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カテゴリ:安楽伝 全39話
![]() 安乐传 The Legend Of Anle 第29話 帝(ディ)家軍の霊牌を胸に抱き、万感交々至る梓元(ヅユアン)。 すると韓燁(ハンイェ)は靖国の皇太子として英霊に誓いを立てた。 「今後は忠誠を誓う民が無実の罪に苦しまないことを約束する、必ず太平の世を築く… 英霊たちよ、長風に乗りて我が国の山河を見よ」 すると一同はひざまずいて霊牌に叩頭し、拝礼の儀が終わった。 「英霊たちよ、長風に乗って天に昇れ、そして天より山河を見守りたまえ…」 最後に梓元が祈りを捧げると、まるで英霊たちが呼応するように山間を強い風が吹き抜けて行った。 ![]() ![]() 祭礼一行は山で一夜を過ごすことになった。 温朔(ウェンショウ)は苑琴(エンキン)と星空を眺めながら、梓元が近寄り難い存在になったと嘆く。 しかし苑琴は靖南にいた頃に戻っただけだと言った。 「太子殿下と再会して任安楽(レンアンルー)を演じるようになり、次第に明るくなったの 殿下だって小姐に想いを寄せるようになってから穏やかになったわ」 「2人とも互いを想っているのに、まるで敵対しているようだ、2人に非はないのに」 「これが運命なのよ」 すると梓元が弓矢を背負って天幕から出てきた。 「狩に行ってくる」 「お供します!」 温朔は慌てて安楽姐の後を追った。 梓元は2羽の雉を仕留めた温朔の腕前を褒めた。 「あなたは弟の燼言(ジンイェン)に似てる…」 「それなら私を家族だと思って、弟の話を聞かせてよ!」 「そうね、いつも私に付きまとって、叱られそうになると甘えて許しを請うの」 梓元は温朔と一緒にいると不思議と気が晴れたが、その時、仮面をつけた刺客が現れた。 ![]() 梓元と温朔は突然、刺客に襲われ、2人きりで応戦した。 すると剣戟の音に気づいた韓燁が衛兵を率いて駆けつけ加勢、刺客は撤退する。 おかげで2人は無事だったが、洛銘西(ルォミンシー)は刺客が落とした令牌を見つけた。 「梅花衛か…」 実は梓元に刺客を差し向けたのは北秦(ホクシン)の密偵である冷北(ランベイ)と姜瑜(キョウユ)だった。 刺客にわざと皇帝直属の梅花衛の令牌を落とさせ、帝梓元が嘉昌(カショウ)帝・韓仲遠(カンチュウエン)を一層、恨むよう仕組んだのだ。 冷北はすでに西北にいる帝家の配下の名簿を手に入れていた。 もし帝梓元が韓仲遠に襲われたと知れば配下も黙っていないだろう。 冷北と姜瑜は両家を再び離間させ、この機に乗じて事を起こすつもりだった。 「ただ奴らの心を束ねる者がまだ見つからぬ…」 「殿下、ご安心を…帝家の娘に代わる者を見つけました、恐らく殿下が思いもよらぬ人物です」 冷北たちの予想通り梓元と洛銘西は刺客が皇帝の仕業だと断じた。 しかし韓燁は罪を認めた皇帝が今さら帝梓元を暗殺するとは思えず、裏があると疑う。 実は刺客の剣術が梅花衛とは異なり、むしろ除夜の宴に現れた刺客とそっくりだった。 とは言え除夜の宴の件なら古雲年(コウンネン)の配下と調べがついたはず、すでに古雲年は死んでいる。 梓元は皇帝でも古雲年でもない別の誰かが自分の命を狙っていると気づいた。 「だが狙いは君ではなく、靖国そのものかもしれぬ…」 韓燁は陰謀渦巻く都で何者かが長年、機をうかがっていた可能性を示唆した。 「北秦ね…」 梓元はすぐ分かった。 「だとすると古雲年は哀れですね」 温朔は古雲年があらゆる謀を巡らせたが北秦の駒に過ぎず、結局、無駄死にだったと同情する。 しかし梓元は自業自得だと吐き捨てるように言った。 その夜、韓燁は夜営を離れて酒を飲んでいる梓元を見つけた。 「これからどうする?大理寺に戻りたいなら…」 「官を辞して靖南に帰るわ」 「私は君に残って欲しい、だが叶わぬ望みだな 今後3年、靖南の税を免じるよ、かつての平和な光景を取り戻してくれ」 「…靖南の民に代わって感謝するわ、でもその程度で償いきれると思う? あなたには過去の過ちを繰り返さないでもらいたい 太子として民に尽くし、清廉な政(マツリゴト)を行うと誓ったわね? それでこそ英霊たちも旅立てる」 「必ず誓いを守るよ」 梓元はそこで先に戻ることにしたが、韓燁が引き止めた。 「梓元、蒼(ソウ)山で伝えた思いは今も変わっていない@11話」 あの時、韓燁は安楽と2人で隆盛の世を築くという予感がすると明かし、知己としてそばにいて欲しいと懇願した。 しかし梓元は何も言わず、そのまま行ってしまう。 ![]() ![]() …3万の水軍を嫁荷として求婚し、幾多の事件を解決に導いた女海賊・任安楽 彼女が皇太子妃か忠臣になると誰もが信じ、美談として語り継がれることを望んだことだろう しかし帝家の冤罪は晴れ、任安楽は帝梓元に戻った 果たして彼女はこれからどんな人生を歩んで行くのだろうか… 都では講談師も民衆も帝梓元の去就に注目した。 そんな中、任府に戻った梓元は趙福(チョウフク)から帝家の名誉回復の聖旨を賜り、これで一区切りがつく。 「帝大人、陛下からご質問がございます、″そちのわだかまりは解けたか?″と…」 「いいえ…正直に言うわ、まだ釈然としない 全てが決着しても、父や青南山で散った8万の将兵の命が戻ることはないもの でも恨みは捨てました 私の願いは天下太平、帝家のような悲劇が二度と起こらない事を祈ります」 洛銘西は梓元が覇権を取り戻すことを望んでいたが、梓元の韓燁に対する信頼は予想以上に篤かった。 「韓燁なら太平の世を築いてくれる… 靖南に帰ったら二度と都ヘは足を踏み入れない、銘西哥哥も一緒に帰りましょう? 今頃は長思花がきれいに咲いている頃よ?」 「そうだな…後始末を終えたらすぐ後を追うよ」 一方、冷北は密かに姜瑜と接触した。 実は姜瑜の策略がまたしても失敗、帝梓元は自分を襲撃した黒幕が皇帝だと信じなかったという。 そこで姜瑜は例の″別の駒″を使うと伝えた。 ある夜、温朔は屏から任府の庭に潜入した。 すると苑書(エンショ)に鼠と間違われ、いきなりほうきで叩かれてしまう。 「私だよ私!」 温朔が草むらから姿を見せると、苑琴はなぜ表門から来ないのかと呆れた。 「門前払いされるかと思って…安楽姐と殿下は顔も合わせないから…」 「バカね~殿下と温朔は違うわ」 その声は梓元だった。 温朔は安堵したが、安楽姐が靖南に帰ると聞いて駆けつけたという。 「このまま残れないの?」 「都にいる理由がなくなったから…」 「殿下は?!殿下のために…(ぐふっ!)」 苑書が咄嗟に温朔の口をふさぐと、梓元は寝殿へ戻った。 すると温朔は安楽姐はもちろんのこと、何より苑琴との別れが辛いと告白する。 その時、急に腹の虫が鳴った。 一方、洛銘西は皇太子府を訪ね、韓燁に報告書を渡した。 実は西郊(セイコウ)大営の件に関わっていのは古雲年ではなく姜瑜だったという。 洛銘西は帝承恩(ディチォンエン)に接触した姜瑜を疑い調べていたが、まだ北秦と結託した証拠まではつかめずにいた。 「私も靖南へ帰ることにした」 「…あとは私が引き継ごう」 温朔は苑琴の手作りの夜食を堪能した。 するとふいに子供の頃、皇太子と出会った時のことを思い出す。 あれは五柳(ゴリュウ)街にいた時のこと、温朔は養母から十分な食事を与えてもらえなかったせいで、大病を患った際に以前の記憶を失っていた。 そんなある日、物乞いの子供と縁日で遊んだ帰り道、街外れの廟で休んでいる皇太子を見かける。 裕福そうな男を見た温朔は銭を盗もうとしたが、あっけなく見つかった。 しかし韓燁は家が貧しいという温朔を許し、しっかり勉学に励むよう諭したという。 その時、突然、ならず者が現れ、皇太子に襲いかかった。 皇太子は温朔をかばい、負傷してしまう。 苑琴は聞いた話と違うと首を傾げた。 「温朔が殿下を救って侍衛に迎えたのではないの?」 実はその時、韓燁は迎えが来るまで温朔をそばで待たせていた。 駆けつけた衛兵に温朔が自分を救ってくれたと思い込ませ、皇太子の恩人として迎え入れさせたという。 「殿下に会えたことは何よりの幸運だった」 しかしその頃、姜瑜の魔の手が温朔に迫っていた。 温朔は後ろ髪を引かれる思いで任府をあとにした。 夜道には誰もいなかったが、突然、背後から何者かに殴られ、連れ去られてしまう。 一方、西北では梓元が梅花衛に襲われたとの急報が帝家配下たちに届いていた。 報告を聞いた洛銘西は黒幕の目的が帝家の配下を扇動することだと気づき、やはり帝家の末裔である梓元は都に留まるべきだと確信する。 琳琅(リンロウ)は洛銘西が梓元を家主として帝家軍を再興させたいと願い、そのために邪魔者を排除するつもりだと分かった。 しかしその時、突然、皇太子の侍従・吉利(キツリ)が血相を変えて飛び込んで来る。 「洛大人!大変です!太子殿下が左丞相を殺してしまいます!急いでください!」 冷静沈着な韓燁が大街で姜瑜に剣を突きつけていた。 民衆は皇太子の暴挙に怯えながら、遠巻きに見つめている。 「あの者はどこだ?私に謀反の片棒を担がせるつもりか?」 「ふっ、韓燁よ、私が陛下に真実を話すのが怖いか? 気が変わったぞ、陛下だけではない、天下に向けて真相を暴いてやる 私を殺すなら帝家をあの世へ道連れにしてやる!」 すると帝家を持ち出された韓燁は激情に駆られ、人目もはばからず姜瑜の首を切り裂いてしまう。 「地獄への道連れは私1人で十分だ…」 その時、洛銘西が駆けつけた。 しかしひと足遅く、返り血を浴びた皇太子が事切れた姜瑜の前で呆然と立ちすくんでいた。 ![]() ![]() 梓元はいよいよ靖南へ発つことになった。 「この屋敷ともお別れね…」 梓元は任府の扁額を見上げていたが、そこに安寧(アンニン)と冷北が馬で駆けてくる。 「安寧?どうしたの?」 「梓元!哥哥が左丞相を殺して投獄されたの!」 ( ゚д゚)はあ?@うさぎ風 宮中に激震が走った。 皇帝は皇太子が起こした凶行に激怒、刑部に拷問もいとわないと指示する。 しかし韓燁は面会に来た洛銘西にも決して理由を言わなかった。 「姜瑜を断罪できる証拠はあった、なぜ大理寺に任せなかった?話せぬ事情でもあるのか?」 …温朔をさらったのは姜瑜だった 韓燁は左丞相を訪ね、なぜ帝承恩に手を貸し、温朔をさらったのかと追及する 実は姜瑜は韓燁の秘密を知っていた 『陛下は帝梓元を快く思っていません、まだ娘一人だけならいいでしょう ですが弟の帝燼言が生きていると知ったら? しかも太子府にいると耳に入れば陛下はどうすると?』 『やれるものならやってみろ?!』… 洛銘西は韓燁を助けるためにも理由を聞かせて欲しいと食い下がった。 すると韓燁は温朔の荷物が役に立つはずだという。 「探してみろ」 「分かった、私が必ず出してやる」 洛銘西が刑部大牢を出ると安寧と梓元が待っていた。 安寧は兄が理由を話さないと知り、冷北と一緒に牢へ入ってしまう。 しかし梓元は足が動かなかった。 「君が聞けば話すかもしれない」 「靖南に帰る私は会わない方がいいわ ただ太平の世を築き、清廉な政を行うと誓ったのに、まだその途上だと伝えて」 すると梓元は帰ってしまう。 つづく ヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ びっくり! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.05.03 22:30:37
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