジャク)に次第に感情移入して行った。 心配した東華帝君(トウカテイクン)は息澤(ソクタク)という夫の立場を利用し、阿蘭若の居所に勝手に引っ越して来る。 寝耳に水だった鳳九は驚いた。 「夜はどうするの?!」 「もちろん夫婦なんだ、一緒に寝るのじゃ」 「だめよ!相談もせず勝手に決めないで!」 鳳九はとりあえず東の客房に荷物を運べと命じたが、東華帝君はならば寝床を別にしようと和解案を出した。 すると侍女・茶茶(チャチャ)は喜んで準備に行ってしまう。 茶茶が回廊に出ると、ちょうど沈曄(シンヨウ)がやって来た。 沈曄は酔って迷惑をかけたことから、阿蘭若に謝罪したいという。 すると茶茶はふと思い立ち、わざと窓が開いている内庭に案内した。 沈曄は思いがけず仲睦まじい阿蘭若と師匠の姿を目の当たりにし、愕然となる。 「ふふ、息澤大人が居を移してこられたのです、日を改めてはいかがでしょうか?」 茶茶は沈曄が逃げるように帰って行く姿を見ながら、一矢を報いた気分になった。 東華帝君は白鳳九のため、箱庭を作って蓮を浮かべてやった。 すっかり気に入った鳳九はその夜もそばに置いて鑑賞している。 そんな鳳九のため東華帝君は池に魚を投入、鳳九は喜んだが、その時、階下にいる沈曄に気づいた。 沈曄は酒に酔って無礼を働いたと丁重に謝罪した。 するとふいに阿蘭若の隣から師匠が顔をのぞかせ、沈曄は何とも気まずい思いで帰って行く。 東華帝君はこんな夜更けに阿蘭若を訪ねて来た沈曄が気に入らないとぼやいた。 しかし鳳九からかつて東華帝君と姫蘅(キコウ)が夜中に絵を描いていた時、自分は文句を言わなかったと指摘されてしまう。 ばつが悪い東華帝君はわざとらしく伸びをすると、先に寝ると断って横になった。 一方、孟春(モウシュン)院では沈曄が悶々としていた。 「なぜこれほど大きく変わった?師父が居を移してくるとは…あの阿蘭若は一体、何者なのだ?」 沈曄はなぜ夢の世界が過去の事実と変わってしまったのか分からず、いらだちを募らせた。 東華帝君は久しぶりに岐南神宮へ戻った。 ひとり神器作りに奮闘していた蘇陌葉(ソハクヨウ)は順調に進んでいると報告、すでに形を成すところまで来たという。 東華帝君はひとまず戻って休むよう勧め、英気を養ったら戻って来るよう命じた。 そこで山を降りた蘇陌葉は真っ先に白鳳九を訪ねる。 すると鳳九はすっかりやつれた師匠の姿に驚いた。 「やだどうしたの?西海一の風流な第二王子が見る影もないわ~」 「私がかくもやつれたのは、数日間ぶっ続けで一睡もせず仙力を消耗したせいだ!」 鳳九は東華帝君が自分と一緒にいる間、神器作りを全て蘇陌葉に任せていたと気づき、完成した暁には必ず礼をするはずだと吹き込んだ。 「そうね~例えば…手料理をふるまうとか?」 「帝君の手料理だと?!ナイナイナイナイ…帝君のお礼とやらは遠慮するよ」 蘇陌葉はそれより沈曄の様子が気になった。 白鳳九の話では特に絡まれることもなく順調だが、先日、酔った沈曄が妙なことを言ったという。 「阿蘭若と沈曄の間柄はよそ者、仇敵にはなっても、今の関係はありえないって… その後、沈曄が倒れたから理由は聞けなかったの」 そう言えば沈曄は死んだ阿蘭若のために3つの季節を斬り捨てたと聞いた。 ならば沈曄の阿蘭若への愛はかなり深かったはず、まさか死後に突然、深い愛が芽生えたのだろうか。 しかし蘇陌葉も刑場の後の話を多くは知らなかった。 「印象に残っているのはごくわずかだ…」 あれから阿蘭若はのどかな日々を送っていた。 書法を学んだり、芝居を見たり、学府で弓術や馬術を教えたり、またよく顔を合わせる文恬(ブンテン)に食事を振舞うこともあったという。 ある時、文恬はおずおずと阿蘭若に″沈曄に碁を教わりたいから訪ねても構わないか″と聞いた。 阿蘭若は快諾し、文恬はしばしば沈曄を訪ねるようになる。 しかしある日、思わぬ出来事が起こった。 それは息澤と関係しているという。 …その日、沈曄は中庭で文恬と一局、手合わせしていた すると阿蘭若が現れ、剣作りに必要な石が岐南山で採れるため、息澤を訪ねる時に一緒に行かないかと誘う 沈曄は籠の鳥となった自分を哀れんでいるのかと嫌味を言ったが、文恬が同行したいと申し出た こうして翌日、三人は一緒に岐南山へ入る 沈曄と文恬は石探しへ、そして阿蘭若はひとりで神宮の息澤を訪ねた 「犬因獣(ケンインジュウ)を捕まえたの?」 「そうだ、狩の修行に役立つだろうが、あれは凶暴だぞ?」 息澤が捕らえた犬因獣は裏庭の結界の中にいた 霊獣の中でも最も機敏、しかも痛みを感じないという 「あれを射られたら仕留められぬものはない」 息澤の言葉に触発された阿蘭若は霊弓を招喚すると、早速、結界の中へ飛び込んだ 息澤は阿蘭若の差し入れの菓子で茶を飲みながら、狩りの様子を見物していた 『狙いを定めても無駄だ、犬因獣は並みの霊獣ではない、そなたの矢より永遠に数倍も早いのだ 犬因獣が移動する方向にずらして射てみよ』 それでも阿蘭若はなかなか犬因獣を仕留められない 『阿蘭若、そろそろ出て来い、簡単には射られぬ、疲れて奴の餌食になるな』 『もう少しだけ頑張ってみる!』 やがて空中に飛び上がった阿蘭若は振り向きざまに霊矢を放ち、ついに犬因獣の胸に命中させた しかし着地に失敗して転倒、岩に頭をぶつけて気を失ってしまう すると起き上がった犬因獣が阿蘭若めがけて飛びかかって来た その時、結界に現れた沈曄が犬因獣を封じ込め、阿蘭若を連れて脱出する 沈曄は阿蘭若と猛獣を戦わせた上、危機に陥った妻を助けなかった師匠を非難した しかし息澤は阿蘭若が見事に射たと話し、婚姻を結んだからと言って夫婦とは考えないと冷たい 『私の出る幕はなかったであろう…とにかく助かれば良い』 息澤が先に屋敷へ戻ると、阿蘭若は目を開けた 『私の血は汚れているんじゃなかったの?』 阿蘭若は額の傷を手で押さえている沈曄をからかう 『私のことが好き?…好きなのね?沈曄』 沈曄はごまかしたが、阿蘭若はいたずらっぽく沈曄の顎をつかんで笑顔を見せろと言った… 当時、阿蘭若が危険な目に遭ったことで、沈曄は思いがけず阿蘭若への想いを示すことになった。 白鳳九は2人の想いが通じ合ったなら良い話だと思ったが、蘇陌葉はこれが結末ではないという。 岐南山の一件のあとも沈曄は阿蘭若の屋敷に2年間、軟禁された。 結局、蘇陌葉は所用で西海に帰ったため、その間のことは知らない。 しかし鳳九は蘇陌葉が所用だと口実をつけただけで、本当は阿蘭若と沈曄が一緒にいるところを見たくないのだと分かった。 阿蘭若の死への執着、何より阿蘭若の話をする時に感慨深げになる。 蘇陌葉は鳳九に阿蘭若への気持ちを見透かされていたと知った。 「だが図らずもその後、色々なことが起こったんだ…」 2年後に王・相里闕(ショウリケツ)が病死、皇太子の相里賀(ショウリガ)が即位した。 しかし即位からわずか7日後、夜梟(ヤキョウ)族が突然、口実を設けて比翼鳥(ヒヨクチョウ)族に対し戦を仕掛けて来たという。 相里賀は親征して敵を思行河(シコウガ)まで後退させたが、8月17日、戦死を遂げた。 当時、橘諾(キツダク)は平民に落とされていたため、順当なら阿蘭若が即位することになる。 ところが8月19日に橘諾が流罪先から戻り、即位したというのだ。 「明くる日、阿蘭若は…首を吊って自害した、詳しい事情は私も知らないんだ 私が梵音谷(ボンオンコク)に戻った時、すでに2年が経っており、阿蘭若の元神はとうに消えていた 王族は″自害した″の一点張りで…」 白鳳九はふと思い出した。 確か阿蘭若の死後、橘諾がその名を禁句にしたと聞いている。 蘇陌葉もその通りだと認めた。 蘇陌葉はその後、大王の死因は病死ではなく、阿蘭若の毒殺だったという噂を聞いた。 そんな荒唐無稽な話を誰が信じられようか。 しかし首を吊るのは比翼鳥族にとって確かに元神を消す方法だったため、口実に利用されたのだろう。 すると白鳳九はなぜ沈曄が愛する阿蘭若を救わなかったのか首を傾げた。 「沈曄か…奴なら大王の死後に岐南神宮に戻ったよ しかし阿蘭若を救うどころか、逆に上奏したのさ、″阿蘭若の事件は神宮に処理させて欲しい″とね ″阿蘭若の罪は極めて重いゆえ、神宮が死罪に処すべきだ″と…」 蘇陌葉は沈曄の阿蘭若への想いが本物ではなく、ただ神宮に復帰したかっただけだと非難した。 鳳九は腑に落ちないと言ったが、蘇陌葉はどちらにしても沈曄が阿蘭若を追い詰めたことに変わりないと怒りをあらわにする。 「こんな噂もあるんだ…実は沈曄が上奏した翌日、阿蘭若は自害したと…」 蘇陌葉は当時の悲しみが蘇り、辛くなって帰って行った。 沈曄は苦しみのあまり日が高いうちから酒に溺れていた。 すると王后・傾画(ケイガ)が剣作りの状況を見たいと訪ねて来る。 「…半年後のはずなのに」 ともかく沈曄は工房で王后と会うことにした。 傾画は刑場で橘諾を救ってくれた沈曄に感謝した。 しかし叔母である自分のためでなく、橘諾が先王の唯一の娘だから助けたと分かっている。 沈曄は知っているなら礼などいらないと突き放し、日が暮れる前に帰った方がいいと追い出した。 現実の世界では郡守・潔緑(ケツリョク)が禁句となっている阿蘭若について教えて欲しいと嘆願を続けていた。 女王・橘諾は一度は拒んだものの、雪の庭園で長跪する潔緑に根負けする。 「立ちなさい、何が知りたいの?」 「阿蘭若とは何者ですか?東華帝君さえ出られない夢を作った目的は何ですか?」 「…阿蘭若は私の妹妹(メイメイ)よ」 阿蘭若はとても愛らしい赤子だった。 幼い頃は橘諾も阿蘭若が好きだったが、徐々に阿蘭若は自分にとって悪夢になって行ったという。 しかし伸び伸びと生きて壮烈な最期を遂げた阿蘭若は橘諾にとって憧れだった。 「あの子はただ…私が女王になる道を阻んだだけ…母亲(ムゥチン)は目的のために手段を選ばなかった 私たちは今、天罰を受けているの、阿蘭若の夢は比翼鳥族に対する天罰よ」 まだ愛を知らない潔緑にはこの悲しみを理解できないだろう。 そして愛のためなら犠牲を惜しまぬ者がいるということも…。 橘諾は自分たちの代で終わらせるべきことだったと後悔した。 「でもある者が阿蘭若のため、修為を全て差し出した 私の愛は実らなかったわ…阿蘭若も駄目だった、″あの者″も駄目だった… 私たちは愛を追い求めたけれど、結局、夢の世界だけがむなしく残ったわ」 潔緑は確かに意味がよく分からなかった。 すると橘諾はそれで良いという。 「本当の阿蘭若はとうに消えた、残っているのは私たちの執着に過ぎない」 橘諾は比翼鳥族の悲劇を繰り返さないよう、息子たちには愛をつかんで欲しいと願った。 「あ、それで太后は最後、どうなったのですか?」 「母はいつも最高の物をくれたけど、私の望みは分からなかった… 阿蘭若の波乱に満ちた愛を見た後、私は改心して普通の殿方を夫に迎えたわ」 橘諾は夫婦で協力して傾画を王宮に監禁、そして傾画は20年目に正気を失ったという。 橘諾はしみじみ全ての真相を知ってから振り返ってみると、何とも滑稽に思えると言った。 王族の自分たちは傀儡に過ぎず、何と哀れなことか、母に愛された自分も、母に愛されなかった阿蘭若も…。 中でも最も哀れなのは″あの者″だ。 あれほど深く阿蘭若を愛し、添い遂げたがっていたが、永遠に会うこともできないのだから…。 こうして秘密を明かした橘諾は、潔緑に第2王子・相里萌(ショウリホウ)を迎えに行かせた。 すると庭園に残った橘諾は天に向かって思いを訴える。 「母后は後悔を?!…帝君が夢に入りました! 沈曄が築いた結界を壊して夢を出てきたら、梵音谷は本来の姿に戻ります! 母上の作った罪業が、ついに幕を閉じるのです」 潔緑は解憂泉(カイユウセン)に駆けつけ、連宋(レンソウ)と相里萌に女王の話を伝えた。 女王の話では″あの者の修為は東華帝君に遠く及ばず、機が熟せば誰も帝君を止められない″という。 東華帝君が必ず九歌(キュウカ)を連れて出て来ると分かった相里萌はようやく安堵し、ひとまず潔緑と一緒に王宮へ戻ることにした。 つづく (´-`).。oO(脚本ェ… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.01.12 12:10:43
コメント(0) | コメントを書く
[夢幻の桃花~三生三世枕上書~全56話] カテゴリの最新記事
|