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カテゴリ:東宮~永遠の記憶に眠る愛~全55話
东宫 Goodbye my princess 第55話「最後の願い」 …シァォフォン!シァォフォン!私だ、私が戻ったんだ!(はっ!)… うなされていた李承鄞(リショウギン)は突然、目を覚ました。 付き添っていた時恩(ジオン)と裴照(ハイショウ)は胸をなでおろし、7日間も昏迷していたと教える。 「小楓(ショウフウ)…小楓は?」 時恩が口ごもると、裴照が軍から急報だと伝えた。 「高顕(コウケン)が西州王と結託し、謀反を…」 高顕は父から届いた決死の密書のおかげで、安護府軍を連れて西州に逃げ延びていた。 高顕は西州王・曲天澤(キョクテンタク)をそそのかし、丹蚩(タンシ)を引き入れて謀反を企んだ。 その矢先、九公主が帰国したと知る。 豊朝(レイチョウ)皇帝が重病の今、皇太子の李承鄞が事実上の皇帝だろう。 小楓のために趙瑟瑟(チョウシツシツ)を錯乱させたところを見ると、李承鄞の九公主を思う気持ちは本物のはずだ。 そこで高顕は九公主を利用して李承鄞をねじ伏せるよう進言する。 しかし天澤は妹を巻き込んでまで戦う気はないと退けた。 豊朝との戦いはあくまで西州が侵略に屈するような弱い国ではないと天下に知らしめるためだという。 高顕はその気骨に感服して機嫌を取ったが、それとなくけしかけた。 「なぜ豊朝が国境の安定を図るために和親を用いたと?豊朝の兵力が張子の虎だからです さもなくばとうに西州を征服したはず、今まで待つ必要が? 民や国のためなどと言うのは口実にすぎません、王上、民というの者は勝者に付くのです 君主たるもの対局を見据えねば…王上、未来はあなたのお心ひとつ…」 小楓は兄が豊朝との戦を決めたと聞いて幕舎に駆けつけた。 「哥哥、中原に戦意はないのに挑発するの?」 「挑発ではない」 天澤は西州の威信を取り戻したいだけだと話し、逃げ帰って来た小楓の敵を討つという。 「お前がまだ太子妃なら私は今も及び腰だっただろう、予感がするのだ、これは天命なのだと…」 裴照が懸念した通り、小楓の帰国は戦の口実になっていた。 一方、高顕は丹蚩の鎮北侯・趙敬禹(チョウケイウ)を懐柔していた。 「ご息女は李承鄞に追い詰められ、正気を失ったのだろう?それでも奴に忠義を尽くすつもりか?」 迷っている暇はないぞ?」 趙敬禹は高顕を追い返すため謀反に承諾、丹蚩から3万の精鋭部隊を出すと約束したが、別の思惑があった。 丹蚩がどちらに付くかでこの戦の勝敗が変わる。 当然、朝廷も好条件で自分を手なずけようとするはずだ。 高于明(コウウメイ)が失脚した今、もし自分が功を立てて中原に戻れば朝廷で無敵となるだろう。 しかも皇太子妃が西州へ逃げ帰ったのなら、李承鄞が即位すれば娘が皇后になれるはずだ。 「病だろうが錯乱しようが、皇后に変わりない…」 西州では戦が始まると知った民たちが行く当てもないまま逃げ始めた。 小楓は今さらながら自分の身勝手な行動を恥じたが、アドゥは公主が戻る前から西州王は出兵を決めていたとなだめる。 しかし兄の背中を押してしまったのは紛れもない事実だった。 「これは天罰なのかも…人は死ぬ以外に苦しみから逃れる術はない でも西州へ戻ればやり直せると思っていた…自分を騙していたのよ」 「それは違います、国境の関門に立った時、覚悟を決めたのでは?何を考えていましたか?」 「…李承鄞への想いを断ちたかった」 「飛び降りた瞬間に断ったのです!もう記憶や愛のために苦しんではいけません! 私たちは西州のために生きるべきです!」 「その通りね、私は私情にとらわれすぎて自分の務めを忘れていた… 哥哥が戦を選んだのは西州の存続のため、私は西州の安寧のために生きる」 小楓とアドゥはたとえ命を落とすことになっても無垢な民を救おうと決意したが、豊朝では李承鄞が趙敬禹を護国大将軍に封じ、反乱平定のため出征していた。 開戦前夜、アドゥは眠っている公主に別れを告げた。 「公主…アドゥは行きます」 そしてアドゥは高顕の天幕に潜入、寝台の下で息をひそめる。 やがて天幕に戻って来た高顕は3日ぶりに少し休むことにした。 鎧を脱いで剣だけ肌身離さずに横になると、すぐにうつらうつらして来る。 その時、突然、下から剣が胸を突き刺した。 「ぐふっ!」 アドゥは止めを刺すまで必死にこらえていたが、高顕が最後の力を振り絞って剣を寝台に突き刺してから、息絶える。 一方、小楓はなぜか胸騒ぎがして目を覚ました。 するとアドゥの姿がない。 驚いた小楓は兄の天幕に駆けつけると、ちょうど高顕が刺客に殺されたと急報が届いた。 アドゥは高顕と刺し違え、絶命していた。 小楓は西州と自分のために犠牲になったアドゥを胸に抱き、悲しみに暮れる。 そして荒野に陽が昇った。 結局、天澤は出兵し、待ち構えていた李承鄞率いる豊朝軍と対峙する。 しかしまさに決戦が始まるという時、小楓が馬で駆けて来た。 「やめてっ!」 「シァォフォン!」 李承鄞は愛しい小楓の姿をとらえ、思わず叫んでいた。 曲天澤は妹に引き返すよう命じた。 しかし小楓は両軍の間に留まり、高顕の首を投げ捨てる。 「高顕は死んだ!中原最大の逆臣は当然の報いを受けたのよ! 中原の兵士たちよ!皆は高顕に従っただけで戦うのは不本意なはず!中原人同士なのよ?! 高顕の私心のために命を犠牲にしてまで同胞と戦うつもり?!」 「一体、何のつもりだ、妹妹(メイメイ)!」 憤慨した天澤は馬を走らせようとしたが、小楓が刀を抜いた。 「来ないで!」 「シァォフォン!落ち着け!」 李承鄞は焦ったが、小楓は李承鄞にも動くなと言った。 「動いたら私もアドゥの後を追う!」 すると李承鄞も天澤もその場から動けなくなってしまう。 「哥哥!戦をやめて!まだ分からないの?!これは高顕の罠なの!全て陰謀よ! あんな男のために幾千万の民の命を犠牲にするつもり?!」 公主の言葉を聞いた兵士たちは思わず武器を下ろした。 「丹蚩が滅びた時、民は塗炭の苦しみをなめ、今や子孫も絶えたわ! 西州も同じ轍を踏むつもりなの?! どうして繁栄と幸せをつないで行こうとしないの?!帰順と平和を引き換えにして何が悪いの?! 哥哥、西州を思うがゆえに父王がしたことで威信を失ったというの?!違うわ! 王と生まれし者、情に走るべからず! 民の未来のため妥協の苦しみに耐え、自らを犠牲にしてでも民を幸せに導く! それこそが西州王のあるべき姿よ!」 小楓は兄を説得すると、今度は向き直って李承鄞を見た。 「顧小五(コショウゴ)!こう呼んだら思い出してくれるかしら?! …私はかつて1人の人を深く愛した、他の誰でもない、李承鄞、あなたよ あなたは私を騙し、私を裏切り、親族を殺めた、だけど私はあなたを殺す術がなかった! かつて何度も自分に言い聞かせたわ!あなたを憎まなきゃいけない、憎まなきゃいけないって でも今だに憎むことができない!」 小楓は思わず天を仰ぎ、涙をこらえた。 記憶を取り戻した李承鄞はいかに小楓を傷つけ、苦しめたのかと思うとやるせない。 「でも全て過ぎたことよ…今の私の心にあるのは西州の民の行く末だけ もし私を理解し、償うつもりがあるなら、どうか戦をやめて!」 すると小楓は馬を降りた。 「西州の九公主として豊朝に嫁いだのは西州と豊朝の末永い和平のためよ もし今日、本当に兵刃を交えるなら、私は阿爹にも明遠(メイエン)娘娘にも太皇太后にも、 何より西州の人々に顔向けできない! それでも今日、開戦するというなら、私はどちらの側についても逆徒になってしまうわ だからこの命を以って哥哥と太子の目を覚まさせ、西州の真の安寧と幸福を取り戻す …後悔はないわ」 小楓は自分の首に刀を当てた。 「シァォフォン!」 「妹妹!」 李承鄞と天澤は必死に止めたが、近寄れば小楓をかえって刺激してしまう。 「グゥシャオウー!あなたは以前、3つの頼み事を聞いてくると約束した、覚えている?」 「覚えているぅぅぅぅっ!」 小楓は李承鄞もついに記憶が蘇ったのだと知り、思わず失笑した。 ならば丹蚩で顧小五に蛍を集めて欲しいと頼んだことも覚えているだろう。 「まだ2つ頼み事ができる、必ず果たしてね!」 「はお!言ってくれ!」 「ひとつ!あなたが生きている間は中原軍を一歩たりとも西州に踏み込ませないこと!」 「はお!約束する!だから刀を置けえぇぇぇ!」 しかし小楓は笑みを浮かべたまま、決して首から刀を離なさなかった。 「君が死んだら1人では生きていけないっ!」 「ふっ、最後のひとつよ!…約束して、しっかり生きると…」 小楓はためらうことなく自分の首を斬った。 殺風景な荒野に小楓の真っ赤な血が飛び散った。 その場でばったり倒れた小楓、その目にはちょうど青空を横切る鳥たちの姿が映る。 咄嗟に駆け寄った李承鄞は小楓を腕に抱き、首を抑えてあふれ出す血を必死に止めようとした。 「シァォフォン!シァォフォン!」 「メイメイ…」 側では天澤が泣き崩れ、裴照たちはなす術なく呆然と立ちすくんでいる。 「シァォフォン…シァォフォン…頼む、私を置いていかないでくれ…お願いだ…」 すると小楓は薄れゆく意識の中で愛しい顧小五の頬に触れた。 思い出すのは丹蚩で過ごした幸せな時間、阿翁(アウォン)が婿として認めてくれたあの日、そして顧小五と一緒ならどこへでも行くと誓ったあの夜…。 「ゥッ…グゥシャオウー…」 李承鄞は小楓を見つめながら愛する人を裏切った自分を恨んだ。 記憶を失っても小楓に惹かれたが、小楓の愛を手に入れるどころか憎まれてしまう。 …果たすべき任務があったんだ、そのために友さえ欺かねばならない、大切な友をね …だから王子は、任務を果たしたら必ず償うと決めている …その友は王子のことを許してくれるだろうか?もし君なら王子を許せるか? あの時、小楓は自分なら許すと言ってくれた。 全てを思い出して涙に暮れる李承鄞、すると小楓が息も絶え絶えに歌を口ずさむ。 「結局…あの狐狸は…会えなかった…彼の姑娘と…」 その時、小楓の手がだらりと力なく落ちた。 「シァォフォン!!!」 李承鄞の絶叫が荒野に響き渡った。 …リーチョンイン、あなたを許すわ …私たちの蜜月も何もかも水に流しましょう …借りも、過分な望みも、絶望も全て すると天澤が絶望に打ちひしがれる李承鄞を突き飛ばし、小楓を抱えて連れて行ってしまう。 「シァォフォン!シァォフォン!シァォフォン!」 李承鄞は慌てて小楓を取り戻そうと手を伸ばしたが、裴照と趙敬禹が止めた。 「シァォフォン!シァォフォン!シァォフォン!駄目だ!嫌だ!シァォフォン!戻ってくれ!」 …白髪頭になった李承鄞は懐かしい東宮に立ち、当時のことを思い出していた。 そこへやはりすっかり年老いた裴照が現れる。 「太上皇に拝謁いたします」 「よくここだと分かったな…」 「禅譲式が終わってからお姿が見えないので、宮中は大騒ぎでしたよ きっと東宮におられると思い、見に来たのです」 あれから皇帝に即位した李承鄞は朝政に心血を注ぎ、今日、無事にこの豊かで平和な国を三兄の長男に託した。 豊朝では初めて血を流すことのない譲位となる。 裴照は急に肩の荷を下ろした太上皇の身体を心配したが、李承鄞は大事なことがまだ残っていると言った。 「西州へ探しに行かねば…」 「まさか…太上皇、小楓が亡くなってずい分と経ちました、もう諦めては?」 「ふぁっはははは〜裴照よ…小楓の芝居を真に受けたのか? 分からぬか?小楓は私を懲らしめているのだ、間違いなく今も元気に生きている どこかに隠れて私が苦しむのを眺めているのだ」 「太子妃は亡くなったのです、西州の墓にも草が生えた…もう戻られません」 「違う!死んではおらぬ!死ぬわけがない…あやつはこの世で一番、賢い女子だぞ? 間違いなく生きている、我らは騙されたのだ… はあ〜情けないな、この記憶を一生、背負うのか…」 「お願いです、全て忘れてください」 「忘れる?…″忘川の水を飲めば情を忘れる″と言ったな…だが忘川はどこにある?」 李承鄞は小楓と交わした約束を果たし、ひとり旅に出た。 きっと今でも真紅の薄衣をまとった狐狸が砂丘で誰かを待っているだろう…。 完 (  ̄꒳ ̄)<だが忘川はどこにある? って(# ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾<知るかーっ! いやあ〜終わってしまいました〜。゚(∩ω∩`)゚。 前半の美しい自然や乗馬のシーン、小楓の真っ赤な衣装が特に印象的で、何より演出が素晴らしかった 若手の李承鄞と小楓の迫真の演技にも拍手です〜(゚∀゚ノノ゙パチパチパチパチ ↓ちなみにこちらは当時、役にハマり過ぎたと評判だった李承鄞の最終話の舞台裏です 衝撃が強かった方はこれを見て立ち直ってください(^ꇴ^) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.07.23 15:59:58
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