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2024.02.07
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覆流年 Lost Track of Time
第19話

穆川(ムーチュアン)は愛する陸安然(ルーアンラン)のため、父皇に事情を話して陸軽舟(リクケイシュウ)を救おうとした。
そもそもこれは身内の争い、しかし陸欣然(ルーシンラン)が自害したこともあり証拠がない。
一方、冬青(ドンチン)は欣然の骸が蘇城(ソジョウ)で母親の隣に埋葬されたと安然に報告していた。
安然はそれより父が心配だったが、冬青は斉(セイ)王が何とかしてくれると励ます。
「そのためには大きな代償が必要かも…水運は陛下の宿願だった、陸家から奪う好機だわ」
安然の予想通り皇帝は陸軽舟を釈放する代わりに陸家の船や港の権利を朝廷に差し出すよう条件を出した。

穆川は父皇のやり方に反発し、二兄に協力を求めた。
しかし穆澤(ムーヅー)の反応は冷ややか、陸家が水運を握りながら無傷でいられたのも皇帝の慈悲に過ぎないという。
「目の前の肉を手放すとでも?」
兄の言葉に激高した穆川は思わず机を叩いて立ち上がった。
「まるで強盗だ!卑怯にも程がある!」
「それが帝王の手段だ!」
「帝王の手段?…もう二哥とは食卓を囲めない」
すると穆川は食事の途中で帰ってしまう。
実は穆澤は欣然が偽造した密書を持っていた。
安然が泣きついてくるなら陸軽舟の潔白を証明しても良いが、果たして頭を下げる相手は自分なのか、皇帝なのか。




陸欣然の騒ぎが祟って陸家の業績は急激に落ち込んだ。
ここまでの赤字は初めてのこと、今は蓄えを切り崩して船員たちに給金を出している。
しかし皮肉なことに陸家を見限った船員たちが大量に辞めたことで、赤字は減っていた。
安然は新規の注文を止めるよう通達し、来月一日に瀚京(カンケイ)で会合を開くことにする。
「あと少しだった…陸家の船は国中を結べたのに…」
家業を手放す覚悟を決めた安然は穆川と落ち合い、皇帝に謁見したいと頼んだ。

安然は36港を束ねる双魚令(ソウギョレイ)と譲渡証を献上した。
その代わり複雑な水路で混乱が起きないよう水運の管理を任せて欲しいという。
皇帝は安然が平凡そうな娘に見えて聡明だと気づき、管理を認めて少し話をすることにした。
「川児から母親の話を聞いたか?」

穆川の生母は南霄(ナンショウ)の公主だった。
皇帝は南霄を制圧した際、公主に一目惚れ、側室として娶ったという。
しかし皇帝が寵愛しても想い人がいた公主は心を閉ざしたまま、我が子さえも遠ざけた。
そして想い人が戦死したと知った公主は首を吊り、あとを追ったという。
皇帝は当時のことを思い出し、思わず目が潤んだ。
「川児は母親に似ている」
奇しくも穆川は生母と同じ言葉を口にした。
『陸安然が好きです、彼女が苦しむ顔を見ていられません』
穆川は安然を娶りたいと言ったが、皇帝は母と同じ道を歩ませたくないという。
そこで皇帝は父親に平穏な老後を遅らせたいなら今後一切、穆川と会ってはならないと命じた。

安然が宮殿を出ると外は激しい雪になっていた。
…陸安然、お前が愛を手にすることは贅沢な望みなのよ
…あの苦しかった10年、どうしてまた同じ苦しみを味わうことに?
…結局、私は籠の鳥のまま死ぬ定めなのね
…もう疲れてしまった
すると10年後の哀れな自分が現れ、結末を覆す以外に逃げ道はないと助言する。
穆澤が再び皇帝に即位すれば、永遠に囚われの身となるのは必至だ。
『でもどの道、穆澤から逃げられない、何度、やり直しても陸家は救えず、深みにはまるだけ…
 陸安然、あきらめなさい』
「嫌、イヤよ!何としてでも陸家を救う!」
この時、安然は気づいた。
時を遡ったのはやり直すためでも天の慈悲でもない
これは運命からの警告だと…。
避けようとするだけでは何も変わらない。
そして安然は決意した。
この過酷な定めに立ち向かおうと…。 ←イヤイヤイヤ…前も言ってなかった?w

陸軽舟は釈放された。
安然は陸家を守れなかったと謝ったが、父は全力を尽くしてくれた娘を労う。
「蘇城で待っていて、もう一度だけ戦いたいの…必ずまた会えるわ」←また戦うのか~いw
一方、穆澤は安然が自分との婚姻を拒むため、家業を手放したと知った。
「実に恐ろしい女だ、だが見ていろ、そう簡単には思い通りにならぬ」
そこで常時、刺客に陸軽舟を見張らせるよう命じた。

冬青は兄と相談し、陸軽舟を雲隠れさせる計画を立てた。
しかし慶王の配下が尾行しているため逃げ切れず、失敗に終わってしまう。
一方、穆川は愛する人を守ることができず、自分の不甲斐なさを嘆いていた。
これでは安然に合わせる顔がない。
すると霊奚(レイケイ)が独りで訪ねて来た。

屋敷へ戻った霊奚は斉王が明日の誘いを喜んでいたと安然に報告した。
しかし霊奚には安然が斉王を想いながら、なぜ心を隠すのか分からない。
すると安然は穆川を月に例えた。
「彼は月のような人、私の苦しい旅路の唯一の慰めなの
 でも月には手が届かないでしょう?夜空を明るく照らしてくれるだけで十分よ」
穆川に会うのは明日が最後になる。
安然はせめて穆川の運命だけは変えたいと願った。

翌日、安然は初めて令嬢らしい華やかな装いで街に出た。
穆川は美しい安然に見惚れながら、手作りの贈り物を渡す。
「あ、後で見てくれ、でどこへ?」
「少し歩きたいの」
安然と穆川はしばし日常を忘れて大街を散策、やがて日が暮れる頃、川辺で暖を取りながら酒を楽しんだ。
「以前ならお酒や町歩きは退屈だった、でも今は悪くないと思う」
すると穆川はこっそり露店で買った操り人形を取り出し、一目惚れの物語を聞かせると言って告白しようと計画した。
しかし安然が自分の知っている一目惚れの物語を先に聞いて欲しいという。
「蘇城の王(ワン)という商家に娘が1人いたの、18歳の時、護衛に一目惚れ、結婚を誓った
 だけど娘の初恋は悲劇に終わる…」



安然は架空の物語として自分の体験した壮絶な人生を明かした。
「…その後、娘は天から機会を与えられ、想い人と再会するの
 でも娘は一目惚れした自分が愚かなだけだったと気づいただけ、それからどうなったと思う?」
結末はまだ安然にも分からない。
すると穆川は振り出しに戻れるのなら宿命などにこだわらず、毎日を楽しく生きればいいと言った。
率直な感想を聞いた安然は娘が大事な人と一緒に人里離れた山奥で静かに暮らしたと締めたが、そんな夢はもう叶わない。
「もし来世があったら何をしたい?」
「皇子に生まれず、世界を旅したい…君は?」
「私は…誰かの妻となり、共白髪になるまで仲睦まじく、平凡に暮らしたい」

安然は穆川のために花火を買っていた。
美しく燃え上がる花火を見ながら、安然はかつて大晦日に穆川が花火を届けてくれたことを懐かしむ。
「穆川、改良された稲が実り、黄金色に輝けば、この花火のように美しいわ」
「その時、君はどこに?」
「一緒に豊作を見届けたい」

つづく


( ;∀;)むーちゃんを月に例えるなんて素敵





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最終更新日  2024.02.07 23:31:44
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