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风起陇西(ふうきろうせい) 第二十四計(最終話)「 李(スモモ) 桃に代わりて僵(タオ)る」 荀詡(ジュンク)は司聞曹(シブンソウ)の部隊を率いて陳恭(チンキョウ)がいる李厳(リゲン)の別荘へ乗り込んだ。 成藩(セイハン)は楊儀(ヨウギ)たちが機密について話し合っていると制したが、興奮した荀詡をこれ以上、止める術がない。 その時、楊儀が現れた。 「嫌疑人から供述を引き出したところだ、急いで丞相に報告する…では失礼」 荀詡は不自由な足を引きずりながら陳恭の元へゆっくり歩いて行った。 「なぜだ?…なぜだと聞いている?!」 しかし陳恭は何も答えず、むしろどこかほっとしているように見える。 「連れて行け!」 荀詡は陳恭が連行されるのを見ながら、ふと床に広げられた地図があることに気づいた。 一方、李厳は楊儀が成都への道をすべて封鎖したため、陳恭の言葉通り漢城を通るしかなくなった。 すると待ち伏せしていた馬岱(バタイ)将軍が立ちふさがる。 李厳は先帝に従ってから忠誠を尽くしてきたと嘆いて一度は剣を抜いたが、結局、捨ててしまう。 「よかろう、諸葛(ショカツ)に会わせろぉぉぉ!」 ひと月後、李厳の事変により諸葛亮(ショカツリョウ)の第二次北伐は曹魏(ソウギ)大将軍・王双(オウソウ)の斬殺、陰平(インペイ)と武都(ブト)の回復で終結し、20万の大軍が粛々と漢中へ撤収した。 成都に戻った楊儀は諸葛亮に理路整然と事の顛末を報告、しかし諸葛亮は楊儀が司聞曹を利用して李厳を失脚させたことに憤慨する。 楊儀は李厳を排除せねば朝廷に災いが起きると訴えたが、諸葛亮は政争にも限度があり、人には守るべき原則があると戒めた。 「…よく考えよ、よく考えるのだ、何をしでかしたのかをな」 「お待ちを!丞相!全て漢の復興のためにしたことです!」 諸葛亮は李厳と面会した。 すると李厳は諸葛亮が楊儀に命じて司聞曹を動かし、自分を死地へ追い込んだと責める。 しかし諸葛亮は何も知らなかったと答えた。 「確かに不当な手段だ…しかし手段は不当でも結果は正しい こたびの事変は楊儀が仕組んだものだった だが二心あって司聞曹に唆され曹魏と手を組み、東呉の侵略を偽って兵糧を断ったのであろう? そなたは徒党を組んで南征を主張し、蜀漢と東呉の同盟を破ろうとした 国の根本を揺るがしたのだ! そなたを捕えてこそ国は滅亡を免れる、これは国家存亡の危機、我々の私怨は関係ない!」 「南征か北伐かは国策の争いだ、おぬしが北伐を断行して曹魏を滅ぼせる保証がどこにある?」 「この世に万全の策はない…だが東呉と結べば蜀漢は少なくとも30年、平和を保てる もし東呉との同盟に背き荆襄(ケイジョウ)に侵攻すれば、曹魏は機に乗じ漢中を奪うだろう 敵に挟まれた蜀漢は3年もせずに間違いなく滅亡する! そうなればあの世で先帝に合わせる顔が?!そなたが言う天下の民はよりどころを失うのだ 我ら2人は大漢のために命を懸けて尽くすべき、己の名誉に何の価値があろうか?」 李厳は諸葛亮の言葉にがっくり肩を落とし、力なく首を垂れた。 ↓(゚∀゚ノノ゙8888888888〜 荀詡は事変に関わることを禁じられたまま、何の情報もなくひと月が経った。 するとようやく楊儀が現れ、陳恭の事案が結審し、斬首の後さらし首が決まったと報告する。 荀詡は呆然、どうしても陳恭に会わねばならないと懇願し、面会する機会を得た。 大罪人の陳恭は牢の中でも拘束具で自由が利かなかった。 「判決が下りた…斬首だ、陽長史が見守る」 「そうか…遠路はるばる苦労をかけたな」 「なぜだ?…聞かせてみろ」 すると陳恭は燭龍となった経緯について明かした。 郭淮(カクワイ)は陳恭が機密を盗む現場を押さえながらも咎めず、馮膺(フウヨウ)が父を売ったという証拠を見せたという。 「お前も同じ文章を見て私を疑ったのだろう?」 陳恭は青萍(セイヒョウ)計画に最適の人材だった。 そこで折りよく天水に来た荀詡を騙して協力させ、南鄭に戻ることに成功したという。 「南鄭に戻ったら馮膺を殺して李厳を裏切らせ、父を害した奴らを始末するつもりだった…」 しかし荀詡は信じられないと言った。 荀詡はこの1ヶ月、何度も繰り返し考え、ある結論を導き出していた。 「街亭(ガイテイ)の事案を機に郭淮は青萍計画を発動 お前は父君を殺した馮膺に恨みを抱いたことで郭淮の信頼を得た 五仙道へ行く表向きの目的は連弩(レンド)の設計図を盗むこと だが真の目的は高堂秉(コウドウヘイ)と五仙道を犠牲にして馮膺の地位に取って代わることだ まさしく私の協力があったから青萍計画を遂行できた 郭淮は一層、お前を信頼した、だが思いがけぬことに楊儀と馮膺がお前に反間計を授けていた 青萍計画は最初からお前たちが目的を果たすための表看板 本当の目的は李厳を陥れて失脚させることだった、だがここで妨害が入る…それが私だ 郭淮が命じたのだろう、手ずから私を殺せと…曹魏に従う最後の証拠だ だから黄預(コウヨ)は西郷(セイキョウ)関を襲撃した、そうすれば私を誘き出し、殺す機会を作れる そこまでは想定内だったが、困ったことに楊儀も私を殺せと命じた 燭龍について捜査をやめない私が反間計を脅かしていたからだ 私が燭龍の事案を追求すれば李厳の失脚は合理性を疑われてしまう、丞相にも影響が及ぶだろう …確かにこれは憶測だ、だが私は誰よりもお前を理解している!」 荀詡はあの日、双方に自分の殺害を迫られた陳恭が同時に林良(リンリョウ)にも矢を射させたと気づいた。 林良は裴緒(ハイショ)が隠した自分を監禁、陳恭は任務さえ完遂すれば自分を殺さずに済むと考えたのだろう。 しかし負傷した自分が逃げ出し、陳恭の作戦は破綻した。 本来は馮膺が死ぬはずだったが陳恭は作戦を変更せざるを得なくなる。 「私のせいで己を犠牲にするしかなくなったんだな?!」 「…間諜には墓場まで持って行く秘密がある 兄弟同士で殺し合い、夫婦も共に暮らせぬ…そんな日々にはうんざりだ」 「私の見立て通りか?…これでは…私がお前を殺したのと変わらぬぅぅぅ…」 「考えすぎるな」 荀詡は陳恭を死に追いやったのが自分だと知り泣き崩れた。 すると陳恭は頼みがあるという。 「もう捜査しないでくれ…ここまでにしろ、打ち切りにするんだ…もう終わりだ」 …荀詡が別荘に乗り込んできた時、陳恭は楊儀に自ら馮膺の代わりに黒幕になると申し出た 『曹掾の罪は全て私に着せてください、そうすれば曹掾は汚名をすすぎ復職できる』 楊儀は反対した 実は李厳を失脚させた後、陳恭を曹魏の上層部に潜り込ませる仕上げの計画がある しかし確かにこの方法なら誰も巻き込まず、全ての事態に説明がついた… 荀詡たちは楊儀と共に陳恭の処刑に立ち会った。 すると晴れて無罪となり、復職した馮膺が遅れてやって来る。 馮膺は荀詡の隣に立ち、丞相からの任務を伝えた。 「東呉へ向かい、建鄴(ケンギョウ)で新たな情報網を作れ」 その時、いよいよ処刑の刻限が来た。 陳恭は大きく息を吐いて執行台に身体を預けると、最後に荀詡へ笑顔を見せる。 「…ひとつ頼みがあります」 荀詡は馮膺に陳恭と翟悦を同じ墓へ埋葬するよう頼んだ。 その時、ついに執行人が剣を振り下ろす。 次に処刑場に向かっていたのは狐忠(コチュウ)だった。 馮膺が司聞曹に戻ると、部屋を掃除していた孫令(ソンレイ)が出迎えた。 「姐夫(ジェフー)…」 一方、郭淮は陳恭が処刑されたと報告を受け、計画が全て台無しになったと知り茫然自失となる。 また無事に南鄭から離れた柳瑩(リュウエイ)は荀詡と陳恭それぞれからもらった二つの令牌を眺めながら、物思いにふけっていた。 荀詡は東呉へ発つ前、翟悦と陳恭の墓に寄った。 …阿妹翟悦の墓 …妹夫 の墓 大罪人として死んだ陳恭の名前はなかったが、馮膺は約束通り夫婦を同じ墓で眠らせ、木碑を建てている。 荀詡は献杯して立ち上がると、ふと翟悦と陳恭が仲良く手を繋いで旅立つ姿が見えた。 荀詡は林良と一緒に水路で東呉へ向かった。 「風が強いゆえ中で休んでは?」 「いや構わない」 すると林良は陳恭からの言づてを明かすことにした。 陳恭は荀詡がひと月後も葛藤しているようなら真実を伝えるよう頼んでいたという。 実は荀詡が穴蔵から脱出することは陳恭の思惑通りだった。 穴蔵に茶碗を残したのも火打ち石を落としたのも、全て陳恭の指示だったという。 陳恭は始めから抜け道がある穴蔵を見つけ、荀詡なら必ず見つけ出すと分かっていた。 翟悦を死なせてから陳恭は己を責め、その時から死を求め出したという。 この暮らしにへき易していた陳恭は燭龍を捕らえた後、翟悦と隠居するつもりだった。 「…しかし悦児が死んだ日を境に計画を変えたのだな」 「そうです」 あの日から陳恭は己が決めた通りに動き、計画通りの結末を迎えた。 荀詡は林良に船を降りる支度をするよう命じた。 「こたびお前の立場は従者ではない 大鴻臚(コウロ)の治礼郎(チレイロウ)、つまり役人だ、礼儀に気を配れ」 「承知した、手筈は整えている」 完 ( ๑≧ꇴ≦)えー?!なぜ最後にこんな曲?! ←そこ?! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.12.18 23:53:13
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