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カテゴリ:生物
1月5日にメキシコ、バハカリフォルニアにある潟湖、オホ・デ・リエブレ湖に浮かんだ結合双生児のクジラは、コククジラ(学名Eschrichtius robustus)と特定された。 今回発見された結合双生児(「シャム双生児」とも呼ばれる)は、体長およそ2~3メートルあったと報告されている。通常、臨月に産まれるコククジラの幼獣は3.6~4.8メートルあり、それに比べて小さい。 カリフォルニア州にあるロサンゼルス郡自然史博物館の哺乳類コレクション管理者ジム・ダインズ(Jim Dines)氏によると、コククジラの妊娠期間は13.5カ月。したがって、その結合双生児は、出産時おそらく妊娠8.5~10.5カ月だったのではないかと同氏は推測する。 ダインズ氏は、これはあくまでも単一の胎児を基準とした推定年齢であると前置きし、次のように説明した。「双子の場合、母親は2頭の胎児に栄養を与えなければならないため、単一胎児の普通の大きさよりも小さくなるだろう」。 「(それを考えると)この双子はかなり大きい方だ。おそらく母親は出産しようと試みたが、うまくいかなかったのだろう」と同氏は付け加えた。 今回メキシコで調査を行った研究者たちは、結合双生児の母親をまだ見つけていない。母クジラが無事かどうかも定かではない。 ◆珍しい出来事 マサチューセッツ州にあるウッズホール海洋研究所の獣医マイケル・ムーア(Michael Moore)氏は、「大きなクジラがシャム双生児を生むことは、まったくの初耳ではない」と語った。彼は、海洋哺乳類の死に関する法医学分析を専門にしている。 科学文献を調べてみると、ミンククジラ、イワシクジラ、ザトウクジラに結合双生児の事例が見つかると同氏は言う。 自然史博物館のダインズ氏によると、生殖生物学上、クジラやイルカはほとんどの場合1回に1頭を出産する。 クジラの乳首は1対だけだが、例えば齧歯類(げっしるい)には乳首が複数組ある。「1頭ずつ出産する哺乳類のほとんどは、乳首も1対だ」とダインズ氏。 「2頭と言わず、1頭だけでも赤ちゃんを水の中で育てるのは容易なことではない」。 また、もし結合双生児のクジラが無事産まれたとしても、生き残るかどうかは疑わしいと同氏は話す。双子は海面に浮上して呼吸をしなければならないが、体の結合位置によっては呼吸できない場合がある。 ダインズ氏が今までに見たクジラの結合双生児の写真では、通常お腹または背中の部分で結合し、2つの噴水孔は横を向いていた。「つまり、呼吸ができないことになる」。 ◆放射線の影響ではない 日本の福島原子力発電所から太平洋を渡って来た放射線の影響によって、コククジラの結合双生児が誕生したのではと懸念する人もいるが、そのような心配は必要ない。 「ここ数年、カリフォルニアの海岸に打ち上げられた海洋哺乳類の組織を採り、放射線検査を行ってきたが、何の異常も見当たらなかった」とダインズ氏は話す。 「まったくありえないとは言い切れないが、どれほど隈なく探しても、クジラに放射線の影響があるという証拠は得られなかった」。 「クジラのような動物に双子が生まれたからといって、それが放射線にさらされたことを意味するわけではない。人間もよく双子を産むのだから」とダインズ氏は語った。 爬虫類ではよく聞いて お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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