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カテゴリ:夢華録 全40話
梦华录 A Dream of Splendor 第39話「決死の直訴」 何としてでも都に留まりたい欧陽旭(オウヨウキョク)は皇后に寝返った。 秘密を知った趙盼児(チョウパンアール)は欧陽旭に殺されそうになったが、駆けつけた陳廉(チンレン)に救われる。 陳廉はパンRを無事に送り届けたが、皇后は決して自分たちを見逃さないと警告した。 しかしパンRは必死で抗えば機会が生まれるかもしれないという。 「蕭謂(ショウイ)が言っていたの、人が多い場所なら手は出せないと…」 翌朝、雷敬(ライケイ)や高慧(コウケイ)の陳情を聞いた皇帝は蕭欽言(ショウキンゲン)を参内させるよう命じ、顧千帆(コチェンファン)の釈放を決めた。 都虞候(トグコウ)・張允(チョウイン)の態度は一変、顧千帆への拷問を謝罪し、耳に良く効く薬を持たせて見送る。 顧千帆は真っ先に桂花巷(ケイカコウ)へ駆けつけたが応答はなく、慌てて永安楼へ向かった。 すると池蟠(チハン)からパンRが欧陽旭を訴えるため開封府へ行ったと知る。 一方、欧陽旭は皇后の従者に昨夜の一件を報告していた。 「深夜の上、大理寺の見張りもいたので使いを出せませんでした 皇后にパンRを始末するようお伝えください、さもなくば…」 その時、屋敷に開封府から審理の通達が届いた。 どうやらパンRは騒ぎを大きくして自分に手出しさせないつもりだろう。 欧陽旭は動揺したが、従者はすぐさま審理を非公開にするよう手を回すことにした。 「恐れるな、そもそも趙盼児は訴えることができない」 審理は一方的に非公開となり、開封府の門は固く閉じられた。 そんな不公正な中、パンRは欧陽旭が自分との婚約を一方的に破棄し妾になれと強要、断ると中傷を受けたと訴える。 「物証も揃っています」 すると欧陽旭はそもそもパンRに自分を訴える資格はないと伝えた。 「趙氏の籍は銭塘(セントウ)、私は赴任地の新州にあります」 長官はパンRが東京に移ってまだ1年経っていないと確認、確かに開封府の所轄ではないと退けた。 「銭塘で改めて訴えよ」 パンRが開封府を出ると正門で顧千帆が待っていた。 思わず顧千帆に抱きついて喜ぶパンR、耳の怪我も幸い大した傷ではなかったという。 すると野次馬たちはやはり探花の欧陽旭が勝ったと噂し、妓女だった女なら婚約破棄も仕方ないと見下した。 これが世間というものだろう。 自分が賎民の女子というだけで、人は善悪の区別もせず欧陽旭の側に立つのだ。 「欧陽旭を訴えたのは千帆を救うためだった、でもこれからは自分の名誉挽回のために訴える 欧陽旭を法で罰してやるわ」 顧千帆はパンRを応援すると励ました。 陳廉は慌てて欧陽旭の後ろ盾が皇后だと教えたが、顧千帆はこの機会に欧陽旭こそ裏切者だと皇帝に知らしめるという。 「やられたらやり返す、私のために来てくれたのだ、今度は私がパンRを助けなければ…」 その時、見知らぬ書堂が声をかけた。 「趙娘子、東京でもまだ訴状は出せます、少々、難しいですが…」 実は景徳(ケイトク)年間、闕門(ケツモン)の外に官民の訴えを受理する登聞鼓院(トウブンコイン)が設置された。 ここでの民の訴えは直接、皇帝に届くという。 しかし朝廷のお達しで登聞鼓院が受理する案件は賂(マイナイ)や恐喝、殺人などの罪だけ、他の事案は通常、県から州へ順番に上告する必要があった。 「…あとは越訴(オッソ)だ」 パンRは登聞鼓院の太鼓を打ち鳴らした。 しばらくぶりに鳴り響く太鼓の音、すると力自慢の孫三娘(ソンサンニャン)が途中で代わり、力の限りばちを振り下ろす。 「訴えたのは誰だ?!」 長官は訴状を受け取ったものの越訴であると分かった。 越訴の場合、掟に従って訴人は杖刑20回を先に受けなければならない。 それでもパンRは欧陽旭を訴えると譲らなかった。 「そなたが勝訴しても私が与えられる罰はせいぜい結納品の返還だが?」 「それでも構いません」 パンRはどちらにしても高官が″八議(ハチギ)の法″で守られ、懲罰を減免されると知っていた。 しかしパンRは自分が軽薄な女ではなく、欧陽旭こそ徳を欠いたえせ君子だと証明したいという。 皇帝は太鼓を打ったのが趙盼児だと聞いて驚いた。 すると皇后・劉婉(リュウエン)が駆けつけ、パンRを殺すべきだと進言する。 大理寺の調べで欧陽旭を襲ったのは蕭欽言(ショウキンゲン)ではなく斉牧(サイボク)だと分かったが、審理が始まる直前になってパンRが欧陽旭を訴え出るとは怪しい。 「そもそもなぜ今頃になって訴えるのでしょう? これも欧陽旭の名誉を傷つけ、大理寺への印象を悪くするためです 清流派は蕭欽言や顧千帆と結託したのでしょう、そしてパンRを味方につけたのです 皇上、今回ばかりは我慢なりません!」 劉婉はこれ以上、夜宴図に悩まされるのはご免だと訴え、思わず涙ぐんだ。 「皇上、お願いです! 大理寺には厳正に審理させ、欧陽旭殺害を企てたのが斉牧だと究明してください!」 登聞鼓院での審理の日、空は暗雲が垂れ込め、冷たい雨になった。 長官は改めて越訴の場合、訴えの乱発を防ぐため先に杖刑を受けてから審理に入る掟だと確認、執行の札を投げる。 こうしてパンRは前庭に用意された執行台に乗った。 目をそらさずパンRを見つめる顧千帆、しかし三娘と宋引章(ソウインショウ)は思わず目を背けてしまう。 門では池蟠(チハン)たちが心配そうに見守っていた。 すると4回目を打たれた時、パンRは激しく血を吐き出し、6回目で気を失ってしまう。 欧陽旭はその姿を見ながら、まるで何かに取り憑かれたように呟いていた。 「打て…いいざまだ…殺せ…」 顧千帆たちは思わず執行人を邪魔してパンRを守った。 長官は法廷への介入は大罪だと激怒したが、顧千帆は皇后が裏で手を回したのだと気づく。 「杖刑とは臀(デン)杖で脊(セキ)杖ではない!こんな重刑を科し、趙氏を殺して口封じするつもりか!」 驚いた長官は侮辱罪で顧千帆を捕らえるよう命じたが、顧千帆は公平性に欠けるとしてパンRを抱えて帰ってしまう。 池蟠たちは何が起きたのか分からなかったが、ともかく急いで道を開けさせた。 すると引章が悪徳官吏が勝手に脊杖に変えたと暴露する。 「脊杖20回とは流刑になる者の罰だぞ?!」 文人である濁石(ダクセキ)と袁屯田(エントンデン)は驚愕した。 まさか冤罪を晴らすための場所で長官が訴人を殺そうとするとは…。 「この世の公正はどこにある?!行こう!上申するぞ!」 皇帝は御花園で偶然、女官たちの噂話を耳にした。 「何の話だ、聞かせてくれ」 「安陽殿の女官から聞いたのです、永安楼の趙娘子の杖刑のことや、実は武官の娘だったと…」 パンRは実は趙謙(チョウケン)の娘だった。 皇帝はパンRの凋落が自分のせいだと知って胸が痛む。 しかし永安楼を訪ねた時、パンRは帰り際、皇帝に感謝していると話していた。 …手が空くと陛下の息災を祈っています、陛下のご厚恩がなかったら都の華やかさを享受できず、酒楼も開けませんでした… 皇帝は女官たちを集めてパンRをどう思うか聞いた。 皇后の手駒となった崔(サイ)内侍は顔をひきつらせて皇帝の顔色をうかがうことしかできない。 すると女官の1人が顧千帆のような夫を迎えられて羨ましいと言った。 「″生き閻魔″の顧千帆が良き夫にもなるとはな〜」 「何でも趙娘子のために刑場破りをしたそうです、天下一の良き夫です!」 「刑場破りだと?!」 何も知らなかった皇帝は後宮に駆けつけ劉婉を追及した。 皇后が民の命を軽んじ、今や市井では″登聞鼓院も朝廷も不公正″と噂になっている。 劉婉は自分が間違っているなら罰して欲しいと嘆願した。 自分を追い詰める元凶の斉牧を処刑できるまであと少し、邪魔をされたくないのは当然だという。 「婉R、私が怒る理由が分からないのか?」 皇帝は子を産めない劉婉に借り腹を認め、権力を望むゆえ立太子も見送って来た。 お忍びで永安楼へ行った時も別の意図があると誤解され、パンRへの嫉妬もあったのだろう。 「国を納める道は平坦ではない、まさか朕が何事にも寛容だと思っているのか? 父皇の教えだ、″君たる道、気ままであるべからず、心に天の理を抱き、民意を重んじよ″と… 朕はたとえ斉牧に陥れられたとしても皇后を信じた 趙盼児を殺したところで皇后がでっち上げた斉牧の罪状に世の民は納得すると思うか? …よく考えなさい」 皇帝は皇后に真心で接して来ただけに、失望も大きかった。 劉婉はその場でへたり込んだまま動けなかった。 ふと気がつくと夜も更けて真っ暗な寝宮に独り、すると突然、顧千帆が現れる。 「夜半に皇后の寝所に侵入するなど死罪になるわよ?!」 「分かっています」 すると顧千帆は拝跪し、実は蕭欽言の実子であると明かした。 しかし育ててくれた叔父・斉牧に皇城司へ送り込まれ、蕭欽言に対抗するため宮中の機密を集めて来たという。 「皇后の身辺調査で夜宴図の存在を知り、絵を隠滅する任務で訪れた銭塘でパンRと知り合いました 私は大勢の官吏の秘密を握っています、手駒にしていただけるなら皇后への忠誠を誓います どうか許嫁・パンRの命をお助けください」 劉婉はならばパンRに訴えを取り下げさせ、斉牧の審理が終わったら欧陽旭を引き渡すと言った。 「煮るなり焼くなり好きにして」 「…取り下げはできません、欧陽旭を死罪にしてパンRの名誉を回復させたいのです」 「馬鹿な…悪いけど力にはなれないわ」 つづく ( ๑≧ꇴ≦)えーっ?!まだ1年経ってないの? ←そっち?w お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.06.13 16:17:58
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