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カテゴリ:安楽伝 全39話
安乐传 The Legend Of Anle 第2話 春の狩りに颯爽と現れ、皇太子妃候補に名乗りを上げた任安楽(レンアンルー)。 安楽の名は一夜にして都中に知れ渡り、脚色された女海賊の求婚物語は民だけでなく、宮中の太監や宮女たちの間でも人気となった。 しかし韓燁(ハンイェ)はこれが安楽の仕業だと気づく。 「都に入って民心を利用するとは賢い…だが野放しにはせぬ」 一方、安楽は侍女・苑琴(エンキン)が準備しておいた任府に落ち着いた。 この屋敷は皇太子府と目の鼻の先、西側には三省六部(サンショウリクブ)と九寺五監(キュウジゴカン)が置かれ、抜け道まであるという。 その頃、刑部尚書・洛銘西(ルォミンシー)は伝書鳩で帝梓元(ディヅユアン)が帰京したと知った。 洛銘西が秘密の通路から帝家の霊廟に向かうと、美しく成長した梓元が待っていた。 「梓元と呼ぶか?あるいは安楽と?」 「韓家との関わりは金輪際、断ち切る、私のことは安楽と…」 実は梓元に安楽という偽名を付けたのは洛銘西だった。 洛銘西は帝家の宝剣を嘉昌(カショウ)帝・韓仲遠(ハンチュウエン)に献上、そのお陰で若くして刑部尚書の地位を得た。 こうしてかつての護衛が朝廷に仕えてくれていたおかげで、安楽は在野で力を蓄えることができたという。 「瑇(タイ)山にいる帝梓元と皇太子に溺れる女海賊・任安楽… 求婚が話題になる程、本懐を遂げやすくなる」 「安楽、韓燁は君に10年欠かさず三月おきに贈り物を届けているぞ?」 「ふっ、恨みの炎を消すにはささやか過ぎない? 今の私は復讐を誓った任安楽、太子殿下のお慈悲にすがる帝梓元じゃない」 「決めたのか?」 「帝家が滅ぼされた夜を忘れた日はない」 …韓仲遠、予想できたかしら?帝家の遺児が10年の時を経て会いに来ると… 皇太子と任安楽の噂は皇帝の耳にも届いていた。 果たして女海賊が皇太子妃になれるのか、世間ではそれが最大の関心事だという。 かつて太祖は韓家が帝家と共に天下を治めることを望んだ。 「しかし朕の即位後、6年足らずで謀反を起こされるとは…」 韓仲遠は皇太子が遺詔を盾に帝家の娘を守り抜いたことを苦々しく思っていたが、女海賊の求婚が突破口となるやもしれない。 「趙福(チョウフク)、明日、任安楽に拝謁を許す」 洛銘西の協力のもと、安楽の復讐計画が動き出した。 標的は帝家九族と8万の帝家軍を殺した仇敵の忠義(チュウギ)侯・古雲年(コウンネン)。 しかし皇帝からは功を讃えられ、朝廷での専横を容認されていた。 洛銘西の話では古雲年は正道を歩む皇太子や右丞相(ユウジョウショウ)・魏諫(ギカン)と犬猿の仲、そこで韓燁の力を利用するという。 「古雲年は大理寺(ダイリジ)を支配下に置き、群臣の弱みを握っている よって手始めに君は大理寺少卿(ショウケイ)となれ」 「できれば事件を足がかりに古雲年一派に入りたいわ」 「うってつけの事件がある…下手人は林聡(リンソウ)だ」 林聡は古雲年の息子・古斉善(コセイゼン)の取り巻きの1人で、国子監(コクシカン)の学生を殺した罪で投獄されていた。 古雲年は息子に懇願され、林聡を刑部から出すよう手を回した。 その夜、洛銘西は皇太子に林聡が忠義侯の息がかかる大理寺に移されたと報告し、恐らくそのまま逃すつもりだという。 「殿下、思うに忠義侯のような讒臣(ザンシン)を相手取るには、より狡猾な者が必要かと…」 「任安楽のことか?」 韓燁は確かに安楽なら自分のために大理寺をかき回してくれると期待した。 「おめでとうございます、殿下 3万の水軍を手に入れた上、太子妃の座を空位にした そして大理寺に打ち込める釘を見つけ出しましたね」 翌朝、安楽は参内した。 宮殿まで案内した皇帝の侍従・趙福(チョウフク)は自由奔放な安楽に手を焼き、あらかじめ皇帝に気分を害さぬよう警告しておく。 「何しろ森泉のようですから…」 確かに安楽は皇帝の予想を遥かに超える面白い娘だった。 安楽は平伏するどころか趙福を差し置いて皇帝に付き添い、嫁として茶を献じるという。 そこへ韓燁が慌てて駆けつけた。 韓燁は無作法な安楽を戒め、婚姻については応じられないとはっきり断ったが、父皇は勝手に美人に封じるという。 しかし今度は安楽が皇太子妃になりたいと拒んだ。 「あ~このままじゃ埒が明かない、嫁がずとも水軍は献上します、その代わり機会を下さい」 安楽は皇太子と同じ場所で過ごせば愛が芽生えるかもしれないと訴え、できれば高給で屋敷から近く、気軽な高官が良いと頼んだ。 そこで三法司(サンホウシ)を束ねる韓燁は安楽を大理寺少卿に任じ、官吏の何たるかを学ばせるという。 「何だか良い響きね…決まり!」 こうしてそれぞれの思惑通り、安楽は大理寺少卿となった。 大理寺卿・裴沾(ハイテン)は安楽を暖かく迎えた。 大理寺で功を立て皇太子妃になりたいという安楽、すると同じ大理寺少卿の黄浦(コウホ)が工部郎中の子・林聡が学生を殴り殺した事件があると教える。 驚いた裴沾は酔っ払いが人を突き飛ばしただけの事件だと遮り、安楽に署名するよう頼んだ。 「これで無事に解決だ、任大人(ダーレン)、忠義侯があなたの才を認めておられるぞ」 しかし安楽の計画を知る由もない黄浦は悪党の手先が増えたと大きなため息をついた。 皇太子が大理寺の様子を見に来た。 安楽は独りになった隙に書類を盗み見ていたが、韓燁が来ると途端に皇太子にぞっこんの女盗賊に戻る。 すると韓燁は大きな荷物を運び込ませた。 「殿下、これって何かの冗談?」 「大理寺は国の司法をつかさどる、君も少卿なら刑法を熟読せねばな 7日で読み終え、ひと月で覚えろ」 「ああ~安楽、あまり字を知らないから教えてもらわなくては~ 2人きりになるために思いついたのね?」 「荒唐(ファンタン)!」 結局、韓燁は安楽に刑法について教える羽目になった。 安楽は相変わらず韓燁をもて遊ぶように馴れ馴れしくするが、韓燁は安楽があなどれないと分かっている。 「やめないか…いいか、次は牢の中で実践だ」 「何よ?触られたから仕返し?」 安楽は韓燁を馬車まで見送った。 しかし安楽が踏み台で手を貸そうとすると、韓燁は不機嫌そうに歩き始めてしまう。 仕方なく安楽は韓燁と一緒に大街を散策することにした。 都は3年に1度の会試(カイシ)で書生たちであふれていたが、その時、暴走する馬が現れ、危うく書生が踏みつけられそうになってしまう。 韓燁は咄嗟に礫(ツブテ)を投げて馬の方向を変えて助けたが、馬に乗っていたのはあの古斉善だった。 書生たちは傍若無人に振る舞う古斉善を糾弾した。 しかし古斉善にとって庶民の書生など虫けら同然、たとえ殺しても罪にはならないという。 安楽は見過ごすことができなかったが、韓燁は咄嗟に安楽を止めた。 「慣れぬ都で敵を作るな」 すると古斉善は今回の会試で自分は必ず合格すると豪語し、書生たちに田舎へ帰れと暴言を吐いて行ってしまう。 その夜、安楽は護衛の苑書(エンショ)に見張りを頼み、苑琴を連れて翎湘楼(レイショウロウ)に入った。 狩りの日から安楽を尾行させていた韓燁は侍従・吉利(キツリ)から報告を受け、早速、弟分の温朔(ウェンショウ)と様子を見に行く。 翎湘楼と言えば客が豪遊することで有名な酒楼で、音楽や茶を楽しむにも大金が必要だった。 店で一番の売れっ子・琳琅(リンロウ)の名は有名だったが、めったにその顔を拝める者はいない。 すると安楽が上階で自分が皇太子妃になれるか、なれないかの賭けに参加していた。 韓燁はすぐやめさせろと命じたが、その時、思いがけず洛銘西が現れる。 実は洛銘西は店の常連だった。 韓燁も洛銘西が酒を楽しむふりをしながら、その実、罪人を力ずくで捕らえていると知っている。 これなら自分が出る幕でもないと安堵したが、洛銘西は皇太子の婚姻なら慶事ゆえ参加すると言い出した。 「あなたが洛大人?初めまして、任安楽です」 「では私は太子妃になれない方に賭けるとしよう」 「私は太子妃になる!」 これをきっかけに遠巻きだった客たちも賭けに殺到した。 困惑する韓燁だったが、その隙に洛銘西と安楽は一緒にどこかへ移動してしまう。 つづく (  ̄꒳ ̄)韓燁の口癖″荒唐″は試験に出ます ←嘘ですw お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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