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カテゴリ:安楽伝 全39話
安乐传 The Legend Of Anle 第37話 莫霜(モーシュァン)公主と天灯をあげた韓燁(ハンイェ)。 帝梓元(ディヅユアン)を愛するが故に結ばれぬ運命を受け入れながら、帝家の安泰を心から願った。 その頃、すっかり憔悴した嘉昌(カショウ)帝・韓仲遠(ハンチュウエン)は帝梓元と接見していた。 「そちに謝りたい、英寧(エイネイ)にも帝家にも」 「君臣が憎み合うのはどうかこれきりに…」 すると皇帝は皇太子が戻ったら2人で今後のことを決めれば良いと笑った。 梓元は翎湘楼(レイショウロウ)を訪ねた。 洛銘西(ルォミンシー)は梓元を心配させまいと笑顔を見せたが、実はちょうど喀血したばかりだった。 すると琳琅(リンロウ)はこらえ切れず、うっかり口を滑らせてしまう。 「大丈夫ではありません!大人(ダーレン)はあなたのせいで…あの玉佩の約束は…」 「琳琅!下がれっ!」 梓元は珍しく声を荒らげた洛銘西に困惑した。 「琳琅は心配なのよ、怒ることないのに… これまで何年も私のために無理をさせた、ごめんなさい」 「梓元、気にするな、私のことなら心配無用だ」 その夜、琳琅はひざまずいて洛銘西に許しを請うた。 「琳琅…お前は分をわきまえ道理を知る女子だ、だが今日はどうした?」 「帝小姐への想いは太子殿下より勝っているのに、なぜ明かさぬのですか?」 「余命わずかの私が明かしたところで何になる?」 「でもお二人は許嫁です」 しかし洛銘西は太祖の勅命で梓元との縁は切れたと言った。 莫霜は献身的に韓燁の目を治療していたが、結局、視力は戻らなかった。 そんなある日、莫霜の侍女が駆けつけ、靖国で嘉昌帝の危篤の噂が流れていると報告する。 韓燁は父皇が自分を探し出すため、わざと噂を流したと気づいた。 国を揺るがしかねない皇帝の健康状態、皇帝の意思がなければ表沙汰になることはない。 「戻らねば…馬車を用意してくれないか?」 「はお!これで安楽(アンルー)姐姐も喜ぶわね!」 夜も更けた宮中、人払いした御宸(ゴシン)殿に吉利(キツリ)の付き添いで韓燁が現れた。 皇帝は思わず息子を抱きしめ涙したが、目を負傷して見えないと知る。 「安心しろ、必ずその目を治してやる、そう言えば梓元には会ったか?」 「いいえ、二度と会うつもりはありません」 すると皇帝は父としての願いはひとつ、悔いだけは残すなと諭した。 韓燁は吉利に頼んで洛銘西にだけ会うことにした。 しかし運悪く翎湘楼から洛銘西が梓元と一緒に出て来る。 実は洛銘西は梓元を見送りがてら秘めた想いを告白しようとしていた。 「好きなのは…」「あ!気をつけて」 荷車に気づいた梓元は咄嗟に道を譲り、洛銘西から離れてしまう。 「何て言ったの?」 「いいや…私のことはいいから君も無理をするな…」 韓燁は吉利と一緒に露店の後ろに隠れていた。 「殿下、2人が通り過ぎました、追いますか?」 「いいや、やはりやめておこう」 韓燁は諦めて引き返すことにしたが、そこに思いがけない男が現れた。 「殿下…簡宋(カンソウ)です」 簡宋は帝盛天(ディセイテン)に命じられ、皇太子を伏翎(フクレイ)山へ案内した。 帝盛天は韓燁の目を治せるかもしれないと話し、梓元がずっと韓燁を探していると教える。 しかし韓燁は梓元からも朝廷からも離れると決めていた。 「韓燁、私たちの轍を踏まないでちょうだい」 「梓元は国にとって必要な人材、ならば敵の私はいない方がいい、過去のことは忘れるべきです」 「それは本心なの?…梓元のために死をも恐れず青南(セイナン)山で戦ったのに?」 「前輩、梓元のため以上に国のためでした」 帝盛天は頑な韓燁に呆れたが、ともかく治療のため山に逗留するよう勧めた。 皇帝が危篤の噂を流したせいで、都ではついに帝家が天下を覆すのではと憶測が広まった。 梓元は歯牙にも掛けない様子だったが、その日、苑琴(エンキン)が朗報を届けてくれる。 「小姐!太子殿下がお戻りになりました!」 しかし韓燁は梓元に会いたくないと言っているという。 「そんなの関係ないわ」 梓元はやつれて見えないよう念入りに化粧して伏翎山に駆けつけた。 韓燁はちょうど帝盛天と碁を打っていたが、梓元は韓燁の目が見えないと気づいて呆然となる。 すると梓元に気づいた帝盛天は目のことで梓元に会わないのかと聞いた。 「体裁を気にするような娘ではないわ」 「前輩、彼女は太子の容姿に惹かれて都に来たんですよ?」 韓燁は俗っぽい安楽を揶揄したが、ふいに厳しい顔になった。 「梓元との間には障害が多すぎます、情勢も不安定な今、梓元に会っても苦しませるだけでしょう」 その時、韓燁がうっかり茶碗を落としそうになった。 梓元は思わず飛び出し、韓燁に気づかれてしまう。 「誰だ?」 焦った帝盛天は咄嗟に吉利に目配せ、そこで吉利は帝盛天が連れてきた侍女だと嘘をついた。 梓元は新しい茶を入れて韓燁に届けた。 すると韓燁から名前を聞かれ、吉利が咄嗟に口がきけないと誤魔化してくれる。 梓元は韓燁の手のひらを指でなぞり、子規(ズーグゥイ)と名乗った。 しかし侍女も吉利も下がれと追い払われてしまう。 韓燁は何やら考え込みながらお茶に口をつけた。 すると一口ですぐ侍女の正体に気づいてしまう。 「(子規…)ふっ、梓元よ梓元、君が入れたお茶は苦いうえに渋い」 洛銘西は韓燁に会うため伏翎山を訪ねた。 しかし梓元から目が見えないと聞いて面会を断念、帝盛天に挨拶して行くという。 帝盛天は洛銘西との再会を喜んだが、差し入れのお茶を見ると韓燁に会いに来たのだと分かった。 「梓元、それで韓燁の様子はどうなの?」 「相変わらず″侍女″を下げてばかりよ」 すると洛銘西が韓燁は侍女が梓元だと気づいているという。 「指摘されない限り侍女でいるわ、それより姑祖母…」 「韓燁の目のことね?治るかどうかは薬引の有無にかかっている、開花した長思花(チョウシカ)よ 長思花は靖南でも希少だけれど、どちらにしても都へ運ぶ間に枯れてしまう 北方の気候では種をまいたとしても育てるのは難しい」 「でも試してみる、たとえ治らなくても一生、そばにいるわ」 帝盛天は洛銘西が淹れてくれた茶を韓燁に届けた。 茶を飲んだ韓燁はすぐ洛銘西が来たと分かったが、会いたくないという。 「それより前輩からあの侍女に宿下りを命じてくださいませんか?」 「私の言葉なら聞くとでも?…あの子の出生以降、私は姿を消していた 苦しい時にも手を貸していない、私に何が言えるというの? 韓燁、立ち去らせたいなら自分で何とかして」 帝盛天は仕方なく戻ることにした。 その時、一心不乱に駆けてきた帝燼言(ディジンイェン)とぶつかってしまう。 「(ドン!)あ、姑祖母…殿下ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 帝燼言は大伯母そっちのけで皇太子と感激の再会を果たした。 しかし韓燁の目が見えないと気づいて涙する。 「だから今まで戻らなかったのですね…」 一方、洛銘西は梓元から昔話を聞いていた。 「子供の頃は上京が不満だった、屈辱だと思っていたから… 半月も父に泣いて頼んであなたに付いてきてもらったのよ?ふふっ」 そんな梓元を待っていたのは令嬢たちからの嫌がらせだった。 子供の頃から眉目秀麗の皇太子は令嬢たちの憧れの的、そこである切り札を使って令嬢たちを撃退したという。 「実はね、宗祠(ソウシ)から太祖の遺詔を持ち出して、令嬢たちの前で読み上げさせたの 忠義(チュウギ)侯の娘をやり込めた時は韓燁に見られちゃってね、クスッ 娘が帰った後、韓燁に言われたわ ″おい、君は靖南で太子妃を嫌がって泣いたと聞いた、芝居だったのか?″ ″太祖の遺詔を見せびらかすのは私に満足したからか?″って…」 「あの韓燁が皮肉を言うとはな~」 「私は恥じ入って逃げ出そうとしたの、でも韓燁が引き止めて言ったわ ″君みたいな女子が好きだ″って…それなのに今は私を遠ざけてる」 韓燁は帝燼言には本音を吐露した。 「誰にも会いたくなかった、でも日が経つとお前が恋しくなった 私がいなくてもしっかり勉強していたか?」 帝燼言は思わず目のせいで姉を避けるのかと聞いたが…。 翎湘楼では洛銘西が大事に育てた長思花が蕾を膨らませていた。 「もうすぐ咲きそうだな…」 洛銘西はぬか喜びさせないよう、開花してから届けるという。 しかし琳琅は洛銘西が梓元のために心血を注いで育てたことを知っていた。 「確かに梓元を喜ばせるために育てた…だがもし韓燁の目が治ればもっと喜ぶ それがこの花の天命かもしれぬ」 その時、洛銘西は激しく血を吐いて倒れてしまう。 洛銘西が目を覚ました。 琳琅はただの風邪だとごまかしたが、洛銘西は自分がもう長くないと分かっている。 つづく ※子規(zigui)=子帰(gui)=梓帰(zigui)=梓(元のもとへ)帰 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.06.01 13:56:41
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