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カテゴリ:三千鴉の恋歌 全30話
三千鸦杀 Love of Thousand Years 第16話「復讐の第一歩」 朝廷から礼部の李(リ)侍郎が左府にやって来た。 今日は紫竹林(シチクリン)で詩人を招いた春の歌会がある。 左相国(サショウコク)は李侍郎も是非にと招待していると、ちょうど左紫辰(サシシン)が挨拶に現れた。 李侍郎は立派な青年だと褒め、″献天寿令(ケンテンジュレイ)″を書くだけのことはあると感心する。 「李大人(ダーレン)、ぜひ息子を国のために使ってください、李大人が頼りです」 「妖魔の国のためにですか?…妖魔がいれば私など不要でしょう?」 紫辰は自分を勝手に仕官させようとする父を非難したが、左相国は笑ってごまかした。 「李大人、息子は仙山から帰ったばかりで、不思議な体験をしたせいか、このような戯言を…」 「わははは~面白いことを言う御子息ですな~」 李侍郎は問題にしなかったが、憤慨した紫辰は歌会を辞退しようと決めた。 しかしそこへ秋華(シュゥカ)夫人が現れる。 左相国は李侍郎に驪(リ)国皇后の妹だと紹介、すると秋華夫人は娘が舞の準備をしていると話した。 「紫辰の伴奏がなければ娘は1人で踊る羽目になるわ~ふふふ」 紫辰は嫌々ながらも玄珠(ゲンシュ)のために歌会で琴を弾いた。 李侍郎は美しい玄珠に目を奪われ、左相国に宴の後には″人″も味わいという。 しかしそんな2人の話を耳にした紫辰はほとほと嫌気が差し、舞が終わった途端に席を立って出て行ってしまう。 その頃、復讐を誓った覃川(タンセン)は人知れず林を駆け抜けていた。 桃小令(トウショウレイ)の話では左相国が今日、紫竹林で宴を開いているという。 やがて覃川は竹林に響く話し声に気づき、その声を頼りに進んだ。 「天原国は屈強な国となった、ここに妖兵をもって敵を殲滅(センメツ)したと宣言する…」 宴ではちょうど左相国が杯を手に立ち上がり、乾杯しようとしている。 覃川は惨殺された民たちの無念を思いながらゆっくり仙弓を引き、憎き左相国の心臓に狙いを定めた。 紫辰は馬を駆けていたが、ふと胸騒ぎがして引き返した。 するとすでに招待客たちが逃げ出した宴で息絶えた父の姿を発見する。 「父亲(フーチン)…しっかりしてください…父亲っ!」 その時、父の身体からふっと霊気が抜け出し、飛んで行ってしまう。 やがて左相国の魂は覃川が掲げていた霊灯に吸い込まれて行った。 「これで1人目…霊灯は世界の苦難の受け皿、驪国を裏切り、滅した者の償いの場よ…」 一方、静養していた傅九雲(フキュウウン)は急にあることに気づいた。 覃川がもし復讐を遂げても霊灯をともせるとは限らない。 「それを決められるのはつまり?…おいっ!どこへ行く?!九雲!」 眉山(ビザン)君は霊力を抑えるなら半年休めと叫んだが、九雲は飛び出して行った。 「心配なら一緒に来いよ!」 紫辰は父の葬儀を済ませた。 左相国の死を目の当たりにした紫辰は父と和解できなかったことを深く後悔し、遺志に従って皇太子に仕えようと決意する。 そして事件からひと月、中元節が近くなる頃、紫辰はついに参内した。 秋華夫人は中元節の準備のため街へ出かけた。 しかし倹約するどころか左府の付けで贅沢ざんまい、玄珠は頭が痛い。 すると急に店の外が騒がしくなった。 何事かと思えば、久しぶりに都へ戻って来た第二皇子の行列がやって来る。 その時、玄珠は偶然、窓から顔を出した第二皇子を見て困惑した。 「どこかで会ったことが…」 その頃、覃川は料理の腕を活かし、都の燕燕(エンエン)飯店で料理長として働いていた。 街では近づく花創(カソウ)大会を前に皇太子の花嫁候補となるべく娘たちが奔走している。 その日、覃川は花創大会の会場となる万花楼(マンカロウ)へ出前を届けにやって来た。 そこで顔見知りの老板に差し入れを渡して機嫌を取り、こっそり会場を盗み見る。 次の標的は皇太子・靂渊(レキエン)だ。 紫辰は東宮詹事(センジ)として初日の仕事を片付け、皇太子に謁見した。 すると靂渊は香取(コウシュ)山で目を治してもらった紫辰に探りを入れる。 「傅九雲を知っているか?…単なる興味だ、どんな容姿でどんな仙人だ?」 「…傅九雲は女好きの遊び人ですが、能力は群を抜いていて、山での力は絶大でした 正しい取捨選択のできる人物かと」 しかし紫辰は全て聞いた話だと答え、屋敷からあまり出て来ないため、会ったのも一度だけだと嘘をついた。 靂渊はどうやって香取山から逃げ延びたのか訝しむと、紫辰は友人が逃がしてくれたと説明する。 「驪国諸侯の娘・玄珠です、私に付き添って香取山に…」 「玄珠なら知っている、母親の秋華が有名だからな 何でもあらゆる宴に招待もなく出席しているとか、そう言えば…」 紫辰は思わず秋華夫人も父の古い友人だと告げ、話を遮った。 仕方なく靂渊はそこで切り上げ、明日は紫辰も東苑(トウエン)に同行するよう命じる。 「玄珠と母親も連れて来てくれ」 紫辰が竹林に戻る頃にはすっかり暗くなっていた。 中庭には玄珠がいたが出迎えるわけでもなく、ただ紫辰を冷ややかに見つめている。 紫辰もそのまま素通りし、直接、秋華夫人を訪ねた。 「明日、殿下が夫人と玄珠も一緒に東苑へと…」 「本当に?!玄珠にもすぐ伝えるわ!」 秋華夫人は思わぬ好機を喜び、最近の玄珠の態度を許して欲しいと謝った。 「いいえ、玄珠が怒る気持ちも良く分かります」 玄珠は文人としての誇りを捨て、権力に降った紫辰に怒っていた。 その夜、覃川は記憶を頼りに花創大会の会場の見取り図を書いていた。 すると老板娘と郭(カク)大婶から話があると呼び出される。 何事かと思えば、覃川もそろそろ年頃のため、家族を持ってはどうかと言うのだ。 そこで覃川はお金が貯まったら豆豆(トウトウ)哥が迎えに来てくれると嘘をつく。 「絵描きなの、世界を旅して感性を磨いているわ」 「絵描き?…まさか!イヤイヤイヤ~公子斉(コウシセイ)なわけないか~」 (;゚Д゚)<公子斉ーっ?! 実は今、街にあの有名な絵描きの仙人・公子斉が滞在しているという。 翌日、秋華夫人と玄珠が東苑にやって来た。 すると靂渊は玄珠に白河(ハクガ)龍王が死んだのになぜ無事なのか尋ねる。 玄珠は弟子を守って亡くなった龍王を恩人だと言ったが、片や香取山主は弟子を見捨てて逃げ延びたと非難した。 「私を恐れないとは良い度胸だ、気に入った」 皇太子の言葉に期待が膨らむ秋華夫人、そこへ臣下が妃候補の絵姿を持って来た。 しかし靂渊は実物より美しく書く絵師の姿絵にへき易、もう不要だとはね付ける。 そこで巻物をひとつ紫辰に渡し、代わりに評価しろと命じた。 紫辰は早速、巻物を広げて見たが、その出来栄えに目を見張る。 「(はっ!)これは…まさか」 紫辰の反応に驚いた靂渊は巻物を奪い取り、その美しさに驚いた。 「誰が描いた?!」 紫辰と玄珠は口をつぐんだが、おしゃべりな秋華夫人が公子斉の絵だと口を滑らせる。 「絵と音楽に精通し、色を好む仙人です、噂では女遊びをするので顔を隠しています 毎日、仮面をつけ、琴を弾いて過ごすとか…」 「琴だと?」 靂渊は公子斉が驪国の皇宮に現れた例の仙人ではないかと疑った。 公子斉は鳳眠(ホウミン)山にいた。 山荘の庭には公子斉に姿絵を描いてもらおうと、若い娘が列をなしている。 一方、覃川は仕事を片付け、休みをもらうことにした。 鳳眠山へ行くと聞いた郭大婶は覃川まで皇太子妃になる妄想に取り憑かれ、公子斉に姿絵を描いてもらうつもりだと呆れる。 しかし老板娘は珍しくお洒落した覃川を可愛いと褒め、喜んで送り出してくれた。 公子斉こと九雲は西域から来た娘・胡姫(コキ)の姿絵を完成させていた。 絵を見た胡姫は見事な出来栄えに満足し、妃に選ばれた暁には必ず礼に来ると約束して帰って行く。 ちょうどその時、覃川がロバを引いて公子斉の山荘に到着していた。 すると屋敷から出て来た胡姫を見かける。 覃川は美しい胡姫に目をつけ後を追ったが、その時、前から侍衛たちを引き連れた靂渊と紫辰がやって来た。 「なぜ彼らが一緒に?!」 ロバの影に隠れてやり過ごしながら、覃川は首をかしげた。 つづく ✩°。⋆⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝ 折り返し~! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.04.30 10:54:21
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